構造改善局 所管       蛇ノ久保(じゃのくぼ)地すべり 島根県

位置図



平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.23,No.2 (1996年11月,通巻68号)
地すべりの概要
1. 地すべりの地概要
 蛇ノ久保地すべりは、島根県の西部の美濃郡美都町西部、益田市街地から益田川沿いに約10kmさかのぼった所に位置していて、地すべり斜面の下方に蛇ノ久保川と町道がほぼ平行に走っており、民家なども含め多大な被害が及ぶ可能性があるために昭和61年12月23日地すべり防止区域として96.27haが指定を受けた。
 当地の地すべり被害は昭和60年梅雨期の日雨量263.0mm(1時間あたり39.0mm)の集中豪雨により、地区南部のAブロックの山裾部を頭部として幅70m、長さ150mにわたって亀裂・押出し・隆起現象が発生、主に水田が被害を受け、翌61年に農地災害復旧事業による対策工事として抑制工、抑止工が施工された。Aブロックでは昭和63年度より地すべり関連(区画整理)事業が着工され、地すべり防止に大きな効果をあげている。また、Bブロックについては平成6年9月の秋雨前線による集中豪雨(1時間あたり86mm)により、山裾部を頭部として幅110m、長さ210mにわたってクラック、側部亀裂・圧縮亀裂・隆起現象などが広範囲にわたって発生し、主に畑地・水田および町道に大きな被害を受けた。それを受けて同6年と翌7年に災害関連緊急地すべり対策事業にて抑制工、抑止工が施工された。
 主な地すべり移動層は、基岩が片理・断層・節理によりブロック化して粘土を挟在、或いは風化し礫混粘土化したものである。 地区内の地すべりブロックは、地区南側で大きくて北側で小さく、主に山裾付近から谷底付近にかけて分布している。

2.地形・地質概要
 地区中央を南北の深い発達した谷が貫き、その谷底を蛇ノ久保川が北方へ流下している。この谷は地区南側で特に開析が進んでいて谷幅も広く、馬蹄形を呈するところも見られる。斜面勾配は山地で25°〜30°とやや急で、山裾から谷底にかけては15°〜25°程度とやや緩くなっている。地区北側は山地が谷に迫り、急崖も見られたりするなど開析はあまり進行していない。
 当地域の地質は、古生代石炭系〜二畳系の堆積物起源の三郡変成岩類で、泥岩片岩・砂質片岩などの片岩類と、それに貫入するひん岩・石英脈より成り、これらは北傾斜の単斜構造となっている。片岩類は湿乾作用などにより粘土鉱物化しやすく、片理に沿って風化が進行し、片理・亀裂によってブロック化されて生成された礫を多量に含む粘性土になったり、または亀裂間に粘土を挟在する破砕状の岩となったりして地すべり土塊を形成する。
 地区南部でリニアメントが交わるように分布し、そのため地区南部で風化侵食が特に進行していると考えられる。

3.素因・誘因
・(1) 素因: @不安定な土塊が斜面上に存在 A泥質片岩の流れ盤構造 B集水面積が狭い割に地下水が豊富 C地区内を通過する断層を経路として、周囲の広範囲から裂か水が供給され、岩盤中に常時貯留
・(2)誘因: 豪雨および融雪水による地下水の多量供給による、 @土質強度の低下 A間隙水圧の上昇 B単位体積重量の増加 
4.対策工
 
横ボーリング工,集水井工,杭工,
地すべりの特徴
 蛇ノ久保周辺地質図
 蛇ノ久保地すべり機構図
 蛇ノ久保地すべりAブロック断面図
 蛇ノ久保地すべりBブロック断面図
 島根県地質図