取材日時 | 平成24年12月18日(火)10:00~11:30 |
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取材場所 | 〒205-1111 東京都清瀬市下清戸4-640 |
電話 | 042-495-1015 |
FAX | 042-495-0909 |
ホームページ | http://www.obayashi.co.jp/tri/technostation/ |
出席者 | 地盤技術研究部:山本彰 部長 斜面防災対策技術協会ホームページ委員会:榎田充哉,井上宏,沓沢武 |
1948年に大阪本店内に研究部として設置され、1951年に研究部から研究室に改組されました。その後、1957年に東京支店に研究室分室が設置され、1965年に現在の東京都清瀬市に技術研究所を開設し、現在に至っています。現在、研究所は構造技術研究部、生産技術研究部、環境技術研究部、地盤技術研究部、技術ソリューション部の5研究部で構成されています。
現在の研究所の敷地は1965年当時と同じですが、各実験棟や研究棟は何回か建て直しを行っています。現在、各研究部が入っている本館テクノステーションは“絶対制震システム(スーパーアクティブ制震「ラピュタ2D」)”を採用しており、地震波と逆位相の振動を発生させて地震波を相殺するシステムとなっています。最初のS波を感知した時点で油圧の準備を開始し油圧で逆位相の揺れを発生させます。油圧の限界値を超える地震動を感知した場合は通常の免震システムに切り替わるようになっています。
本館テクノステーションの外観 (大林組パンフレットより)
回答2:
組織上は技術本部に属しています。業務は研究開発を主体に、全社の実務支援も行っています。
回答3:
地盤技術研究部は、斜面防災・軟弱地盤・地盤材料物性等を専門とする地盤チーム、トンネル・大規模地下空洞・CCS・地質分析等を専門とする岩盤チーム、基礎杭・山留め・地下水等を専門とする基礎チーム、地震動・相互作用・環境振動等を専門とする振動チームの4つチームで構成されており、建築系と土木系の職員が概ね同人数所属しています。
主に実験棟や研究室内で研究を行っています。実験棟にある各種研究施設の操作等は研究員とは別の専門のスタッフが担当します。
回答4:
1)地山補強土工法(アースネイリング工法)の研究・開発、2) 抑止杭の抑止効果に関する研究、3) 土石流の発生機構と防災に関する研究、4) 長大斜面の縮小化と耐震対策に関する研究、5) 急勾配切土法面の立体・複合地山補強土工法の開発、6) 皿ばねアンカー工法(D&Sアンカー工法)の開発、7) 不安定斜面におけるトンネル坑口の急速施工法の開発、8) ハイスペックネイリング工法の開発、9)落石検知システムの開発
この中の“抑止杭の抑止効果に関する研究”は地すべり抑止杭の千鳥配置の効果と中抜けの問題を研究したもので、研究成果は大林組技術研究所報に掲載されています。また、“落石検知システム”は土木研究所との共同研究によるもので小さな落石による振動などを計測して大規模な崩壊を予測するシステムの研究です。
回答5:
業務や研究で得られた成果は,関連する諸学会(地盤工学会,土木学会,砂防学会,日本地すべり学会など)で行っています。また,まとまった成果は大林組技術研究所報に収録して,お伝えしています。
<斜面防災関連の主な研究成果>
(1) 山本彰・鳥井原誠・平間邦興(1994):地すべり抑止杭の抑止機構に関する研究,大林組技術研究所報,No.49. pp.83-88.
(2) 山本彰・鳥井原誠・・平間邦興(1996):シオメンブレン降雨浸透防止工法に関する基礎的研究,大林組技術研究所報,No.53.pp.65-70.
(3) 山本彰・山本修一・鳥井原誠・平間邦興(1998):砂防ダムに作用する土石流の衝撃力に関する研究,砂防学会誌, Vol51, No.2, pp.22-30.
(4) 沖村孝・山本彰・村上考司・鳥井原誠(1999):斜面基盤層上の斜面の地震応答解析,土木学会論文集,No.638, Ⅲ-49, pp.143-154.
(5) 山本彰・鳥井原誠(2001):皿ばねアンカ-を用いた斜面安定対策工法に関する研究― 緊張力保持機構について ― ,大林組技術研究所報,No.63.
(6) 山田祐樹・鳥井原誠・山本彰(2004):石積壁の地震時安定性評価に関する研究,大林組技術研究所報,No.68.
(7) 鳥井原誠・山本彰(2007):土砂災害の予測と対策に関する技術,大林組技術研究所報,No.71.
(8) 山本彰・稲川雄宣・鳥井原誠(2007):「ハイスペックネイリング工法」を用いた土留め工の開発,大林組技術研究所報,No.71.
(9) 稲川雄宣・山本彰(2012):地山補強土工法における法面工の耐震性について,大林組技術研究所報,No.76.
回答6:
大学や公的機関との共同研究を行っています。
研究課題(1):土砂災害の予測と対策に関する技術
回答1:
土砂災害の現状と、当社における土砂災害の予測と対策に係る主な研究事例をまとめたものです。予測・評価技術としては、遠隔地地滑り自動計測システム、DEM解析の土石流、落石、岩盤崩落への適用、対策技術としては地山補強土工法(アースネイリング工法、ハイスペックネイリング工法)、変位吸収型アンカー(D&Sアンカー工法)、石積壁の耐震補強工法(ピンナップ工法)について紹介しています。
回答2:
論文で紹介した技術はすべて完成しており、既に実用化しています。研究によって得た知識は実務支援の業務に役立てています。
回答3:
論文で紹介した技術はすべて既に実用化しており、今後さらなる実用展開を図っていく予定です。また、盛土などの土構造物の耐震補強、斜面の防災・減災に取り組んでいきたいと考えています。
<関連の研究成果>
(1) 鳥井原誠・山本彰(2007):土砂災害の予測と対策に関する技術,大林組技術研究所報,No.71.
