取材日時 | 平成26年7月30日(水)15:30~18:00 |
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取材場所 | 〒245-0051 神奈川県横浜市戸塚区名瀬町344-1 |
電話 | 045-814-7221(代表) |
ホームページ | http://www.taisei.co.jp/giken/ |
出席者 | 地盤・岩盤研究室:青木 智幸 室長、谷 卓也 主任研究員 斜面防災対策技術協会ホームページ委員会:沓澤 武、井上 宏、原 弘 |
回答1:
沿革は以下のとおりです。
現在、職員数約200名、実験等に従事する関連会社の職員も合せ300名余りが研究開発及び関連業務に携わっています。
1979年に建設された技術センター研究本館(管理研究棟)は、2007年に、超高強度繊維補強コンクリートや、省エネ型ファサード(コンパクトダブルスクリーン)など多くの新技術を適用し、次世代研究施設の実証モデル、技術のショーケースとしてリニューアルされました。
回答2:
技術センターは本社機構の一つであり、管理部門となる技術企画部、知的財産部をはじめ、建築系の建築技術研究所、建築技術開発部、土木系の土木技術研究所、土木技術開発部の6部門で組織、運営されています。
このうち、土木技術研究所は「土木構工法研究室」、「地盤・岩盤研究室」、「水域・環境研究室」の3つの研究室によって構成されており、「先端技術情報の収集」、「先端技術の研究開発」、「現場の技術支援」を大きな役割と位置付けています。
回答3:
地盤・岩盤研究室は「土質チーム」、「岩盤チーム」、「地下水チーム」で構成され、地表面以下の地盤や地下水に関わる幅広い分野を対象に研究開発を進めています。
「土質チーム」は、土材料、地盤改良に関連する試験や解析、液状化対策、耐震補強のための地盤改良等に関する研究開発を行っています。
「岩盤チーム」は、岩盤構造物や山岳トンネルに関する技術開発、岩盤評価技術等を研究しています。
「地下水チーム」は、岩盤・土質地下水に関する原位置評価技術の研究開発、地球シミュレータを使った大規模数値解析等を行っています。
回答4:
開口亀裂のある硬岩地山でのアンカー体設置工法:
布パッカーを使用したアンカー体とロータリー掘削した滑らかな孔壁との付着強度(極限摩擦抵抗)を改善するために、導水線(綿材)方式を考案しました。導水線近傍にできる空隙を通じて、グラウト注入時に滲出する低濃度のろ過液を排水することで、高濃度のグラウトセメント粒子を孔壁部に残留させる工法です。
この工法を用いて、常願寺川白岩砂防堰堤(富山県)右岸の岩盤補強対策工事に用いました。
(開口亀裂のある硬岩地山でのアンカー体設置方法の開発,土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)より)
機械撹拌系地盤改良技術(WinBLADE工法):
小型機械、地中で開閉可能な撹拌翼の採用や監視・自動制御システムにより、既設構造物直下や周辺狭隘部に適用できる機動性に優れた地盤改良技術です。
この工法を、大規模地震による土砂流出や変状防止を目的とした盛土造成地ののり面の耐震補強として適用しました。のり面直下に民家の隣接する箇所で、傾斜35度~50度で、最大長さ7mの改良体を150本造成しました。(パンフレットより)
回答5:
他、国際学会への発表、学会雑誌への論文投稿、発注者へのプレゼンなどで研究成果を積極的にアピールしています。
(1)青木 智幸・岡本 修一・玉村 良・舘 克彦・浦川 信行(2003):開口亀裂のある硬岩地山でのアンカー体設置方法の開発、土木学会第58回年次学術講演会。
(2)青木 智幸・浦川 信行(2005):急峻な岩盤面の崩落防止アンカーの設計・施工、土木技術、60巻8号。
(3)小林 真貴子・石井 裕泰・藤原 斉郁・青木 智幸・立石 洋二・遠藤 堅一・広川 郁夫・菅 浩一・三上 登・佐藤 潤(2013):地中拡翼型の地盤撹拌改良工法の開発、大成建設技術センター報,第46号。
(4)谷 卓也・工藤 直矢・青木 智幸(2013)坑内天端傾斜計測による切羽前方評価システムの開発、大成建設技術センター報、第46号。
回答6:
(独)土木研究所及び民間会社13社による「側方流動対策としての地盤改良技術に関する共同研究(平成18年~23年度)」を行いました。杭状改良体と璧状改良体の機能別配置により、地盤の沈下・変形を効率的に抑制できる、経済性と周辺地盤への影響抑制とを両立できるコラムリンク工法(右図)の開発を行いました。
(土研ホームページ資料より)
研究課題:クロスアンカー工法
回答7:
液状化の懸念される軟弱地盤上の既設盛土構造物を対象とし、沈下など地震による多少の変形は許容しながらも、必要な機能維持を経済的に図る新たな耐震補強法の開発を進めています。
回答8:
実績のある液状化の影響を考慮した2次元静的残留変形解析法(ALID)を新たに3次元に拡張し、補強法の合理的設計法を検討しています。これまで実施した遠心模型実験モデルについて解析を行った結果、補強により盛土沈下が抑制される様子など実験結果を定量的にシミュレートできています。さらに、道路や鉄道など実際の寸法を想定したモデルについても解析を行ったところ、盛土天端の沈下が抑制され、盛土寸法が大きい場合も補強効果が得られることを確認しています。
回答9:
国土強靭化政策に基づき、斜面防災技術は重要なテーマと考えています。
現在は、液状化対策と盛土法面の安定化に注力しています。
(1)三角 真貴子・藤原 斉郁・立石 章・青木 智幸(2011):液状化地盤上の盛土耐震補強技術の開発(その2),大成建設技術センター報,第44号.
