藤田 崇(大阪工業大学名誉教授)
地下にマグマが存在していることは、日本列島には火山が多いので、日本人なら理解しやすい、地下の物質(岩石)が溶融したのがマグマであり、地殻表層に上昇してくると周辺の温度が低いので、マグマが冷却するにしたがって鉱物結晶が晶出し、これらが集合して火成岩となる。
このマグマが地表に噴出するか、あるいは地表付近で固結したものを火山岩呼び、火山の噴火現象によりできる岩石はこの典型的なものである。それに対して、マグマが地下深部で固結したものを深成岩と呼ぶ。火山岩と深成岩の中間的なものは半深成岩と呼ばれるが、量的には多くない。一般には、マグマの固結が地表か、あるいは地下で行われたかによって、火山岩と深成岩に2大別して差し支えない。
岩石を構成する鉱物を造岩鉱物と呼ぶ。造岩鉱物の大きさやその集合状態を組織と呼び、岩石の見掛けの状態を表している。火成岩の場合、マグマが固結する際に、冷却速度が速いか、あるいは遅いかによって、固結した岩石は見掛けが異なる。前者、早く冷える場合は、結晶が成長する余裕がなく、小さな結晶の集合体となるか、結晶になる余裕もがなければ非結晶質(ガラスと呼ぶ)となる。これが火山現象でできる火山岩の特徴である。
マグマの冷却の速さが遅いと、マグマから晶出する鉱物結晶は十分に成長することができ、ガラス質の固体は生まれない。マグマはすべて結晶化し、しかも数mmの大きさに達する。このような結晶質(等粒状組織または完晶質組織という)の岩石は、マグマの固結が地下深部で行われ、しかもマグマの体積が大きい場合が多い。深成岩はこのような環境のもとに形成された火成岩で、地殻の大半を占める。通常、マグマの冷却の速さは、早いか極端に遅いかのどちらかに分かれており、半深成岩的な組織を示す火成岩はそれほど多くはない。
火成岩の鉱物の組み合わせ、つまり鉱物組成はある共通性が認められる。このことは、それぞれの鉱物の晶出温度(融点)に相違があるためで、同様の融点をもつ鉱物が集まって岩石を形成する(図-1参照)。このように、マグマから次々と鉱物を晶出していく作用を、結晶分化作用という。このようにして、融点の高い鉱物が集合した火成岩を苦鉄質岩あるいは塩基性岩と呼び、融点の低い鉱物の集合した火成岩を珪長質岩あるいは酸性岩と呼ぶ。その中間組成の火成岩は中性岩と呼ばれる。
造岩鉱物には、苦鉄質鉱物として、カンラン石・輝石・角閃石・黒雲母があり当然ながらMg・Fe成分が高く、相対的にSiO2成分は少ない。一般に、前者の鉱物ほど融点が高い傾向がある。一方、珪長質鉱物には長石と石英がある。石英の成分はSiO2であるが、長石には、Ca、Na、Kの各成分に富む灰長石・曹長石・カリ長石の3種が含まれる。このうち、カリ長石は、石英と同様におおむね単独に存在するが、灰長石と曹長石は固溶体をつくって一つの鉱物として振る舞い、斜長石と呼ばれる。灰長石成分の高い斜長石は融点が高いが、他は融点が低い。いずれにしても、Mg・Fe成分は少量で、逆にSiO2成分は多い。
苦鉄質の鉱物は、通常の大きさ(mmオーダー)で見た場合、色づいて見えるので、有色鉱物と呼ばれている。一方、珪長質の鉱物は、無色又は白色であるため、無色鉱物と呼ばれる。通常、造岩鉱物は、この有色鉱物・無色鉱物の名称がよく使われる。
有色鉱物は、苦鉄質鉱物の含有量が色の濃淡を示し、塩基性火成岩では、黒色から濃い灰色、酸性火成岩では、白色から灰色を呈している。このように苦鉄質鉱物の含有量は岩石の色調を示しているので、有色鉱物全体の体積百分率を基として、火成岩分類の基準の一つとしている。これを色指数という。ただ、色指数という語は、天文学で星の明るさを表す用語として使用される例がきわめて多いので、混同しないようにしなければならない。
有色鉱物の量比にもとづく色指数による分類として、現在では色指数35、65、90を基準として、表-1のように分類されている場合が多い。表中にカッコ内に示したような分け方もあり、色指数による分類は一様ではない。火成岩の分類として使わないことがあるが、火成岩、とくに深成岩を肉眼で識別する場合には、写真-1のように、たいへん識別が容易で便利である。
(http://www.web-sanin.co.jp/p/kiseki/shinguu/book/ch02s03.html)
鉱物の化学組成はほぼ一定であるので、鉱物の組み合わせは岩石の化学組成と密接に関係する。これらの関係は、図-2のように表せる。一般的には、現実の火成岩の状況から、化学組成はもっとも量の多いSiO2量で、45・52・66(重量%)を基準としている。
