構造改善局所管           品野(しなの)地すべり 徳島県 


品野地すべり 全景



品野地すべり 平面図

                      「地すべり技術」掲載号:vol.26 No.2(1999年7月、通巻77号)
1.地すべり地の概要
 品野地区地すべり防止区域は、JR四国阿波山川駅から南南東へ5.5kmにあり、吉野川水系川田川中流部、徳島県麻植郡美郷村品野に位置する
 当地区の地すべり履歴は古く、Aブロックは昭和24年に小崩壊が始まり、昭和29年には亀裂の発生を伴う明瞭な地すべり滑動が発生した。昭和39年には地すべり防止区域に指定され、集水井工・杭打工等の対策工が施工されてきたが、その後も徐々に拡大し昭和52〜54年には末端崩壊が発生し鋼管杭打工・集水井工が被害を受け、地すべり規模は最終的に斜面長280m、最大幅170mとなった。昭和57年より災害関連緊急事業として大規模な排土工、アンカー工の対策工が実施され、末端崩壊斜面の法枠、土留工による復旧が行われている。
 Bブロックにおいても昭和56年豪雨により1.0haの畑が崩落し、宅地を含む各所に亀裂が発生している。その後平成5年8月の台風7号の豪雨により、上部町道まで亀裂が拡大し、本格的な調査が開始され、災害関連緊急事業により杭打工、アンカー工が施工され、崩壊部に土留工が施工された。

2.地形、地質
 当地区は標高1、000m級の奥野々山から連なる東西に延びる尾根の東端に当たり、川田川支渓により浸食され遷急線に位置する東斜面(標高350m〜450m)である。 地すべり地は両サイドを谷地形で囲まれ、上部は比較的緩斜面で、全体に集水斜面の中の凸部が地すべりブロックとして滑動し、地内の傾斜区分は斜面下方より35°〜20°〜15°で、末端解放型の地すべり地形をなす。
 地質は三波川結晶片岩で、変成度の低い無点紋結晶片岩である泥質片岩、塩基性片岩で構成され、地すべり地内では塩基性片岩がやや優勢である。露頭で観察される片理面の走向は、三波川帯の地質構造に則して、概ね東西方向を示し、傾斜は10°〜15°の南落ちである。A、Bブロック末端部の崩壊は、地層の傾斜方向に規制され南東向き斜面で発生している。この崩壊で末端部が解放されたことにより、地すべりは地表の最大傾斜方向へと滑動している。
 地すべり地内の地質は泥質片岩、塩基性片岩を基底岩を基底岩とし、上位より礫混り土→強風化層→風雨化層→未風化層に大別され、すべり面は強風化層、あるいは風化層底面で確認されている。

3.地すべり機構
 Aブロックのすべり面は風化層底面で確認され、すべり層厚は20m〜25m。 Bブロックでは退行性の地すべり形態を示す。強風化および風化層底面の岩盤すべりが想定され、すべり深度は10m〜15m。
 地すべりの地形地質要因として、地形的に遷急線が明瞭な椅子形地形の土圧が解放される地形で、末風化層が斜面に対して流れ盤で急傾斜部に至る末端解放型で分布していること、その後背緩斜面からの降雨が浸透領域となっていることが挙げられる。水文地質要因としては、透水性のよい風化層が上部緩斜面に厚く分布し、降雨が容易に地下水化しやすいこと、その浸透水が透水性の劣る末風化部で制限されて、間隙水圧を発生させることが挙げられる。
 地すべりの特徴として、まず崩壊が発生し、その後方にクラックが発生した後は徐々に斜面後方へ退行する退行性の地すべりといえる。またクラック発生後、豪雨の度に継続的に末端崩壊を伴う地すべり滑動が確認されることから、末端解放型の地すべりの様相が推測される。

4.素因・誘因
 素因
  ・ 明瞭な椅子形地形、流れ盤で急傾斜部に至る末端解放型
  ・ 上部緩斜面に厚く分布する透水性のよい風化層
  ・ 浸透水が透水性の劣る末風化部で制限され間隙水圧を発生
 誘因
  ・ 降雨による地下水上昇、過剰間隙水圧発生

5.対策工について
 頭部排土工、アンカー工、排水ボーリングエ、土留工
地すべりの特徴
 (1) 対策工断面図 Aブロック
 (2) 対策工断面図 Bブロック