新技術紹介

東京製綱株式会社

取材日時 平成28年11月29日(火) 13:30~17:00
取材場所 〒300-0195 かすみがうら市宍倉5707(土浦工場内)
電話 029-831-1911(TEL)
029-831-9946(FAX)
ホームページ https://www.tokyorope.co.jp/
出席者 エンジニアリング事業部:深井 健二、宮原 良平
東日本エンジニアリングセンター:吉田 泰則、永井 龍知(敬称略)
斜面防災対策技術協会ホームページ委員会:井上 宏、土佐 信一、沓澤 武

外観

1. 全般

質問1:貴社の沿革について教えて下さい。
明治20年
東京製綱会社創立
本邦初の工業用マニラ麻ロープ製造を開始
昭和26年
研究所設置(一連の新鋭機を導入、生産設備の合理化・近代化を図る)
昭和34年
東綱商事株式会社の設立(ワイヤロープ販売会社)
昭和43年
東京製綱繊維ロープ株式会社(繊維索網製造)
昭和45年
川崎工場を移転拡張し、世界的規模の土浦工場(鋼索鋼線、道路安全施設等製造)を設置
東京製綱スチールコード株式会社(スチールコード製造)設立
株式会社東綱機械製作所(鋼索鋼線製造用機械製作)設立
昭和63年
東京製綱テクノス株式会社(ワイヤロープメンテナンス)を設立
平成13年
トーコーテクノ株式会社(土木建築工事)を設立
平成16年
上海事業所開設
中国蘇省江陰市に江蘇双友東綱金属製品有限公司(橋梁用ワイヤの製造)設立
平成17年
東京製綱海外事業投資株式会社(海外事業への投資)設立
中国江蘇省常州市に東京製綱(常州)有限公司(タイヤ用スチールコードの製造)設立
平成18年
東京製綱ベトナム有限責任会社(エレベータロープ製造)設立
株式会社吊橋設計(設計コンサルタント)設立
平成22年
カザフスタン共和国のアルマティ市にカザフスタン事業所設立
香港事業所設立
ロシアの首都モスクワにモスクワ事務所設立
平成23年
東京製綱(上海)貿易有限公司を設立
平成24年
東京ロープエンジニアリング有限会社を設立(在モスクワ)
東京製綱(香港)有限公司を設立
Cable Technologies North America, Inc. を設立
質問2:会社の中での研究所の位置づけについてお聞かせください。
東京製綱のこれまでの発展を促し、これからの成長を支えていく土台の一つとして『研究所』があります。ワイヤロープの研究所では、高機能商品・高付加価値商品の開発を目指し、現状に満足することなく、日々研究を行っております。各事業所・関係会社からの現場の声を集約し、東京製綱グループとして様々な観点から製品の開発に取り組みます。
エンジニアリング事業部の開発体制ついては、災害より市場で起きている問題を解決すべく情報の収集から始まり、現地の調査を行い既存工法の課題や改善策を常に模索し、技術的観点から新製品・新工法の確立を行っております。アイデアを集約し、世に発信する極めて重要な役割を担う存在が、弊社の研究所であると位置づけております。
質問3:どのような研究開発を行っていますか?
東京製綱グループは、保有する商品群と多様性と、技術的な奥行きの深さにおいて、他に類を見ない総合的ワイヤロープメーカーです。現在では、スチールばかりではなく炭素繊維やスーパー繊維も手がけ、製品のサイズは直径100ミリを超えるものから髪の毛よりも細い極細ワイヤまで幅広く研究し、開発を行っております。用途においても、多岐に渡っており、今後ますます多様化・高度化・グローバル化が予想される市場において、お客様のニーズに幅広い対応が可能な画期的な製品の開発に向けて日々研究を進めています。エンジニアリング事業部では、主に落石対策製品の開発を行っておりましたが、昨今の広島県における土砂災害を受け、表層崩壊対策として、既存の製品に改良を加え、設計の考え方として新しく地すべりにおける研究や理論解析を行うことで新工法を確立しました。世の中のニーズを的確に把握し、迅速に世に発信し貢献することが「ケーブルの総合企業」としての責務と考えています。
質問4:法面,積雪地関連製品の概要について教えて下さい。

法面、積雪地関連製品は、主に災害から生命・財産を守ることを目的としたものです。地震や暴風雨、竜巻等、災害といっても様々なケースが想定されますが、起こりうる事態をあらかじめ想定しておくことで『リスクコントロール』危機回避が可能なことから、エンジニアリング事業部では法面、積雪地関係として防災製品を開発・提案をしております。
法面全体におけるリスクとして、災害などにより外的要因から、岩塊や礫が母岩より剥離したり、砂礫層中の岩塊・礫が抜け落ちる等が挙げられます。このような想定されるリスクに対して、『落石対策便覧』に則り落石パターンの分類を行うことで、それぞれの現場における最適な提案を行います。一番の対策としては、危険箇所について岩除去工を行い、危険因子自体そのものを取り除く方法が確実ではありますが、それぞれの全てに適用できる訳ではございません。弊社がご提案している製品は、そのような現場に対し、危険因子(岩)を取り除くことなく落石の対策を行うというものです。主に、発生源自体を抑える『落石予防工』と発生源からの落石を待ち受ける『落石防護工』の2つに分類され、現場ごとに法面の防災製品として最も適した工法のご提案をしております。
積雪地関係製品では、法面製品で着目していた岩塊とは別に、雪に着目した防災製品となります。寒冷地では、落石とは別に雪崩などによる雪の災害が非常に多くなっております。そこで、落石の対策と合わせて、雪崩対策として積雪地関係製品としてラインナップしております。
落石・雪崩災害から、人命・保護対象・信頼を守るために、現場ごとにあらゆるケースを想定して製品のご提案を行います。

