防災メモリアル地附山公園入口
地すべり観測センター(資料館)
取材日時 | 平成29年11月18日(土) 10:00~12:00 |
---|---|
取材場所 | 長野県長野市大字上松3024-1「防災メモリアル地附山公園」内 |
電話 | |
ホームページ | |
取材回答者 | NPO法人長野県地すべり防止工事士会:馬場昌孝・山田泰弘(敬称略) |
取材者 | 斜面防災対策技術協会ホームページ委員会:井上宏・沓澤武・土佐信一・宇野智博 |
回答1:
長野市北西部にある地附山の南東側斜面で、昭和60(1985)年7月26日に大規模な地すべりが発生しました。その規模は延長700m、幅500m、深さ60mであり、移動した土塊により斜面下方にあった湯谷団地や老人ホームなどが被害を受け、26名の人命が奪われました。
これ以前には、地附山地すべりでは昭和56(1981)年より地すべり変状が現れはじめ、長野県により調査が進められていました。また、地すべり発生前となる昭和60年の梅雨期の雨量は例年と比べて2倍近くも多く、地すべり発生直前となる7月20日にも大雨による土砂崩落が発生していました。
回答2:
地附山周辺には、新第三紀中新世の裾花凝灰岩部層と呼ばれる凝灰岩・流紋岩溶岩を主体とした地層が分布しています。このうち、地すべり斜面には泥岩・泥岩由来の礫が存在する岩塊・粘土鉱物(モンモリロナイト)を含む中部層が分布しています。地すべり発生域の地質構造は周辺部とは異なり、長野盆地西縁断層の派生断層と推定される断層に囲まれたブロックが流れ盤構造となっているという特徴があります。
このような中で、台風や梅雨に伴う大雨により大量の地下水が地すべり斜面に供給され、裾花凝灰岩部層中部層内をすべり面として地すべりが発生しました。
このような地すべり発生機構に対し、大きく4つのすべりを推定して対策工が計画されました。地すべり地の主たる崩壊すべりを上部すべりと下部すべりに区分し、上部すべりでは集水井を主体とした地下水排除工が計画され、下部すべりでは集水井による地下水排除工と深礎杭工が計画されました。また、崩壊により派生するすべりとして頭部すべりと末端すべりを推定し、頭部すべりに対しては頭部排土工、末端すべりにはアンカー工を主体とする対策工が計画されました。上部すべりに対する集水井工の排水出口の確保および地下水排除を目的とした排水トンネルも計画されました。
昭和61(1986)年9月に発生した2次崩落により、上部すべりに杭工を、頭部すべりにアンカー工を追加計画しました。
回答3:
昭和60年度より対策工の施工が始まりました。
対策工の施工は、上部すべりの集水井8基の施工から始まり、深礎杭工・頭部排土工・団地復旧工・アンカー工・集水井工12基が順次施工されました。
昭和61年度の2次崩落により、杭工および頭部アンカー工が追加されたほか、被災した集水井3基の新設などが行われ、概ね昭和63年度に対策工が完成しました。
平成元(1989)年度より植生工の施工が始まり、平成15(2005)年度まで継続して実施しました。
また、地すべり状況の監視を目的として、平成元年に地すべり地内に「地すべり観測センター」が設置され、自動観測が現在も継続されています。
回答1:
地すべり観測センターは、自動観測システム等による地すべり活動の監視、および資料公開の場として平成元年度に完成しました。当初は地すべり地一帯が基本的に立ち入り禁止とされていたことから、長野県への申し込みによる見学に限られていました。 地すべり跡地が長野市の公園として整備されることとなり、平成16(2004)年に「防災メモリアル地附山公園」が開園しました。これに合わせて、平成17(2005)年4月より「地すべり観測センター」が「地すべり資料館」として一般に公開されることになりました。
回答2:
地すべり観測センター(資料館)内では、地すべり災害の経緯や発生機構・対策工の概要を示したパネル展示のほか、地すべりの立体模型や地すべり観測機器の実物も展示されています。また、地附山以外に近年長野県内で発生した土砂災害についても、パネル展示やビデオ上映などを行っております。その他に子ども向け展示として、液状化実験装置や積み木を用いた地すべり装置などもあります。
館外の公園内には、各対策工の施工箇所に説明パネルが設置されているほか、見学者が集水井内部を目視や音で確認できるような装置の設置や、実際の杭工に使われたものと同じ鋼管杭が展示されているなど、一般の見学者の理解が深まるような工夫が随所でなされています。
回答3:
地附山公園は、長野市公園緑地課が管理しています。
地すべり観測センター(資料館)は長野県長野建設事務所が管理し、資料館見学者への説明をNPO法人長野県地すべり防止工事士会が長野県より受託し、土曜日・日曜日・祝祭日のみ公開しています。説明はおもに工事士会のうち10人程度が交替で対応し、1人あたり1ヵ月に1~2回ほどを担当しています。
回答4:
地附山公園の開園期間は毎年4月1日~11月23日までで、冬季は閉園しています。開園時間は8:30~16:30(6~8月は~18:30)です。
地すべり観測センター(資料館)は公園の開園期間中の土曜日・日曜日・祝祭日のみを一般開放していますが、事前に長野県への申込みがあれば随時対応しています。
利用者数は1日平均12.1人、年間836人(平成29年度)です。以前は多い時で1日30人を超えた時もあり、小学校の見学などもありましたが、最近はやや減少傾向にあります。
回答10:
長野県内の全ての住民に対して、地すべり防災に関する啓蒙活動を行い、地域の安全に寄与することを目的として、また、同様の目的を持って活動する団体の事業に関する連絡、助言又は援助の活動を行うことを目的として、平成15年10月に設立されました。 個人会員40名、団体会員10団体です。
回答10:
などを行っています。
回答1:
地すべり防止工事士は斜面防災技術協会の認定資格であり、長野県地すべり防止工事士会は斜面防災技術協会と連携しているものと思っています。ほとんどの会員はホームページを見ていると思います。
回答2:
地附山観測センターで多くの方たちに接し、直接話しをする中で自然災害に対する関心が高まっていることを強く感じます。斜面防災技術協会と連携し、今後も防災対策の向上に努力していきたいと考えています。
取材日は開園期間の最終日も近い時期で、秋も深まり紅葉も見頃かと期待していたところでしたが、当日はあいにくの小雨模様で肌寒い天候でした。このような天候もあってか、季候の良い時期には家族連れなどで賑わう公園も、当日は閑散としておりました。
資料館の見学にあたっては、実際の現場にも携わっておられた馬場さんが私たち専属の説明者として対応して下さり、館内の隅々まで詳細に説明していただきました。中でも、地中に配置された対策工の立体模型は、普段は見ることができない地中での地すべり対策工の配置イメージや、地附山地すべりで複雑に配置された各種の対策工の位置関係などが容易に理解できました。その他にも子ども向けに積み木を利用した地すべり装置や液状化実験装置「エッキー君」が展示されているなど、子どもを含めた一般の見学者から地すべり技術者までいろいろな視点で幅広く理解できるような工夫が多々なされていると感じました。
その後、館外の公園を見学する頃には雨も上がり、集水井工やアンカー工(のり枠工)などを見学しながら公園内を回りました。ここでも、実際に設置された鋼管杭と同じものが展示されているなど、普段は地中にあって見えないものが理解しやすいような工夫がなされていました。
地附山公園は天候が良ければ長野市街を一望にできますので、季候の良い時期に改めて訪れてみたいと思いました。