一方、有色鉱物は、比重の大きいMg・Feが多いので、塩基性の岩石はおおむね3.0と比重が大きく、中性・酸性となるに従って、2.8から2.7へと比重は小さくなる。比重が0.1程度異なっても、重量感は体験できるので、比重の測定から火成岩の分類が可能である、これらは表-2のように分類されている。しかし、岩石が風化・変質すると比重は変化するので、新鮮な岩石でなければ、比重から見分けることはできない。
以上が火成岩の分類基準である。すなわち組織の観点から火山岩・深成岩の2種(半深成岩を加えれば3種)に分類され、鉱物組成(色指数・化学組成)から塩基性・中性・酸性の3種に分類される。従って、火成岩として6種(または9種)の岩石に分類される。これらを産出量で見ると、火山岩では塩基性の玄武岩が最も多く、次いで中性の安山岩が多い。深成岩では酸性の花崗岩(写真2・3)が代表的なもので、中性の閃緑岩、塩基性の斑糲(はんれい)岩、さらに超塩基性の橄欖(かんらん)も広く産出する。
ところで、地下内部で形成される深成岩の産状は、その規模と周辺の母岩との関係から、次の4つのタイプに分けられる。
花崗岩は地殻を構成する主要な岩石で、世界中いたる所で産出されている。通常、花崗岩は無色鉱物が多量であるために白っぽく、鉱物結晶は数mmとほぼ等粒であってザラザラした見掛けを呈する。色彩は灰色から赤色まで多種にわたるが、これは造岩鉱物の割合の違いに由来する。白っぽく見えるのは石英の粒で、石英の量が多いことが特徴である。また、長石の粒も多く、斜長石よりもカリ長石(一般的にはアルカリ長石)の方が多い。有色鉱物としては黒雲母が普通に含まれ、そのほかに角閃石や、まれに磁鉄鉱・チタン鉄鉱などが含まれる。
一口に花崗岩といっても専門的にはさらに細分される。要約していえば、花崗岩とされる領域は、カリ長石に富む部分(典型的な花崗岩)とカリ長石と斜長石がほぼ等量に含まれる部分(アダメロ岩と呼ばれる)に大別される。カリ長石が少なく斜長石が多くなると花崗閃緑岩と呼ばれるが、日本ではこの花崗閃緑岩が多く、これを花崗岩と称している(写真-2)。主として石英、斜長石、カリ長石、角閃石、黒雲母からなり、カリ長石より斜長石が多い。大陸の花崗岩はアルカリ長石分が多く、紅色~淡紅色を呈して白色の岩石ではない。それに比し、日本の花崗岩は斜長石成分が多いため、白色勝ちであるのはこのためである。
日本では、花崗岩は御影石と呼ばれているが、これは神戸市東灘区御影石町付近で採石されたため、その名前で呼ばれている。中部以西の白亜紀後期から古第三紀の花崗岩はカリ長石が多く、これが淡紅色(ピンク色)を呈して、日本では最も花崗岩らしい岩石である(写真-3)。花崗岩の一部に結晶が巨大化することがあり、このような部分を「ペグマタイト」といい、数mmもの石英や長石の結晶が見られることがある。花崗岩は耐久性が高いので、建築用石材として広く用いられている。また、神社の鳥居や墓石にも古くから使用されている。
花崗岩は風化しやすい一面を持っており(写真-4)、これが原因で崩壊が多発することがある。花崗岩の風化でよくいわれるのは、地表水あるいは地下水によって鉱物が粘土鉱物に変化し、これによって岩石強度が低下する。これは崩壊の主要な要因である、という見解である。花崗岩が風化して砂状になると、「マサ」と呼ばれる。これが堆積したのが「マサ土」である。マサ土とマサは同じものではない。マサはあくまで風化花崗岩であって、岩石としての組織を残している。後者は風化花崗岩から分離して堆積したものである。両者を混同している場合をしばしば見受けられ、間違った記載が見られる場合も多い。例えば、地震によって風化花崗岩山地は崩壊しやすいが、崩壊するのはマサ土であって、風化花崗岩はそれほど崩壊を起こしていない。しかし、これを花崗岩の崩壊として報告している例が多く、このようなことが誤解をもたらした。
主成分は、無色鉱物は斜長石で、花崗岩に比べ輝石、角閃石などの有色鉱物が多く、花崗岩より黒っぽいが、斑糲(はんれい)岩ほど黒くはない。花崗岩と同時代の深成岩で底盤や岩株を形成することが多い。主に斜長石と角閃岩からなり、輝石や黒雲母を含むこともある。ほとんどの閃緑岩は石英を含み、石英を含まない純粋な閃緑岩はほとんど産出しない。一方、石英を含むものは石英閃緑岩と呼び厳密には区別する。石英閃緑岩は、長石や石英の白い結晶の間に、黒っぽい角閃石や黒雲母の結晶粒が点在し、磨耗して丸くなった岩や風化した砂はしばしば真っ白に見える。石英閃緑岩は、露頭で長期間太陽にさらされると、わずかな膨張と収縮の繰り返しにより、結晶粒の間に亀裂が生じて、風化が進行しやすくなる。
(http://kids.gakken.co.jp/campus/academy/kobe/kaseigan/senryokugan_w.html)
