制作:ライト工業(株)
鉄筋挿入工とは、比較的短い棒状補強材(モルタルまたはセメントミルク内に鉄筋等の芯材を配置したもの)を地山に配置し、主に補強材の引張力によって切土のり面や斜面を補強する工法である。図1に鉄筋挿入工のイメージを示す。グラウンドアンカー工と異なり、施工時に緊張力(プレストレス力)の導入は行われない。
文献によっては、ロックボルト工、切土補強土工、地山補強土工などの名称も用いられる。国内における基準類の整備はNEXCO(旧道路公団)によって先行して行われており、多くの基準書等に引用されている。
鉄筋挿入工の基本構造は図2に示す様に、補強材、注入材、頭部、のり面工で構成される。一般的に、補強材には異形棒鋼などが使用され、注入材にはセメントミルクが使用される。また、頭部はプレートとナットによりのり面工に固定され、のり面工が補強材と一体化することにより、補強材の引張補強効果を増加させ、のり面全体の安定性を向上させる。
補強材の長さは2~5mが一般的であり、50cm単位で設定される場合が多い2)。
鉄筋挿入工の一般的な適用範囲を以下に示す
崩壊規模が大きいと想定される斜面においては、鉄筋挿入工では抑止力が不足する場合や不経済となる場合があるため、別途、グラウンドアンカー工等の検討を行う必要がある。鉄筋挿入工が適用可能な必要抑止力は300kN/m以下が目安とされている2)。
鉄筋挿入工の設計に必要な調査項目と調査内容を表1に示す。注入材と地盤の周面摩擦抵抗は、計算式による方法や、地盤区分から得られる推定値1)・2)を参考とする方法が示されている(表2)。なお、鉄筋挿入工の設計に使用される注入材と地盤の周面摩擦抵抗の推定値は、グラウンドアンカー工の設計に使用される推定値とは異なるため留意が必要である。
設計は、崩壊が軽微な場合に適用される経験的設計法と、それ以外の安定計算による設計法とに分けられる。
経験的設計法は、崩壊対策として標準勾配で切土をしたときに、深さ2m程度の浅い崩壊、または緩んだ岩塊の崩落が予測される場合に適用できるものとされている2)。経験的設計法の諸元を表2に示す。ただし、経験的設計法の適用に際しては現地状況を十分に把握し、適用性について検討することが必要である。
安定計算による場合は、内的及び外的安定を検討する必要があり、これらは極限つり合い法により実施する。内的安定の検討とは、すべり面が補強材を横切る場合のすべりについての安定性について検討を行うものである。これに対して外的安定の検討は、補強領域の外側を通るすべりに対して安定性を検討するものである。