新技術紹介

株式会社レアックス札幌本社

取材日時 平成26年10月17日(金)10:00~12:00
取材場所 〒065-0024 札幌市東区北24条東17丁目1-12 株式会社レアックス札幌本社
電話 011-780-2222(代表)
ホームページ http://www.raax.co.jp/
出席者 株式会社レアックス:和田 哲 取締役 技術本部長、最上 哲弥 営業部長
斜面防災対策技術協会:小沼 忠久 北海道支部長、土佐 信一 ホームページ委員

1. 全般

研究所の沿革

質問1:貴社の沿革について教えて下さい。

回答1:

沿革は以下のとおりです。

1988年
孔壁展開画像記録装置(ボアホールカメラ)BIP-1開発販売と地質調査を柱に会社設立。
1990年
地質調査業登録、車載型の大深度検層装置BIP-1500(深度1500m)が完成。
1996年
BIPS開発で科学技術庁長官賞受賞、札幌市南区に自社の八剣山テストフィールドを開設。 以後、1999年 建設コンサルタント登録(地質部門)・計量証明事業登録、2001年 建設業登録、2006年 測量業登録・建設コンサルタント登録(建設環境部門)追加等を経て現在に至る。

現在、札幌本社と東京支店に従業員38名で事業を行っています。

研究室の特徴

質問2:貴社の業務内容について教えて下さい。

回答2:

当社の主な業務内容は、次のように分類できます。

  1. 地質関連技術サービス:ダム・橋梁等の建設工事や道路斜面・地すべり対策工事などにおける地質調査およびコンサルティングと、ボアホールカメラを用いた計測サービス。
  2. 環境関連技術サービス:土壌・地下水汚染調査とアスベスト調査。
  3. レンタル・販売:自社開発のボアホールカメラや井戸調査用カメラ、海外製の調査機器・ソフトウェアの販売および機器レンタル。
  4. 調査機器の研究開発:BIPシステム・コアスキャナ・井戸調査用カメラ等の自社独自技術開発と、大深度地下水採取システムなど特殊装置の受託開発。

最近の売上に占める割合は①:②:③=1:2:1と、環境計測が大きくなっています。

質問3:貴社の特徴的な開発製品について教えて下さい。

回答3:

自社技術開発製品で代表的なものとして、ボーリング孔壁画像化装置BIP-Vがあります。

ダムの地質技術者である創業社長の、岩盤内の亀裂の方向・傾斜を測りたいという動機から、ボアホールカメラ利用の孔壁展開画像作成装置を発案したことが出発点です。以後、BIPシステム(Borehole Image Processing System)の開発・改良に取り組み続け、最新版は5代目のBIP-V、小孔径φ66mmから大孔径φ400mm、最大深度1500mに至るまで、様々な分野で利用できるシステムになっています。

特徴は、3種のプローブ(デジタル可視イメージ、ライブビデオイメージ、超音波イメージ)を用いることで、異なる画像方式のクロスチェックで高信頼・高精度化を可能としたことです。また、光学カメラの位置が孔中心から少々ずれても歪みの少ない孔壁展開画像が作成できる点も、当社技術独自の特徴です。

我が国では、国道305号の越前海岸玉川岩盤崩落事故(1989)や豊浜トンネル岩盤崩落事故(1996年)を契機に、ボアホールカメラによる岩盤内の亀裂計測が増えました。またボアホール内の亀裂の方位・方向を把握することの重要性と、それを把握可能にするボアホールカメラシステムの有効性が知られるにつれて、計測事例も増加してきました。

BIPSに関しては海外からの問合せも多く、これまでにアメリカ・スウェーデン・韓国・台湾・オーストラリアへの販売実績があります。このためソフトウェアとマニュアルは英語版も用意しています。

斜面でのボーリングは一般に仮設コストのウェイトが高いため、せっかくならコア採取のみでなく、BIPSで孔壁データ取得や各種検層など、積極的に孔を活用して計測を行うことをお勧めします。

質問4:ボーリングオペレータの技量に拠る部分について、コア採取では極めて顕著ですが、ボアホールカメラの利用にあたってはどうですか?

