国土交通省所管    粭島(すくもじま)地すべり 山口県 

位置図


対策工平面図

「斜面防災技術」掲載号:Vol.34,No.1(2007年7月,通巻100号)

地すべりの概要
1.地すべりの概要
 瀬戸内海沿岸地域の周南市粭島栗谷地区に位置する。地すべり災害の発生斜面は運河に面し,山脚部には一般県道粭島櫛ヶ浜線が通過する。
平成8年6月26日,累積降雨量が353mmに達した時点で地すべりが発生した。A,B2つのブロックが確認され,規模は,Aブロックで最大斜面長100m,幅180m、その背後のBブロックでは最大斜面長70m,幅80mで,移動層厚はいずれも10m程度の風化岩すべりである。Aブロックの移動土塊の一部は土石流化して約6,500m3の崩土として流下し,県道は延長50m高さ3mに及ぶ崩土で覆われ通行止めを余儀なくされた。仮復旧として運河を岩ズリで埋め立て迂回路(L=160m)を確保する一方で,本復旧として,横ボーリングを主体とする地下水排除,アンカー工による抑止対策を実施中である。

2.地形・地質概要
 当地区は,東側が笠戸湾,西側が徳山湾に挟まれた陸繋島で,地すべり発生斜面は,島の北東端に位置し,太崋山(標高362m)から北東に延びる尾根筋の東側斜面である。山腹は稜線に至る高位標高部が急斜面となり滑落崖様の地形を呈し,中腹から山麓部にかけてやや凹状の緩斜面をなすことから,大規模な崩落または地すべりの痕跡地形とみられる。
地質は,三郡変成岩類に属する泥質片岩を主体とし,中生代白亜紀火山岩である周南層群に属する流紋岩類がこれらを不整合に覆う。片岩類の構造は,1015°傾斜の受け盤構造であり,流紋岩類は,標高80m付近より高い稜線部に,キャップロック状に分布する


3.素因・誘因
(1) 素素因:透水性の高い流紋岩類が後背地に分布(キャップロック構造)。表層部に崖錐及び風化岩が分布し,難透水性の堅岩がこれらの直下に分布。片岩構造沿いの低角度断層破砕帯による地下水流動の遮断。潜在地すべりの形成。
(2) 誘因:大雨による背後からの地下水供給による間隙水圧の上昇。

4.対策工
 地下水排除工(横ボーリング工他),アンカー工(逆巻き施工),鉄筋挿入補強工

地すべりの特徴
 地すべり断面図
 山口県の地質図