取材日時 | 平成26年1月24日(金)13:30~16:00 |
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取材場所 | 〒573-8573 大阪府枚方市中宮大池1-1-1 株式会社クボタ枚方製造所素形材部門 |
電話 | 072-840-1201 |
FAX | 072-890-2700 |
ホームページ | http://www.kubota.co.jp |
出席者 | クボタ素形材事業部:堀部康彦,小山信一,中野明, 鋼管営業部 :平山淳 (敬称略) 斜面防災対策技術協会ホームページ委員会:井上宏,原弘 |
枚方製造所は、大きく4つの部門でできています。一つが素形材部門で、鋳鋼製品を扱っています。地すべり鋼管杭のGパイルもここでつくっています。
また、ここには建設機械部門があり、ミニバックホーなどもつくっています。その他には、ポンプ部門とバルブ部門があり、それぞれの製品を製造しています。
回答2:
もともとは、大正区の恩加島工場と同じ敷地にありましたが、東海道新幹線「新大阪駅」の整備を機に、昭和37年に鋳鋼管の生産拠点を枚方に移転させて現在に至っています。
このとき、新大阪駅では遠心力鋳造管の特性を活かしたGコラム(溶接構造用遠心力鋳鋼管)が構造物の支柱として採用された経緯があります。
回答3:
素形材部門では、従業員が270名おり、主に遠心力鋳造によるパイプの鋳造や、置注鋳造によるはがね鋳物などをつくっています。また、材料の開発・改良などの研究や選定などもあわせて行っています。昨年は、全社的な材料研究開発を目的に「マテリアルセンター」を新設しました。
完全受注生産で500種類以上の材料を扱いながら、客先のニーズ、要求性能に応えられるよう取り組んでいます。枚方製造所には、鋳造ラインを確保するために、合計10棟の工場と研究棟をかまえています。工場の生産能力は月産4000トンになります。
回答4:
枚方製造所には、熱疲労試験機、クリープ試験機、回転曲げ疲労試験機など強度試験機や、熱分析装置、走査型電子顕微鏡、X線マイクロアナライザーや摩耗試験機などの特性評価機器などがあります。これらを使って材料の開発や材料の評価をしています。
回答1-1:(Ⅰ)MERT(クラッキングコイル)
主力製品として、耐熱性が要求されるクラッキングコイル(石油化学系工場の熱分解炉に設置されるチューブ)があります。
当社では、MERTと称するチューブ内面に撹拌素子(螺旋状の突起)を付けて熱分解の効率を向上させた製品をつくっており、石油化学工場など国内外の市場に供給しています。
回答1-2:(Ⅱ)Gコラム
さきほど、Gコラムは新大阪駅にも使われていると言いましたが、小さい径で厚肉な管が製造できるため、超高層ビルや鉄道橋、道路橋など多くの構造物の柱としてこれまで多く採用されています。また、複雑な仕口部などの構造に対応するため、GコラムFX(FX=Flexibility)という新形状の管もつくっています。
回答1-3:(Ⅲ)製鉄プロセス製品
枚方製造所では、様々な製鉄プロセス製品を製造しています。ハースロール(鋼板の熱処理炉で使用される搬送用ロール)やスキッドボタン(加熱炉内で加熱鋼材を支持するもの)など、高温・高強度で耐食性や耐摩耗性が求められるような高機能製品の製造も行っています。
回答1:
遠心力鋳造法は、円筒型の型を高速回転させた状態で溶湯を流し込み、回転の遠心力を利用して溶湯を加圧し、パイプを製造する方法です。
製造手順は、はじめに円柱形の金枠を加熱します。その後、溶湯の熱から金枠を保護したり、金枠から取り出しやすくするための塗型と呼ばれる材料を金枠内に塗布していきます。塗型を塗布し終わったら、アーク式溶解炉で溶解した溶湯(温度約1600℃以上)を金枠に流し込みます。このとき、金枠を高速回転させ、その遠心力で金枠内面に沿って溶湯を加圧させます。回転による遠心力は80~100Gに達します。その後、パイプを型抜きして加工等の処理をします。
回答2:
遠心力鋳造法の特徴は、鋳巣(空洞)がなく緻密で高い品質が得られます。また、外径は金枠の大きさ通りに、内径は注入する鋼量で自由に調整できますので肉厚の厚いものでも製造可能です。製造された管は偏肉のない真円となります。
回答3:
鋼管杭の継ぎ手として「リングジョイント」があります。Gパイルのソケット型の機械式継ぎ手で、セットボルトをねじ込むだけで、杭の接合が完了します。天気や溶接技術に影響されず、時間も大幅に短縮できるため好評です。
「Gパイル-S」と呼んでいる、強度変化杭もありあます。曲げモーメントの小さい範囲を570材から490材にしたり、肉厚を変えたりして材料費の低減を図ります。
回答4:
沢筋の落石対策として待受けの杭を採用した事例があります。
回答1:
一般の方でも工場見学はできます。普段は鋳物関係の協会や大学生の方が見学に来られることがあります。最近はあまりありませんが、かつては建設コンサルタントの方も見に来られることがありました。
回答2:
溶湯など高温物を扱っており怪我をするリスクがありますので、必ず引率者をつけて入ってもらうようにしています。
回答1:
地すべりに関する知識の習得やシンポジウム等の情報を得るために、度々拝見しています。
回答2:
私たちが気付いていないアイディアや、新商品にできるようなものがあればお知らせください。
枚方駅からタクシーで住宅街を抜けると、見慣れた”Kubota”のロゴと広大な工場敷地が目に入ってきました。
今回の取材は、これまでの研究室取材とは違い、はじめてメーカーの生産現場に行くということで、はじめはやや戸惑いつつも、それ以上の興味が先行し、高揚した気持ちで当日に臨みました。工場内では、まるでUSJのアトラクション”バックドラフト”でみた光景さながら、火柱と熱気が印象的で、1月の外気の寒さとは対照的に熱い作業が行われていました。
また、普段何気なく設計している杭が、目の前で型から抜かれる瞬間は、子供の出産に立ち会ったような気分にもなり、なんとなく感動も覚えました。
日本のものづくりの現場を間近で体験し、品質に対するこだわりも取材の随所で感じ取れ、貴重なご意見もきくことができました。取材というよりは、工場見学のような一日でしたが、丁寧に応対して下さった素形事業部の皆様に大変感謝いたします。
(文責:H.I)
①素形材部門事務所正面
②素形材部門工場
③保持炉
④遠心力鋳造機
⑤Gパイルの型抜き
⑥型抜き後のGパイル
⑦リングジョイントの組立
⑧置注鋳造作業
⑨MERT(撹拌素子つきクラッキングチューブ)
⑩ハースロール中央部
⑪ハースロール端部
⑫遠心力鋳造に関するパネル
⑬取材風景