回答4:

昔のBIPSでセンサー外径がφ60mmと大きかった時期は、とくに細径ボーリングほどトラブルのリスクが高くなるため、腕が良いオペさんの場合は安心できました。

現在のBIPSのセンサー外径は標準φ50mmと小さくなり、いわゆる66・86・116コア孔のいずれでも心配なく計測できます。深尺の段堀り孔でも問題はありません。

我が国では、国道305号の越前海岸玉川岩盤崩落事故(1989)や豊浜トンネル岩盤崩落事故(1996年)を契機に、ボアホールカメラによる岩盤内の亀裂計測が増えました。またボアホール内の亀裂の方位・方向を把握することの重要性と、それを把握可能にするボアホールカメラシステムの有効性が知られるにつれて、計測事例も増加してきました。

なお66・86孔ではあまり問題になりませんが、それ以上の孔径になると、孔内水の透明度が計測精度に効いてきます。

斜面防災技術に関連する研究内容

質問5:斜面防災技術に関連する研究があればタイトル等を教えて下さい。

回答5:

斜面防災に関連する研究としては、ダム湛水地内の地すべりへのBIPSの適用が代表的です。斜面防災関連の発表論文や原稿として、以下のものがあります。

(1)泥水に対応できる孔内観察システムの適応例、冨浦裕司ほか、全地連「技術e-フォーラム2007札幌」予稿集No.56、2007年

(2)超音波画像検層装置(USS)の地すべりへの適用、最上哲弥、レアックスプロジェクトシートNo.29

<要旨>

  • 従来のボアホールカメラにアタッチメントで付け替え可能な超音波スキャナーを開発した。孔壁が硬質なら反射強度が強く、軟質なら弱い特性から、層界・走行傾斜・亀裂分布を可視化できる。

(図1~図4)

図1~図4

  • 現場事例1として、地すべりブロック内の孔壁を超音波スキャナーで計測し、移動層(主に蛇紋岩)と硬質岩盤(主に泥岩)の境界が特定でき、走行傾斜から各層の構造の違いも把握できた。
  • 現場事例2として、古い地すべり地形での孔壁を超音波スキャナーで計測し、礫質土~粘性土~硬質頁岩の各境界面は特定できなかったが、礫と基質の確認と移動層の推定はできた。

(図5・図6)

  • 図5・図6
  • 遠心力載荷実験装置(パンフレットより)
  • 現場事例1
  • 現場事例2

(3)岩盤斜面の不連続面解析-BIPSの活用事例とその検証-、国分英彦、レアックス20周年記念技術論文集、2008年4月

<要旨>

  • 岩盤不連続面の属性(本数、開口幅、走行傾斜等)は定量的なため、BIPSで累積開口量曲線やステレオネットを解析過程に活用することで、観察者に依存しにくいルーティンを提供できる。
  • データ解析方法(領域の区分・データのバイアス・集中域ベクトル)および岩盤斜面崩壊の考え方(累積開口量曲線の検証例・岩盤崩壊の条件)を説明した上で、BIPSによる3事例を紹介する。
  • 1.地震で崩壊した古第三系始新統の礫岩・左岸・頁岩からなる斜面の、BIPSと壁面で観察される事象から、崩壊機構は重力によるものではなく、地震動に特有な岩盤崩壊の可能性がある。

(図11~図13)

調査地全景

解析断面図

壁面スケッチ

  • 2.新第三紀鮮新世の安山岩溶岩及び同質火砕岩からなる急崖でのBIPS観察から、亀裂の発達状況と冷却ユニットの対応、特有の重力的変形と災害要因がより明瞭になった。

(図14~図16)

調査地全景

壁面地質

ボーリング孔の節理解析

  • 3.第四紀更新世の安山岩溶岩及びハイアロクラスタイトからなる岩盤で、調査段階にBIPSで解析した断面と、施工時に出現した実際の岩盤不連続面は、概ね想定どおり一致した。

(図17~図19)

模式断面図

水平断面図

解析断面図の検証

(4)フレックスプローブの調査事例-集水管の洗浄効果確認-、下畑克洋、レアックスプロジェクトシートNo.3

<要旨>

  • 地すべり地で、経時による管内の汚れが懸念される集水井の集水管と水位観測孔の内部の状態を、φ25mmのカラーカメラを持つ「フレックスプローブ」で観察した。(図1)

