林野庁所管        小清(こせ)地すべり 山形県 

位置図


地すべり模式図

掲載号「地すべり技術」掲載号:Vol.20,No.3(1994年,通巻60号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 小清地すべりは山形市の北西約50km、月山の南側斜面に位置し、一級河川小清川に面している。
  この地すべりは昭和59年4月11日に発生し、その規模は幅約350m、延長約400mにおよぶ。滑落崖は20〜40mの比高を有し、地すべり斜面の中腹を横断する林道は15〜20mも水平に移動した。地すべりの末端は小清川を閉塞し、上流約500mにわたり湛水し、道路、田畑を埋没させた。
 地すべり対策は昭和62年までに完了しており、現在は概成している。地すべり状況は自動観測システムによりリアルタイムで監視されている。

2.地形・地質概要
 小清地区周辺には、南北方向のリニアメントが発達している。小清川沿いには古い地すべり地形が数多く観察され、そこには小規模な平坦地や緩傾斜地が存在する。このような地形は、地すべりによる小清川のせき止めが繰り返されて形成されたものと思われる。
 当地区には、新第三紀中新世水沢層に属する葛沢シルト岩部層が分布する。地すべり地内に見られる葛沢シルト岩部層は破砕、風化が激しく、旧期地すべりによる崩積土と考えられる。
 水沢層はほぼNS方向の走向で激しい褶曲構造を示している。小清地区の中央部には地すべりを横断する方向に向斜軸が走っている。そのため地質構造と地すべりの関係は、斜面上部で流れ盤、斜面下部で受け盤構造となっている(模式地すべり断面図)。

3.地すべり機構
 大規模な地すべり発生の誘因として、豪雪と4月初旬の気温上昇が重なり、融雪水の地下浸透から間隙水圧の上昇が生じたことが考えられる。また、地すべりはI〜IIIの三つのブロックに細分され、Iブロックの活動が、IIブロック、IIIブロックを不安定化させるきっかけとなっている。

[各ブロックの概要]
 I ブロック :  主体をなすブロックで、4月の気温上昇による融雪水の増加が地すべり発生の誘因。  
 IIブロック :  Iブロックの北側に隣接する2次的浅層すべり。Iブロックの発生時に側壁を流下する融雪水が地下に浸透し、土塊が泥流化し流出した。 
IIIブロック : Iブロックの発生に促され従属的に発生したブロック。 

[地質と地下水]
 すべり面は、強風化岩から中風化岩下面にあり、深度は概ねGL-30m付近にある。すべり面に働く間隙水圧は、15〜20mの水頭を有している。

4.対策工
 対策工は、主誘因である地下水排除工を主軸とし、抑止工を組み合わせている。対策工の施工後、地すべりは安定化している。

[地すべり対策工と安全率]
 (1)初期安全率 Fs0=0.98
 (2)排 土 工(163,735.3m3) Fs =1.02
 (3)杭 打 工(4,978.0m) Fs =1.10
 (4)集水井工(15基) Fs =1.20


地すべりの特徴
 小清地すべり全景(地すべり発生直後)
 小清地すべり全景(対策工事完了後)
 模式地すべり断面図