林野庁 所管           細越(ほそごえ)地すべり 新潟県

     
     地すべり平面図                         位置図       
    

「地すべり技術」掲載号:Vol.19,No.2(1992年11月,通巻56号)
地すべりの概要

1. 地すべりの概要
 当地区は新潟平野の東縁部を規制する新発田−小出構造線の東方の、比較的地すべりの少ない地域に位置するが、地区付近には凝灰岩が分布し、それが風化・変質してベントナイトとなり、地すべりを起こした。最初の地すべりは昭和58年ごろであり、以来、緩慢に滑動を続けてきた。62年に指定地区となって対策が施され、徐々に安定化しつつある。
 A〜Cの3ブロックに区分され、Aブロック上部が塊状の運動形態、Aブロック下部およびB,Cブロックは流動的な滑動形態を示している。Aブロック頭部の滑落崖は落差約7mにも達する。
 移動杭観測結果から、移動の向きは、Aブロック上部斜面は赤松沢に集まる向きで、Aブロック下部斜面およびほかのブロックはほぼ斜面下方であり、観測開始した昭和63年は年間を通じで動きが見られたが、平成元年ごろから降雪前期〜融雪期にかけてしか動きが見られなくなった。更に平成3年4月以降はほぼ小康状態を保っている。 ボーリング調査や歪計観測結果から、極風化真珠岩質凝灰岩と岩片まじり粘土との境界部付近に地すべり面が形成されている、と考えられる。
 また、本地すべりは受け盤すべりと推定される。
 幅 500m、長さ800m

2.地形・地質概要
 当地区は新潟県三川村、阿賀野川の支流である新谷川の右岸側斜面の、標高609mの笠菅山の山麓に位置する。笠菅山腹の赤谷断層を境に地形が二分されていて、その上部斜面では急傾斜面が形成され、崩壊地形も観察されるが、対して下部斜面では緩傾斜となっていて当地区に隣接するいくつかの地すべり地形が見られる。地すべり地内では分離小丘や不規則な凹凸が形成され、地すべり地外では新第三紀の貫入岩が突起していて、全体的に不規則な地形となっている。
 地質は、第三系中新統の津川層、七谷層、そして新第三系貫入岩が基盤を成していて、津川層は流紋岩、七谷層は主に、部分的に安山岩質または真珠岩質になった流紋岩溶岩・真珠岩質凝灰岩・泥岩より構成される。

3.素因・誘因
(1)素因:
1)赤谷断層に北西部を規制された半盆状構造(三川陥没盆地)内に位置しているため、基盤地質が初生的に極度の応力集中を受けて劣化
2)多量の地下水による凝灰岩の極度な軟質化
3)難透水性かつ容易に軟質化する真珠岩質凝灰岩の上位に透水性の高い粘土が分布していてすべり面が形成されやすい
4)透水性の高い崖錐性堆積物の分布
5)地すべり上部斜面の集水面積が広い
(2)誘因:
1)降水の浸透による間隙水圧の増大に伴う、有効応力の低下および基盤地質の軟質化

4.対策工
地下水排除工(集水井工7基、水抜きボーリング工6群) 
地すべりの特徴
 地すべり断面図
 新潟県の地質図
 新潟県の降水量分布図