研究課題(2):井戸理論を用いた多層地盤の水位低下予測
回答1:
井戸理論を用いた多層地盤の水位低下予測計算手法の概要について述べるとともに、三次元FEM解析との比較による検証解析結果について述べています。検証解析の結果、提案した水位低下予測手法は、適用範囲に制約はあるものの、三次元FEM解析とほぼ同様の結果が得られており、現場における情報化施工のツールの一つとしての有効性を示しています。この研究は主に基礎工事におけるDeep Wellの効果予測に対応したものです。
回答2:
論文の計算手法に基づいて作成したプログラムは、実工事における井戸の配置設計に使用しています。
回答3:
情報化施工と含め、総合的な地下水管理システムとしての構築を目指しています。
<関連の研究成果>
(1) 山田祐樹・森尾義彦・山本彰(2011):井戸理論を用いた多層地盤の水位低下予測,大林組技術研究所報,No.75.
回答1:
最近開発した技術としては1)ハイスペックネイリング工法、2)ピンナップ工法、3)D&Sアンカ-工法があります。
ハイスペックネイリング工法は、地山補強土工法において袋材を装着した芯材を用い、袋材にグラウトを加圧注入して膨らませることで、引き抜き抵抗力の増加を図る技術です。盛土の耐震補強や土留め・山留めの控え工として多くの実績があります。
ピンナップ工法は石積みの耐震補強工法です。この工法は公益法人鉄道総合技術研究所が開発した技術ではありますが、当社も特許の共同出願人となっています。ピンナップ工法は石積みを対象とした唯一の耐震補強技術ではないかと思います。
D&Sアンカー工法は、グラウンドアンカーの頭部に皿ばねを設置して、地盤のクリープに伴い緊張力の低下、地震時における緊張力の増加、凍上に伴う緊張力の増加を防止する技術です。
回答1:
降雨時に何時、どこで、どのような規模で斜面災害が発生するのかを精度よく、予知・予測する技術が重要と考えています。民間との共同研究は主に異分野(化学分野など)との共同研究を多く実施しています。
回答2:
共同研究について、社内の事前協議、正式な社内手続きを経て、共同研究を実施することになります。
回答1:
遠心載荷模型実験装置、大型三軸試験装置、リングせん断試験装置、一面せん断試験装置があります。その他、大型振動台装置、多機能岩盤試験装置、風洞実験装置などがあります。
多機能岩盤試験装置は70cm立方体の岩盤供試体の透水試験や圧縮試験などが可能です。
遠心載荷模型実験装置(大林組パンフレットより)
多機能岩盤試験装置(上)と供試体(下)(大林組パンフレットより)
回答1:
遠心載荷模型実験装置、大型三軸試験装置、リングせん断試験装置、一面せん断試験装置があります。その他、大型振動台装置、多機能岩盤試験装置、風洞実験装置などがあります。
多機能岩盤試験装置は70cm立方体の岩盤供試体の透水試験や圧縮試験などが可能です。
回答1:
拝見いたしました。協会の活動状況や技術情報などがわかり易い見出しで掲載されていると思います。
回答2:
斜面災害に関する世界中の情報を提供頂ければと思います。
大林組技術研究所の最寄りの駅は西武池袋線の清瀬駅です。清瀬駅の北口より路線バスにのり、清瀬駅から伸びる清瀬けやき通りを直進すると約10分で“大林組技術研究所”という名のバス停に着きます。このバス停で降りると目の前に研究所の施設が広がっていました。周囲の塀が低く開放的なイメージの研究所です。本館をはじめ、その周囲の実験棟の建物もみな新しく、最近、新設された研究所のような雰囲気でした。
22年前まで清瀬駅の隣駅である東久留米駅周辺で8年間暮らした経験を持つ筆者ですが、清瀬駅周辺の変貌ぶりがすさまじく、当時の面影がどこにもありませんでした。その清瀬駅から車で10分という近い場所にこのような立派な研究所があることを当時は知りませんでした。
取材を通じて同研究所で斜面防災関連の研究も数多く実施されていることを知りました。ゼネコンの研究所の中で、斜面災害関連の研究をこれほど幅広く実施されていることに驚きを感じました。遠心載荷模型実験装置や多機能岩盤試験装置など、斜面防災関連の研究にも利用可能な多くの実験施設を所有されており、当協会の会員会社も実験依頼や共同研究などで積極的に協力関係を築いていくべきだと感じました。
多忙な中、当協会の取材を快諾頂き、また、多機能岩盤試験装置など珍しい実験装置も視察させていただきました。対応いただいた山本部長に大変感謝しております。下手な取材でしたが,ご協力頂き,どうもありがとうございました。
(文責:斜面防災対策技術協会 ホームページ委員会 委員長 榎田)
写真1:大林組技術研究所正門
写真2:本館テクノステーションの正面口
写真3:本館テクノステーションのロビーに展示されている東京スカイツリーの最大鉄骨の模型
写真4:取材風景(右より、山本部長、榎田委員長、沓沢委員)