1.地すべりの概要
室生地すべり防止区域は、奈良県東部の宇陀市の北部を、南東から北西に流下する一級河川室生川に面した盆地状緩斜面部に位置する。
室生地すべりの防止区域面積は、145ha(平成2年3月公示)となっている。この防止区域おいて地すべりブロックは、東地区と西地区に大別され、それぞれ複数想定(室生地区地すべりブロック分布図参照)これらの内、EAブロック、EBブロック、ECブロック、およびWB-1〜WB-4ブロックで活発な地すべり滑動が捉えられている。
2.地形概要
地すべり地周辺には、宇陀山地と呼ばれる標高500〜800m程度の山々が連なる。宇陀山地は、主として後述の室生火成岩により構成され、柱状節理の発達した急涯が随所に認められる。室生川左岸の集落部では、緩傾斜面が広く形成され、その他急斜面部、台地部陥没地部、湿地部など、地すべり地固有の特徴的地形の分布が見られる。
3.地質概要
地質は、領家花崗岩を基盤岩とし、新第三紀の、泥質岩を主とする曽爾層群や溶結凝灰岩を主とする室生火山岩がそれを覆っている。さらにその上位には、室生火山岩に由来する涯錐堆積物が斜面全体に厚く堆積している。このうち曽爾層群を構成する泥質岩は、全体に非常に軟質となっている。室生火山岩を構成する溶結凝灰岩は、中から硬質な岩塊状を主体とするものの、局部的に砂礫状や粘土状を呈する部分が地下の深部まで認められる。
4.地すべり状況
昭和34年に来襲した伊勢湾台風の豪雨に伴う地すべり滑動のほか、昭和57年、7年および平成9年などの集中豪雨時にも顕著な地すべり滑動が発生している。
5.地すべり発生機構
素因:室生地区の溶結凝灰岩は、当地に形成されていた湖に火砕流が流入し形成されたものと考えられる部分には泥質な堆積物が薄く分布している。すべり面は、この泥質堆積物や、溶結凝灰岩の溶結度が低く軟質となっている部分に形成されており、このような特異な地質構造が素因となっている。
要因:溶結凝灰岩は高透水性のため、地すべりブロックを取り囲む周辺の山々からの地下水涵養が活発であり、豊富名地下水と地すべり土塊末端部を流下する室生川の下刻浸食が要因であ地すべり運動は、「慢性型」に分類される。
6.地すべり対策工
主な対策工を、表-1に示す。
表−1 対策工数量一覧
地区
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東地区(平成7年度)
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西地区(平成9年度)
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主な
工種 |
集水井工(H=17〜24m)
10基
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集水井工(H=18〜31m)
7基
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横ボーリング工(L=40cm) 8本
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横ボーリング工(L=50cm)20本
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鋼管杭工(SM490 L=11〜59m ) 240本
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鋼管杭工(SM490 L=11〜59m )149本
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水路工 540m
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これらの対策工の効果で、東地区及び西地区の各ブロックとも地すべりは概ね沈静化するに至っている。
また、西地区頭部では、地すべり滑動に起因して形成された湿地化した陥没地に対し、浸透防止池工を施工し、池部の貯水池を地すべりブロック外へ排水している。ここでは、「過疎地域活性化モデル事業」として策定された「むろうアートアルガディア計画」により、地すべり対策工と芸術を融合を目的とした池工部及び流路工部の外観を呈している。 |