地すべりの概要
1.地すべりの概要
長野市篠ノ井石川地区に位置する。平成11年9月に長さ200m、幅100mの地すべりが発生した。すべり面深度は23m程度で、移動土塊は約30万m3におよんだ。地すべり発生当初はブロック頭部に10〜20cm程度の段差亀裂が見られる程度であったが、2ヵ月後には落差約2m、5ヵ月後には5mにも達する滑落崖となった。
地すべり上方には特別養護老人ホームが、地すべり下方には下石川集落が立地しており、地すべり活動が拡大した場合には、甚大な被害が生じる恐れがあった。
2.地形・地質概要
土石流扇状地の先端部にあたり、長野盆地の平坦面と、土石流扇状地の平坦面に挟まれた急斜面(平均傾斜14°)で地すべりが発生した。移動土塊は柳沢土石流堆積物が主体を主体とする。
3.対策工
活発な地すべり活動を収束させるため、下記の工事が先行して進められた(安全率を確保するため後にアンカー工施工)。
・横ボーリング工 ・集水井工
・頭部排土工 ・押さえ盛土工
4.警戒監視体制
地すべりに隣接して、人家や特別養護老人ホームなどがあったことから、警戒避難態勢について、重点的な対応がなされた。
・「現地連絡会議」の設置
長野県・長野市・住民代表・警察・消防関係者・農協・学校・民生委員を構成員とする、「現地連絡会議」が設けられた。この会議で地すべりが活発化した場合の対応検討、関係者への情報開示を行った。
・監視システム
伸縮計観測を無線システムによる自動観測化し、変位データをリアルタイムで確認できるようにした。このデータを利用して、「現地連絡会議」に最新情報を提供するとともに、「情報掲示板」に最新情報を掲載することで、住民に対しても最新情報を提供した。
・情報開示の効果
住民の地すべりに対する関心は高かった。避難訓練では、雨天であったにもかかわらず150人以上の住民が参加した。特別養護老人ホームでも避難訓練が行われたほか、一人暮らしの老人、障害者の避難方法や避難経路の確認、避難完了の確認方法など、きめ細かなソフト対策が住民協力のもとなされた。
※引用文献:藤本済・土屋好幸・小熊友和・白石秀一(2004)、長野県下石川地区で発生した地すべりの監視と広報、日本地すべり学会誌、40巻5号419-423頁
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