国土交通省所管       住沢(すみざわ)地すべり   長野県 
          位置図                       平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.22,No.1(1995年7月,通巻64号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 住沢地すべりは長野市街地の西方に広がる山地の縁辺部に位置する。地すべり地の下方には、国道19号やJR信越線、長野新幹線が通過しており、さらに住宅も密集していることから、地すべり活動時には甚大な被害が発生する恐れのある地区である。
 昭和44年、昭和52年に流動性の地すべりが発生し、国道19号まで移動土塊が達したこともある。その後対策工が実施され、地すべり活動は沈静化したが、平成5年に再び地すべり活動が発生した。そのため、あらためて抜本的な地すべり対策が実施されている。

2.地形・地質概要
 長野盆地西縁に伸びる丘陵性の台地上に位置し、上方部は山地、下方部は沖積低地となっている。地すべり地は、大きな地すべりブロックが低地部へ押し出したような地形外観を呈する。斜面の縦断形状は、上部の緩傾斜地、中部の平坦面、末端部の急斜面(30°)に区分される。
 周辺山地の基盤地質は新第三紀中新世後期の裾花凝灰岩であるが、盆地縁辺に伸びる台地には、第四紀更新世前期の西河原層、豊野層が分布している。住沢地すべり地の大半は西河原層の分布域にあたる。西河原層は火山灰層を挟在する、固結度の低い礫岩である。北西−南東方向の褶曲軸が当地区を通過しており、地層の傾斜は最大60°に達する。

3.地すべり状況と地すべり機構
(1)地すべりブロック
 国道19号に面した斜面に3つの主要ブロックが横並びに隣接している。それぞれの規模は延長100〜150m、幅100m前後である。さらにこれらの背後に拡大ブロックも存在しており、斜面上半分と下半分の複合した地すべりと考えられる。
(2)地すべり土塊
 半固結状態の西河原層礫岩および凝灰岩中にすべり面が形成されており、移動土塊はそれらの風化物および崩積土からなる。地すべり斜面の下を向斜軸が横断しており、斜面上部は流れ盤、下部は受け盤構造となっている。ただし、無層理状態に近い基盤岩であるため、地質構造の影響はほとんど受けていない。
(3)地下水
 冬季の積雪が比較的少ない地区であるが、地下水位は1〜3月が最も高い。このような特徴から、即時に流出する短時間の多量な降雨よりも、量は少ないが長時間にわたってゆっくり浸透する融雪水のほうが地下水位変化に大きな影響を与えていると考えられる。
(4)活動状況
 近年の地すべり活動は緩慢で断続的である。地すべり変状は冠頭部において、落差1m前後の滑落崖が断続的に生じる程度にとどまっている
(5)地すべり機構
素 因
 固結度の低い第四紀の礫層・凝灰岩。 向斜構造や断層の影響による変形作用で脆弱化・粘土化し、すべり面を形成しやすい地質。
誘 因
 上部山地から供給される地下水や融雪水などの浸透による間隙水圧の上昇。

4.対策工
 過去の活動時には、抑制工主体であったが、平成5年の活動時には抑止工が併用されている。抑止工はアンカー工、杭工(くさび杭)が実施されている。 地すべり地は長野盆地に面しており、広い範囲からの眺望が可能であることから、景観対策として緑化工も実施している。
地すべりの特徴
 住沢周辺の地質図
 地質断面図