林野庁所管 薄場地すべり(うすんば) | 静岡県 |
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1.地すべりの概要 本地すべりは、周智郡森町市街地北方約3kmの薄場地内にあって指定面積72.3haを有する。本地すべり地は瀬入川両岸斜面に分布する独立した6個の中規模地すべりブロック(3〜7ha)で構成される。このうち、瀬入川左岸斜面地区南側の地すべりブロックは、当初地すべり滑動が認められず、指定地からはずれていた。その後地すべり滑動が顕著化し、昭和55年追加指定(6.1ha)を受けた。このブロックの対策としては昭和57年以降、水路整備が行なわれ、続いて昭和62年より礫暗渠工、集水井工、水抜きボーリングによる地下水排除工が実施された。 しかし、昭和62年以降、地すべり頭部のブロックで、顕著な地すべり滑動が発生し、最大日変位量15mm、年間累計移動量は2mを越えた。この地すべりにより既設の水路工、礫暗渠工は破損して機能を失った。この著しい滑動は、地すべり冠頭部において当初予期しなかった側方への拡大が発生し、その移動力が増えたためであった。その後、平成5年度から、排土工、抑止杭による対策を計画・施工した。 2.地形・地質の概要 本地すべりは、静岡県中西部を北から南へ流下する太田川の右岸支川瀬入川の中流部斜面に位置する。周辺の山地はピーク標高200m内外で、谷密度は低く、頂部に平坦面を残す丘陵地となっている。 北から南へ流下する太田川右岸支川の中上流部の限られた区間に地すべりが分布する特徴は、東方の葛布川、西側の伏間川流域でも同様で、地すべり防止区域「葛布地区」「橘地区」などとともに尾根を越えて東西に地すべり地が帯状に分布する。これは三倉層群泥岩分布域とよく一致する(調査地周辺の地形概念図)。 三倉層群は、赤石山地四万十帯の最南部を構成し、南側は新第三紀中新統の倉真層群に不整合に覆われる。また西側および東側は各々光明断層、笹山構造線に区切られる。北西側の犬居層群(上部白亜紀〜古第三紀)との境も衝上断層で接する。岩相は砂岩、泥岩およびこれらの互層を主体とする。 本地すべり地区の基盤岩は泥岩を主体とするが、 乱堆積物とみられる角礫またはレンズ状の砂岩やチャート片を含む。地層の走向傾斜はN40°E、45°NWで、西向きの当地すべり斜面に対し、斜交した流れ盤となっている。また本地区の南側には走向断層が存在し、基盤岩は全般に脆弱で、地下深部まで風化が進み軟質化している。 本地すべりは、左岸斜面の地区南側にあって、斜面長400m、幅100mで、地すべり層厚は10m内外と薄い。古くから滑動していた粘稠型地すべりで、斜面の傾斜は10゜〜15゜と緩く、地すべりは小ブロックに細分化され、相互に関連しあって滑動していると考えられる。地すべりは、大まかに1ブロック、IIブロックに分けられる。IIブロックは幅の広い1ブロックの上方にあり、幅40m、斜面長100mの規模を有している。 (薄場地すべり平面図)。 3.素因・誘因 素 因 ○乱堆積層や断層の分布によって地塊化しており、複雑な地質構造 ○古くから滑動していた粘稠型地すべり 誘 因 ○地すべり斜面内に地下水を涵養している地表水および浅層地下水 4.対策工事の概要 集水井 水抜きボーリング 浅層地下水排除工(礫暗渠および水路工) 頭部排土工 抑止杭工(鋼管杭) |
地すべりの特徴 (1) 調査地周辺の地形概念図 (2) 薄場地すべり平面図 (3) 薄場地すべり模式断面図 |