一般に、色指数が30から60までの完晶質の岩石をいう。通常、暗黒色から暗灰色であり、かんらん石結晶が卓越する場合は、かんらん石斑糲(はんれい)岩と呼び、これに輝石結晶が加われば、かんらん石両輝石斑糲岩などと呼ぶ。また、石英の入っているものを石英斑糲(はんれい)岩と呼ぶ。粗粒の斑糲(はんれい)岩はきわめて硬質で、節理の発達もそれほど顕著ではない。
専門的には全長石(斜長石+カリ長石)とカリ長石の比が15以下であることを条件としている。斑糲(はんれい)岩は、一応火山岩の玄武岩に対応する。日本の斑糲(はんれい)岩は大陸の玄武岩(アルカリ岩)と異なり、成因的に日本の火山岩と同系統である。日本ではそれほど分布しておらず、四国の室戸岬、山口県北部の高山、山梨県南部天子山地の富士川支流の佐野川沿い、などが代表的な岩体である。
細粒の玄武岩と粗粒の斑糲(はんれい)岩との中間型の見掛けであり、粗粒玄武岩と呼ばれることもあるように、火山岩とみなす場合もある。日本では、しばしばグリーンタフ新第三系の厚い海成の黒色頁岩層中に岩床として貫入している。新潟の椎谷・寺泊層、およびこれらに対比される各地の黒色泥岩層は地すべりの多発する地層であるので、調査中にドレライトを観察することも多いと思われる。
なお、ドレライトが変質や変成を受けて、単斜輝石の一部または全部が角閃石に変わったものを輝緑岩という。この名はヨーロッパや日本で用いられるが、米国では用いていない。
MgとFeをきわめて豊富に含む岩石であり、色指数でいえば90以上となる。通常、カンラン石・輝石・角閃石などの苦鉄質の鉱物を70%以上含む。長石や石英などの無色鉱物はきわめて乏しいか、全く含まない。超塩基性岩ともいう。通常、粗粒で岩相の変化は乏しく、単調である。超マフィック岩中の鉱物は一般に風化しやすいが、とくに、かんらん石は風化されやすく、しばしば赤褐色~褐色となることが多い。代表的な岩石は橄欖(かんらん)岩である。これはかんらん石を90%以上含んでいる。 超マフィック岩は、本来マントルの主要な構成岩石である。地表では変動帯によく現れる。貫入岩体も見られるが、多くの超マフィック岩は次のようなものである。マントルから湧き上がった物質が、中央海嶺から水平運動をして海洋を拡大させる。その際、海洋地殻の表層(海底下である)はマントル物質が主体であり、プレートの運動によって大陸周辺で付加される。これがオフィオライトであり、地表でよく見受ける超マフィック岩である。
また、プレート運動している間に海水と反応して、蛇紋岩が生成される、とされている。海洋底の物質が陸地に付加される際は、剪断作用などで岩体は細分され、しばしば断層ができる。こうして蛇紋岩はしばしば断層破砕帯に伴われ、地表の水と作用して軟弱化し、地すべりを起こしやすくなる。
これまで述べたように、深成岩の特徴は、地下内部でしばしば底盤を形成するため、結晶質の岩石であり、造岩鉱物は肉眼で識別できるほどの大きさ(mmオーダー)を示す。深成岩の他には見られない特徴である。そのため、表面がガサガサした感じであり、通常は塊状の大きな岩盤を呈する。とくに、花崗岩は陸上ではもっとも分布の広い岩石である。 深成岩の細分は、構成鉱物に基づくが、鉱物の判別は容易ではないので、色指数を使うと便利である。ただし、色指数による分類は一つではないことを明記する必要がある。これに加えて、比重(手で持った感じでもよい)を加えて考察すれば、ほとんど誤りなく識別できる。実際に野外で岩石を観察することが重要で、岩石図鑑や火成岩のホームページなどを参考にすればよい。慣れてくると一目で岩石の大区分は可能である。何よりも経験である。詳細は下記のHP、あるいは文献を参考にして頂きたい。
マグマが地下の浅い所で比較的急速に冷え固まったもので、岩脈など小規模の貫入岩体として存在する。次のように酸性の火成岩に、深成岩と火山岩の中間的な組織の岩石がみられる。
酒井治孝、2003、地球学入門、東海大学出版会、296p。
久城育夫・荒巻重雄・青木謙一郎、1989、日本の火成岩。岩波書店、206p。
地学団体研究会、地学事典。平凡社
山崎貞治、はじめて出会う 岩石学 ―火成岩岩石学への招待― 。共立出版、98p。
都城秋穂・久城育夫。岩石学I ―偏光顕微鏡と造岩鉱物― 共立全書189。248p。
都城秋穂・久城育夫。岩石学II ―岩石の性質と分類― 共立全書205。198p。
都城秋穂・久城育夫。岩石学III ―岩石の成因― 共立全書214。264p。
周藤賢治・小山内康人。岩石学概論(上)記載岩石学-岩石学のための情報収集マニュアル-。共立出版。288p。
周藤賢治・小山内康人。岩石学概論(下) 解析岩石学-成因的岩石学へのガイド-。共立出版。272p。