フレックスプロープ P373

  • 集水井の集水管(VP40)39孔・延べ766mの洗浄前後の観察を行った結果、洗浄前にはスケールの堆積やストレーナの目詰まりが観察されたが、洗浄後には概ね除去されたのが確認された。
  • スケールの堆積とストレーナの目詰まり
  • スケールによる管の閉塞
  • 流出するスケール
  • 孔底付近に堆積するスケール
  • 図2.集水管洗浄前の管内状況
    • 非常にキレイに洗浄されている
    • 少量のスケール残留
    • 機能回復したストレーナから水染み出し
    • 洗浄後の孔底部

    図3.集水管洗浄後の管内状況

    • 集水井の近傍に設けられた水位観測孔の内部は、ストレーナの一部目詰まりや孔底の堆砂、ジョイント部の汚れなどが確認され、孔内洗浄が望ましい状況が明らかになった。
    • ジョイント部に付着した汚れ・水位付近の状況
    • ストレーナの目詰まり・孔底の堆砂と昆虫の骸

    図4.水位観測孔(鉛直孔)の管内状況

    研究成果の主な発表場所

    質問6:研究成果の発表はどのような機会におこなっていますか?

    回答6:

    自社製品として販売するほか、論文や学会発表を行っています。投稿や発表を行っている主な学会等は、日本応用地質学会・全地連技術フォーラム・土木学会・日本地質学会、などです。

    他の研究機関との共同研究

    質問7:他の研究機関と共同研究など行っていますか?

    回答7:

    BIPシステム等の最先端の地盤可視化技術の高度化・普及を図るため、国内の大手地質調査会社10社が加盟して立ち上げている「アース・スキャニング研究会(ESA)」に、メーカーとして協賛して活動しています。ホームページはhttp://www.esa.gr.jp/です。

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    2. 個別研究の進捗状況と今後の方向性

    現在進めている個別研究課題

    質問8:現在進めている研究開発課題と、現時点の成果の概要を教えてください。

    回答8:

    BIPシステムに関する開発課題と現時点の成果は次のとおりです。

    1. 高精度化:孔壁展開画像の分解能は孔径により異なりますが、計測時の深度は最小0.25mm単位で管理できます。
    2. 高速化:BIPSの現在の記録速度は54m/h、すなわち深度幅50mを1時間で計測できます。
    3. ソフトウェアによる利便性:孔壁展開画像から作成したコアモデルをスマートフォンでぐるぐる回して見ることができるアプリを開発しました。
    4. 大孔径への適用性:大口径の立杭用として、直径5mまで到達できる強力な照明を備えたライブビデオイメージ(DSV)プローブを開発しています。地すべり集水井のライナープレート観察にも適用可能です。
    5. 小孔径への適用性:小径孔用として、φ26mmのデジタル可視イメージ(OSV)プローブを開発しています。
    質問9:今後の研究の方向性は?

    回答9:

    • 高精度化と高速化は、現時点でも高いレベルに達していますが、今後も追及していきたい課題です。
    • 情報通信技術を活用した計測支援(お客様による現場計測情報をリアルタイムに受信しながら、当社技術者が計測データの良否を判断して現場計測を支援する)を考えています。
    • 今日の取材で、大孔径用DSVプローブを地すべり集水井の内壁観察に適用できることを知ったように、自社技術や自社製品が適用可能な、まだ知らない分野を知っていくことも、今後の研究開発の方向として非常に重要であると認識をあらたにしました。

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    3. 特徴ある技術・研究について

    最近開発した技術・研究成果

    質問10:最近開発した技術・研究成果・営業品目はありますか?

