林野庁所管             平山(ひらやま)地すべり 長崎県 


移動初期の状態(1961年長崎県撮影)


移動後の状態(1966年長崎県撮影)

                引用文献:大八木規夫(1982):鷲尾岳・平山,アーバンクボタNo.20潟Nボタ

地すべりの概要
1.地すべりの概要
  平山地すべりは、長崎県佐世保市の北北西10kmに位置する流れ盤の基岩すべりで、移動には回転成分がないのが特徴である。196011月頃、愛宕山山麓の井戸水が枯渇したり湧水が減少し、19616月には地すべり脚部に亀裂が発生し水田の一部が決壊した。19639月には、愛宕山山頂付近を北西−南東に走る2筋の並行亀裂が発生しその間が地溝状に陥没した。地すべり移動塊の動きは、北西,北東および東へ3ユニットに分離して伏角4°程度の水平に近い移動で、中央部は北東に最大110m移動した。地すべり規模は、最大幅960m、奥行760m、深さ最大140m、平均40m、面積56ha、体積19×106m3で、家屋破壊23戸、山林17.5ha、水田29ha、畑等13.5haに被害を生じた。

2.地質概要
平山地すべりは、世知原層(中新世)とその下に不整合に載る八ノ久保礫層および北松玄武岩類からなる。世知原層は7層の輪廻層からなり、すべり面はその中央の輪廻層に狭在する炭層に発生している。地すべり移動体はこの層準の上で地層面に平行に移動している。

3.地すべり機構
 平山地すべりのすべり面の下位80120mには三浦三尺と呼ばれる炭層があり、19601962年に採掘された。地下における採掘開始から変動が現れるまで一年半以内であり、井戸水や湧水の減少は岩盤内の亀裂の激増とこれによる地下水の滲透を意味している。岩盤内の亀裂の増加は、地下採掘による上位地層のたわみによるものと考える。

4.対策工
 排水隧道と斜排水孔群による地下水排除工、鋼管杭工

地すべりの特徴
地すべり平面図
すべり面発生層準の地質柱状図
地すべり断面図