構造改善局所管       上手村地すべり 長野県  



位置
置図

全景写真

「地すべり技術」掲載号:Vol.18,No.1(1995年7月,通巻64号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 上手村地区は、長野県北西部の姫川支流の土谷川沿いに位置する。上手村地区の北西側には安山岩貫入岩が独立法(立山)を形成し、その山麓緩斜面が地すべり地となっている。上手村地区はなだらかな斜面と豊富な地下水の存在により、古くから集落が発達し、江戸時代にはすでに用水(土谷堰)が整備されるなど、土地利用が盛んであった。
 明治34年と昭和8年に大規模な崩落があったといわれており、昭和35年、昭和51(追加)に地すべり防止区域に指定されている。

2.地形・地質概要
(1)地形
  当地区周辺の地形は、基盤岩の地質を良く反映している。
     安山岩貫入岩(立山の山体):突出した独立峰をなす。
     長崎層-泥岩:緩斜面や小規模な平坦面が発達。
     長崎層-砂岩:急な山地が主体をなす。
(2)地質
  ・糸魚川静岡構造線の東に位置し、中新世の堆積岩類(長崎層)の分布域にあたる。
  ・長崎層は小川層に対比され、長野県北部に広がる地すべり多発地域の一郭をなす。
  ・地すべり斜面と地質構造の関係は流れ盤である。
  ・地すべり区域を石原断層が横断する。断層は、地すべり地の水理地質構造に大きく関与している。

3.地下水状況
  地すべり地全体に湧水や湿地帯が多い。
  石原断層を境に山側の地下水位が高く、地下深部の帯水層の水頭も非常に高い。
  深度40m以上の破砕泥岩から200L/min以上の地下水が自噴した調査孔あり。
  安山岩(貫入岩)や亀裂の発達した砂岩に地下水が多く賦存し、断層の遮水効果により水頭
   上昇をもたらしている。


4.地すべり状況
 緩斜面上の浅い谷にそって、幅100m前後の地すべりが分岐、合流している。
 ・連結した地すべり地の総延長は700mにおよぶ。
 ・地すべり移動土塊は、崖錐堆積物や崩積土、水成堆積物などの被覆層である。
 ・すべり面深度は510m程度と浅い。

5.地すべり機構
  [素 因]
  中新世の軟質泥岩の分布域にあたり、流れ盤の地質構造をなす。
  ・亀裂性岩盤(安山岩、砂岩)に多量の地下水が賦存している。
  [誘 因]
  亀裂性岩盤に貯留されている地下水が、地すべり区域の基盤を通じて、被圧地下水として作用
   している。


6.対策工
  ・表面水処理
    自然水路沿いに、排水路、暗渠工を整備。
  ・水抜工
    湧水地を中心に横穴ボーリング工を実施。
  ・抑止杭工
    PC杭、鋼管杭が多数施工されている。
地すべりの特徴
  地質断面図および断面図
  模式的地下水水理機構図各種調査結果対比図