建設省所管        江畠(えばたけ)地すべり    徳島県


                                 掲載号:vol.21 No.1(1994年7月、通巻61号) <

1.地すべりの概要
 徳島市の南西約30kmに位置し、名西郡神山町上分にある。四国第二の高峰剣山(標高1、955m)の東方約18km、流路延長45kmをもって北東に流れ吉野川に注ぐ鮎喰川上流左岸に面し、一般国道439号に沿う面積77.8ha、人家67戸がある大規模な地すべり地である。
 江畠地すべりの全景江畠地すべりの歴史は古く江戸時代に地すべりのあったことが明記されている。近年になっては昭和13年9月の台風により地すべり地末端を通過する国道沿いの民家10戸が洪水により流出、国道が欠壊した。その際50m程上方の人家付近に地すべりが発生し、物置が滑落、母屋と物置に4mの段差ができ、滑落土砂が県道および河川を覆った。その後昭和23年には民家1戸が埋没し、昭和29年9月台風で再度50m上方付近より移動した。昭和32年に地すべり先端部をコンクリート方格枠で押え、地すべりの安定を図ったが、その方格枠も地すべりにより押し出され破壊寸前となっていた。昭和49年7月の8号台風(連続雨量536mm)により国道もろとも滑落し、跡形もなくなり、道路災害工事で復旧した。しかし、昭和50年8月台風でまた一部方格枠が沈下し、中ぬけを起している。これより西の国道も台風により沈下後流失し、現在は道路災害工事で復旧している。200m上部の地すべり頭部と思われる墓地周辺には無数の亀裂があり、年々亀裂幅は大きくなっている。また地すべり地右プロッタの町道のヘアピン周辺では台風後に無数の亀裂が生じ降雨時の地すべり移動のはげしさを現わしている。

2.地形・地質概要
 徳島県の中央に座する高城山(標高1、440m)の北方で、5kmの川井峠を源とし、北東に流下する鮎喰川上流左岸側斜面である。この斜面は三方を山地で区切られ、南東方向に開いた集水斜面形を成す。
 地質構造は全体として東西ないしN70゜Eの走向を有し、局部的なものを除いて40゜〜70゜南斜している。全体的には流れ盤構造をしており、堅固な焼山寺層が支え盤となっている。著しい断層破砕帯はみられないが、走向方向にほぼ平行する低次の構造線とみられるものがある。樫平層に観察される強剥離帯がそれにあたり、厚さは10〜15m程度である。また、東西方向に近い断層帯が発達し、厚さ1〜2mの断層粘土とこれに平行する数条の割れ目がある。周囲の泥質片岩の強度は著しく弱くなっており、断層の傾斜は南へ30°である。
 本地すべり地は、泥質片岩を基盤とした地域に発生した崩積土層の滑動によるものといえ、強剥離帯が重要な役割を果していると考えられる。

3.素因・誘因
(1)     素因
基岩の泥質片岩との問に厚さ5〜10mの基岩風化帯が存在
地質構造---流れ盤構造
(2)    誘因
・台風など集中豪雨


4.対策工の概要
 地下水排除工(集水井、横ボーリング・排水トンネル)、押さえ盛土

地すべりの特徴
  (1) 江畠地区地質図
  (2) 地すべり断面図
  (3) 地質構成
  (4) 対策工一覧表