    回答10:

    先にも述べたとおり、大口径の立杭用として直径5mまで到達できる強力な照明を備えたライブビデオイメージ(DSV)プローブと、小径孔用としてφ26mmのデジタル可視イメージ(OSV)プローブを開発し、販売しています。

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    4. 施設の利用方法

    斜面防災関連で利用可能な研究施設

    対外的な研究施設の利用方法

    質問11:斜面防災に関する研究施設がありますか? その利用申込み方法を教えてください。

    回答11:

    札幌本社から南西に30kmの位置に、八剣山(はっけんざん)テストフィールドを持っています。ここには深度100mのテスト孔があり、自社技術開発の検証のほか、全国地質調査業協会連合会・北海道支部で2年おきに検層の講習会に利用されています。

    利用を希望される場合は、当社にお問い合わせください。

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    5. 最後に

    協会HPについて

    質問12:当協会のHPをみたことがありますか?あればその感想を教えて下さい。

    回答12:

    以前、斜面関係の問い合わせを受けて、貴協会の北海道支部の会員を調べたことがあります。項目ごとに整理されていて、見やすいHPでした。

    質問13:斜面防災対策技術協会に期待することはありますか?

    回答13:

    貴協会は、斜面の専門会社の集まり、とくに地すべり分野には特化されているというイメージを持っています。専門技術者の皆さんから、とりわけ「斜面」の防災に関わる最新技術を発信してくださることを期待します。

    問い合わせ先: 株式会社 レアックス  http://www.raax.co.jp/

    • 札幌本社: 札幌市東区北24条東17丁目1-12
      TEL 011-780-2222 ・ FAX 011-780-2221
    • 東京営業所: 東京都大田区西糀谷1-10-16
      TEL 03-5735-5951 ・ FAX 03-5735-5952
    • 西日本営業所:島根県出雲市国富町730
      TEL 0853-31-4861

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    6. 取材後記

    早くも晩秋の肌寒さを感じる10月17日の朝、札幌市内の株式会社レアックス本社を訪れますと、技術本部長の和田さんと営業部長の最上さんが迎えてくださり、和やかな取材が始まりました。
    2008年に創業20周年を迎えられた同社では、(株)レアックス《20年のあゆみ》の記念冊子として重厚な2冊が出版されていました。

    • 「創造と挑戦」<記録編>、全280頁、CD付・・・資料性を重視した20周年記念社史記録
    • 「剃刀と斧」<レアックス20周年記念技術論文集>、全264頁、66編の技術論文集

    会社の沿革を皮切りに、主な業務内容、特徴的な製品などをお聞きすると、記念冊子と製品パンフレット群を引きながら、丁寧でわかりやすいご回答をいただきました。特に、代表的な自社技術開発製品であるボーリング孔壁画像化装置BIPSは、1986年の開発着手から現在まで開発・改良を続けていること、積極的な海外展開により海外の利用顧客もあること、最新版の5代目BIP-Vは幅広い孔径と大深度に対応し様々な分野で利用できるシステムになっていること、等。謙虚に静かに解説してくださいましたが、その根底にはメイド・イン・ジャパンでナンバー・ワンの技術開発への、熱い想いと自負を感じました。自社の八剣山テストフィールドと、そこに深度100mのテスト孔を持たれていることにも、自社技術を磨き続けている会社の姿勢がうかがえました

    なお、八剣山では創業者の趣味が高じた(?)ブドウ畑とワイナリーがあって、地ワインが評判になっているとのこと。時間の制約で八剣山ワイナリーの訪問が叶わなかったことを、今も悔やんでいる私です。

    (文責:斜面防災対策技術協会 ホームページ委員 土佐)

    7. 取材写真

    ①取材風景(左より、土佐委員、最上部長、和田部長)

    取材風景(左より、土佐委員、最上部長、和田部長)

    ②社屋全景

    社屋全景

    ③会社入口に展示されている初代BIPS機

    会社入口に展示されている初代BIPS機

    主な自社開発技術製品

    ④統合孔内画像化装置 BIP-V

    統合孔内画像化装置 BIP-V

    ⑤孔壁展開サンプル画像

    孔壁展開サンプル画像

    ⑥超音波孔壁展開画像による地盤評価の例

    超音波孔壁展開画像による地盤評価の例

    ⑦国際岩の力学会ARMS8への出展状況(全22出展者中、最優秀賞を受賞)

    国際岩の力学会ARMS8への出展状況(全22出展者中、最優秀賞を受賞)

    • Attractive Exhibition Award賞状と記念品
    • Attractive Exhibition Award賞状と記念品

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