斜面防災技術

地すべりとは

 地すべりの定義はいろいろありますが、次のような定義が代表的です。

定義1
土地の一部が地下水等に起因してすべる現象又はこれに伴って
移動する現象(地すべり等防止法)
定義2
特別な地質条件のもとで、特別の地すべり粘土を作りながら基盤の
岩石を含めた地塊がすべる現象(小出博)
定義3
山地、丘陵における傾斜地で地塊の一部が下層のすべり面の滑材の
助けを借りて重力の作用により滑動する現象(谷口敏雄)

 斜面上の土塊や岩石などが重力によって下方に移動する現象を一般にマスムーブメント(Mass movement)と呼びます。それは、次の6つの運動様式に分類されます。

崩落(Fall)
岩石や土塊、土粒子の落下
転倒(Topple)
地層の境目等で分離した岩塊が前方に倒れ込む現象や座屈破壊など
滑動(Slide)
すべり面に沿ってその上部の土塊または岩塊が下方へ移動する現象
水平方向拡大運動(Lateral spread)
せん断や引張破砕にともなった側方への伸張運動
クリープ (Creep)
斜面を構成する岩石または土壌が重力の影響で長時間ゆっくりとした速度で下方に移動または変形する現象
流動(Flow)
土および風化岩、破砕された岩の一般的な流体的挙動

 地すべりは滑動やクリープの要素が強い現象ですが、部分的にはその他の運動様式を含んだ複合現象です。
 地すべりは斜面災害の1つですが、同じような災害に崖くずれ(崩壊)があります。地すべりと崖くずれの違いについてはいろいろな方法で表現されますが、一般には表-1のように特徴の違いで表現されます。

 わが国における土砂災害危険箇所(土石流、地すべり、急傾斜地崩壊)は全国で約52万箇所あり、そのうち地すべり危険箇所は約1.1万箇所、地すべり危険箇所における 整備概成率は約23%となっています。(国交省HPより)

 また、林野庁所管の地すべり危険箇所は5,739箇所、農村振興局所管のものは4,354箇所で、国土交通省所管の11,288箇所と合せると、全国で21,381箇所が地すべり危険箇所になっています。(平成20年版砂防便覧より)

表-1 地すべりと斜面崩壊の違い(渡,駒村らの表に一部加筆)

  地すべり 崩壊
1)地質 特定の地質または地質構造の所に多く発生する。 地質との関係は少ない。
2)土質 主として粘性土をすべり面として滑動する。 砂質土(マサ、ヨナ、シラスなど)のなかでも多く起こる。
3)地形 5゚~20゚の緩傾斜地に多く発生する。地すべりに特有の地形を示すことが多い。 20゚以上の急傾斜地の0次谷、谷頭部に多く発生する。
4)活動状況 継続性、再発性、時間依存性大。 突発性があり、時間依存性少。
5)移動速度 0.01mm/day~10mm/dayのものが多く、一般に速度は小さい。 10mm/day以上で速度はきわめて大きい
6)土塊 土塊の乱れは少なく、原型を保ちつつ動く場合が多い。 土塊はかく乱される。
7)誘因 地下水による影響が大きい。 降雨、とくに降雨強度に影響される。
8)規模 1~100haで大規模なものもある。 面積的規模が小さい。
9)徴候 大きく変動する前に亀裂の発生、陥没、隆起、地下水の変動などの微候が生ずる。 発生前の徴候がなく、突発的に滑落してしまう。
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