製品ラインナップ一覧(東京製綱(株)HPより転載)

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2. 法面関連、積雪地関連製品について

質問1:貴社の特徴的な製品についてご紹介をお願いします。

表層崩壊予防工法のミラフォースⅠ
鋼管杭を鉛直方向に打ち込む表層崩壊予防工です。杭工に分類されます。
不安定な移動層を突き抜き、安定した不動層にMF杭(鋼管杭)を設置することで、不安定な移動層(1.0m~3.0m)の表層崩壊を予防する工法です。
軽量で足場が不要な掘削機のエアーハンマーを使用するので、これまで施工のできなかった重機が使用できない場所や、足場が設置できない高所や狭所などでも容易に施工ができます。
移動層深さと勾配により使用する杭本数が決まり、現場状況により経済的にも優位性があります。

質問2:開発にあたって実証実験等の実施状況などについて教えて下さい。
落石防護柵製品開発の際には必ず実物大実験を行い、性能を実証しております。
質問3:今後取り組みたいテーマはありますか?
落石防護と崩壊土砂の捕捉を兼ね備えた製品の開発。
質問4:多くの製品ラインナップがありますが、販売傾向などありますか?

従来の土砂部用アンカーに代わる新アンカー「ブレイクアンカー」を開発したことにより、このアンカーを採用した安全面・施工面で優れた製品の販売を推進しております。 このブレイクアンカーは人力移動可能な掘削式の施工機械を使用するため、地盤状況を選ばず施工が可能です。また、従来の土砂部用アンカーにはない引き抜く方向への抵抗力を持ち合わせています。
新工法から従来工法まで、このブレイクアンカーは適用することが可能です。

カタログより転載

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3. 研究設備等について

質問1:どのような研究設備がありますか?

弊社研究所では各種設備を備えて、ワイヤロープや各種線材の新製品・新技術の「開発」、顕微鏡観察・化学分析・各種測定による「調査」、疲労試験・材料試験による「試験・評価」を行っております。

【代表保有設備】

  1. 定性成分分析 → 電子線マイクロアナライザ(EPMA)
  2. 定性成分分析 → 高周波誘導結合型プラズマ発光分析装置(ICPS)、炭素硫黄分析装置
  3. ロープ調査 → 大型遊星疲労試験機、パルセータ、引張試験機、リラクセーション/クリープ試験
  4. 断面等調査 → 電界放射型電子顕微鏡(FE-SEM)、三次元表面粗さ測定器、走査電子顕微鏡(MIN-SEM)、金属顕微鏡
  5. 対候性調査 → 塩水噴霧試験装置
  6. その他 → 微小硬度計

また、法面関連・積雪地関連製品についても、各種実験施設により実証実験を行い、新製品・新技術の開発を行っております。

【代表保有設備】

  1. 衝撃試験施設 → 柵構造衝撃試験場(土浦)、ネット構造衝撃試験場(徳島)、各種部材衝撃試験タワー(研究所)、面材衝撃試験用フレーム(土浦)
  2. 雪関連製品 試験フィールド → (札幌)、(山形)

大型遊星疲労試験機 ・パルセータ(疲労試験機)

実物大重錘衝突試験・衝撃試験タワー

※1:カタログ等資料より転載 ※2:取材時撮影

質問2:他の研究機関との共同研究があれば教えてください。
鋼製防護柵協会・NPOなだれ防災技術フォーラム 他

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4. 最後に

質問1:斜面防災対策技術協会のホームページを見たことはありますか?
斜面防災全般の分野について調べる際、御社のホームページを拝見させていただいております。
地滑り対策・がけ崩れ対策・雪崩対策のそれぞれに定義やしくみ、基本的な対策方法が掲載されていますので、活用させていただいております。
質問2:斜面防災対策技術協会に期待することはありますか?
今後も斜面防災の研究開発、新技術の提案等を行う中心の機関であり続けていただきたいと望んであります。

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5. 取材後記

今回の取材は、落石対策工法資材のメーカー様の工場内での実験施設を拝見させていただきました。会社沿革の紹介から明治時代の創業であるとのこと、ロープ製造を通して様々な産業に寄与されてきたことに自分の認識不足を恥じながらも感慨を受けました。

取材は、本文にもあるように落石対策技術を中心に進められましたが、その根幹をなすワイヤーロープの製造ラインを見せて頂くことができました。製造における品質確保のための工夫が詰まっているためここでは写真の紹介ができないのが残念ですが、長大な機械から轟々たる音響の中ワイヤーロープが編み込まれる様子からは、製品のみならず工法技術への品質のこだわりや歴史の深さが伝わってきたように思います。各種各様の特徴の鋼線製造から手がけられているところから、工場には海外から視察に来られる方々もおられるとのこと。素材から工法技術へ全社で取り組んでおられる様子が伝わってきました。

これからも、我々の技術を支える基礎的な素材を提供していただく企業の取り組みが紹介できればと思った次第でした。

(文責:斜面防災対策技術協会 ホームページ委員 沓澤)

6. 取材写真

①研究所の入り口

研究所の入り口

②研究所エントランスに飾られた太径ワイヤーロープと取材メンバー

研究所エントランスに飾られた太径ワイヤーロープと取材メンバー

③取材の様子(工場の概要と保有技術について説明を受けました。)

取材の様子(工場の概要と保有技術について説明を受けました。)

④面材衝撃試験用フレーム

面材衝撃試験用フレーム

⑤衝撃試験用重錘

衝撃試験用重錘

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