地すべりの概要
1.地すべりの概要
山梨県の南部、西八代郡市川三郷町の葛篭沢上の山に位置する127.30haの地すべり防止区域(S36指定)である。平成13年度の地表踏査によりブロック区分が行われ、そのうちA、Bブロックで活発な地すべり活動が確認された。そのため平成14年度より本格的な調査、防止工事の施工が進められている。平成16年度にはCブロックでも台風来襲時に地すべり活動が確認され、対策が進められている。
2.地形概要
市川三郷町の西縁を流れる富士川の支流葛篭沢川が葛篭沢集落の中央を北から南に向かって流れている。地すべり斜面は葛篭沢川の左岸に位置し、大局的には西向きの斜面である。周囲の山々は傾斜が30°を越える急峻な山地であるのに対し、集落に近い山麓部は傾斜15°程度の比較的緩やかな斜面となっている。
Aブロック
延長約130m、幅約40m、すべり面深度6.5mの地すべりで、頭部滑落崖から左右の側壁へと続く滑落崖が確認される。末端部の押し出し地形も明瞭である。
Bブロック
延長約200m、幅約100m、すべり面深度18.0mの地すべりである。明瞭な頭部滑落崖を有し、左右の側壁へと滑落崖が連続する。側壁は途中不明瞭な部分もあるが、地すべりブロック中腹では横ずれしたせん断亀裂が確認される。末端部では1.0〜1.5mの隆起が生じている。
Cブロック
延長約100m、幅40m、すべり面深度10.0mの地すべりである。
3.地質概要
新第三紀西八代層群に属する泥岩が主に分布しており、凝灰岩を挟在している。調査地内に分布する地質の状況を別図に示す。走向はEW〜NW-SE方向で、北に20〜35°傾斜しており、地質構造と地すべり斜面の関係は受け盤である。
4.地すべり機構
[素因]脆弱な地質
風化の進行により脆弱化した地層が存在し、下位の基盤層と明瞭な層構造を形成しており、すべり面を生じやすい構造となっている。また、旧来からの度重なる活動により、移動土塊の脆弱化が進行している。
[誘因]間隙水圧の上昇による抵抗力の低下
被圧地下水が存在し、地下水の流動も確認されている。さらに降雨、地すべり活動に伴う水位上昇が確認されている。移動層では浅層地下水により飽和状態に達しやすく、活動時には土塊の軟質化がおこり、湧水も多く発生する。
5.対策工
方針1:地下水排除工を先行施工(地すべり誘因である地下水の排除を優先する)。
方針2>:地下水排除工の効果で目標安全率に達しない場合、その不足分を抑止工で補う。
主な対策工(対策工平面図・対策工断面図・対策工の年度別一覧)
Aブロック:ボーリング暗渠工、アンカー工、暗渠併設水路工
Bブロック:集水井工、暗渠併設水路工(集水井工で目標安全率達成)
Cブロック:ボーリング暗渠工、アンカー工、カゴ枠土留工
地下水排除工(集水井工,横ボーリング工,水路工)
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