(2)小林 真貴子・藤原 斉郁・立石 章・青木 智幸(2012):液状化地盤上の盛土耐震補強技術の開発(その3),大成建設技術センター報,第45号.
回答10:
WinBLADE工法:地中で開閉が可能な撹拌翼を使用し、セメントミルクと原地盤を混合撹拌することで、円柱状の固結改良体を造成する工法です。地中障害物を避けた施工や、斜め・水平方向など、これまで困難とされた様々な条件下での施工が可能です。
(1)石井 裕泰・藤原 斉郁・小林 真貴子・松井 秀岳・青木 智幸・立石 洋二・菅 浩一・三上 登・佐藤 潤(2012):地中拡翼型の地盤撹拌改良工法の開発,大成建設技術センター報,第45号.
回答11:
(1)三軸振動台:大地震の振動を再現し、土木・建築構造のモデルやプラント・精密機器・家具などについて高精度の耐震実験を行います。過去に観測された大地震の前後、左右、上下の揺れを3次元的に再現、実際の地震と同じ揺れによって構造物の地震時の挙動を解明し、耐震安全性を実証します。
(2)遠心力載荷実験装置:地下深い地盤や構造物の挙動を、縮小した地盤模型で再現するために遠心力を利用している装置です。深さ100m程度までの地盤の挙動や、最大400galまでの地震を再現することが可能です。
(3)土質実験・岩石実験室:土質実験施設では、粘土や砂の地盤を再現し、重量や変形、圧縮による液状化の実験を行います。岩石実験施設では、地下深部での状況を再現しながら岩石や地下水の挙動実験を行います。
回答12:
技術センター技術企画部企画室までお問い合わせ・お申し込み下さい。
回答13:
大変見やすくかつ分かりやすくまとまっているHPだと思いました。当室にも地すべり防止工事士が1名在席しており、お世話になっております。
大成建設技術センターは、横浜市戸塚区にあります。JR東戸塚駅よりバスに揺られること10分あまり、周辺住宅街と、洗練されデザインの研究施設とのコントラストに目を奪われました。斬新さは外見だけでなく、最先端のテクノロジーがふんだんに盛り込まれた、まさにスマートで、インテリジェンスな研究施設という印象でした。
1988年には国内初の免震構法を情報管理棟増設に採用され、1990年には業界初の遠心力載荷実験施設の建設、2012年には業界最大級の津波造波装置を増設されるなど、先端設備の導入、先端技術の研究開発、そしてその実証を積み重ねてこられた歴史を知ることができました。2011年東北地方太平洋沖地震の地震動で、情報管理棟の荷重を支えるすべり支承がはじめて変位し、20年あまりの時を経て免震性能が実証されたというエピソードにも驚きました。
今年5月に完成したばかりの、都市型ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)実証棟という施設を見学させていただきました。超省エネを支える太陽電池外壁ユニット、自然光採光システム、燃料電池の低温排熱を有効活用した空調システムなど、最先端の技術を統合した施設で、年間のエネルギー収支ゼロを目指すことをコンセプトとされています。白一面の未来的な空間というイメージでしたが、これらに象徴される最先端の技術は、これからの新しい施設への利用だけでなく、既設構造物の延命化や強靭化を図ることも可能な再生化技術でもあることを、取材を通して実感しました。まさに、斜面防災技術分野でも既設構造物の維持管理という同様の課題があり、その対応は急務であること、認識をあらたにいたしました。
お忙しい中、つたない取材に快く応じていただきましたこと、感謝申し上げます。また、トンネル切羽前方地山予測技術、赤坂プリンスホテルの解体にも採用された環境配慮型の解体工法、ボスポラス海峡沈埋トンネル、など他にも多くの話題をご提供いただきましたが、ここではその一部のご紹介となりましたこと、残念な思いです。
最後に、対応いただきました、青木室長、谷主任研究員に、あらためて御礼申し上げます。
(文責:斜面防災対策技術協会 ホームページ委員会委員 原)