新技術紹介

モニタリング(維持管理)

制作:国土防災技術株式会社

1.概要

斜面対策工の維持管理において、対策工の抑止機能や抑制機能の現状を把握することは重要である。点検や詳細調査でも外見的な特徴から機能の低下を確認できる場合もあるが、外見では見えない機能の異常を把握するためにはモニタリングが必要である。しかし、まだその重要性が充分に認識されていない。第三者影響度の大きいアンカー工については荷重のモニタリングを実施する事例が徐々に増加してきたが、その他の対策工についてはあまり実施されていない。ここでは抑制工と抑止工に分けて、重要と思われるモニタリングを説明する。ここに用いた図表は斜面対策工維持管理実施要領(斜面防災対策技術協会、2016)に掲載されたものである。

2.抑制工のモニタリング

横ボーリング工と集水井工は代表的な抑制工であり、全国に相当数のストックがある。その対策工として求められる抑制機能は地下水の排水機能である。極端な排水機能の低下は孔口のスライム等で評価することも可能であるが、排水機能の経年的な低下を評価するためには降雨との応答性で評価する必要がある。そのためには排水量の時系列データが必須である。図-1と図-2は横ボーリング工や集水井工での排水量モニタリングの事例である。重要な保全対象のある集水井工等でこのような排水量モニタリングが徐々に適用されている。

図-1 電磁流量計の設置事例(斜面防災技術協会、2012)

図-2 集水井工の排水量観測結果(2010年4月~2010年7月) 4) 五十嵐ほか(2010)

3.抑止工のモニタリング

抑止工のモニタリングにおいてはアンカー工の緊張力モニタリングの事例が多いが、近年は表-1や図-3、図-4に示すような、既設のアンカー工に後づけできる緊張力モニタリングや多層移動量計の原理を用いたモニタリングシステムなども開発されている。

表-1 アンカー工の維持管理システム(斜面防災技術協会,2016)

図-3 Aki-Mosの概要図と荷重計の例(九田・増山,2013)

図-4 ECOMの概要図(サンスイ・ナビコ,2013)

実施例はまだ少ないが大変重要なモニタリングに鋼管杭工の杭変形量調査がある。鋼管杭工は地すべり変動によって鋼管杭が変形することによって抑止力を発揮するが、地すべり変動が発生した時に現在の変形が設計値内か設計値より大きな変形となっているかは、モニタリングでなければ評価できない。表-2に杭変形量調査の調査方法を示す。図-5はそのモニタリング事例である。

表-2 施工中に設置する鋼管杭の調査方法と適用性(土木研究所,2011,一部修正)

図-5 抑止杭に設置した孔内傾斜計の変位関係と傾斜計計測結果事例(春口ほか,2002)

(引用文献等)

  • 1) 斜面防災対策技術協会(2012):地すべり観測便覧
  • 2) 斜面防災対策技術協会(2016):斜面対策工維持管理実施要領
  • 3) サンスイ・ナビコ株式会社(2016):ECOMカタログ
    http://www.snse.co.jp/products/doboku/item03/index.html(2016,5,26)
  • 4) 九田敬行・増山達也(2013):「交換可能な荷重計およびアンカー緊張の自動計測に関する概要と事例」基礎工Vol.41,No.11)
  • 5) 五十嵐慎久・岩瀬信行・竹内篤雄(2010):地すべり地における対策工排水量と降雨量・積雪量との関係について、全地連(技術フォーラム2009)那覇
  • 6) 春口孝之,藤井義仁,永野賢司(2002):抑止杭に設置した孔内傾斜計の変位測定による盛土の計算管理例,全地連「技術フォーラム2002」米子

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