林野庁所管 由比地すべり | 静岡県 |
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1.地すべりの概要 由比地区は駿河湾の一番奥まった西岸部にあたり、標高300〜500mの稜線に囲まれた南東方向に開けた斜面である。気候は温暖で、みかん、びわなどが栽培され特産の桜えび、しらすなどの沿岸漁業も盛んである。由比地区は日本の地すべり防止地区の中でも超1級の保全対象をもっている。すなわち、直下の海岸沿いには、わが国の大動脈である国道1号線、東名高速道路、JR東海道線が走りまた通信施設が敷設され、さらに人家が密集している。 由比地すべりの災害履歴を[(1)表−地すべり関係災害記録]に示す。このうちとくに顕著な地すべりは、安政5年、昭和23年、昭和36年(以上寺尾)、昭和49年(濁り沢) である。昭和49年7月7〜8日にかけて、台風8号の影響により546mm(風篠地区)という異常豪雨が由比地区を襲い、由比の山地は広範囲にわたり地すべりや山腹崩壊、土石流が発生した。その被害は、家屋全壊7棟、半壊32棟、国道1号線23日間不通、国鉄東海道線7日間不通となるなど甚大であった。由比地区の地すべり災害は、安政5年から昭和49年に至る117年間に26回に及び、およそ5年に1回の割合で災害を受けている。 地すべり防止事業は、静岡県と東京営林局によって昭和23年から開始されており、昭和49年7月の豪雨による地すべり災害を契機として、昭和50年度から林野庁第3次直轄地すべり防止事業が実施されている。昭和53年度には大規模地震対策特別措置法が制定され、由比地区が地震防災対策強化地域に指定されたことにより、国土庁の由比地区震災対策技術委員会の答申に基づいて昭和57年度から震災対策を盛りこんだ事業を行ってる。 2.地形・地質概要 由比地区は中部日本を南北に横断するフォッサマグナの南西部に位置している。伊豆半島〜富士山地塊を含む南部フォッサマグナ地域は、南西日本弧、東北日本弧、および伊豆〜小笠原弧の三つの交差会合部という地質構造上の特異な位置を占めている。さらに、この地域は日本における新第三紀および第四紀の地殻変動がもっとも激しい地域の一つである 地すべり地は駿河湾に面し、泥質岩の卓越した部分に集中して分布しており、南側から倉沢、寺尾、濁り沢、大和田、風篠などの地区が代表的な地すべり地である。基岩の泥質岩にはいくつかの断層が存在し、その影響を受け岩盤中に多数のせん断面が発達して、泥質岩全体が破砕帯の様相を呈している。 3.素因・誘因 素 因 ○ 基岩の泥質岩にはいくつかの断層が存在し、その影響を受け岩盤中に多数のせん断面が発達し、泥質岩全体が破砕帯の様相を呈する。 誘 因 ○ 集中降雨 4.対策工の概要 抑制工:排土工、立体排水工(トンネル暗渠) 抑止工:アンカー工、鋼管杭工、シャフト工 地震対策:オープンダム、鋼管土留工、法切工 |
地すべりの概要 (2) 地すべり関係災害記録 (3) 由比地区地すべり防止事業平面図 (4) 全体計画の推移 (5) 静岡県庵原地質図・断面図 (6) 地すべり防止工 (7) 対策工の配置図(模式図) |