1.地すべり概要
当地区は、宮崎市高岡町年ノ神地区である。宮崎市の高岡支所から北西に約5kmの地点で、大淀川水系、田中川の左岸部斜面に位置する。地すべり地末端(南側)の田中川には砂防えん堤が建設されており、周辺は昭和54年(1979年)5月砂防指定地に指定されている。田中川に平行して、標高80m付近に町道、標高100m付近に農道がある。
町道や農道に顕著な路盤のズレ変位、沈下現象があり、常時湧水している箇所も認められた。変状状況から地内は中央地区(Aブロック)、西部地区(Bブロック)、東部地区(Cブロヅク)の3地区に区分される。
2.地形・地質
地すべり地下方の大淀川支流の田中川は南東方向に流下し、これに平行して尾根がN50°W方向に伸び、基岩の走向方向とほぼ同じ方向である。尾根の北斜面は流れ盤、南斜面は受け盤となっている。地内は、縦断方向の斜面形状が下に凸の弓形斜面形となっていて、標高130〜135m付近で斜面傾斜が変化している。急傾斜面には、表層崩壊地形が発達し、緩斜面部には地すべり地形が分布する。
宮崎層群綾層と第四紀の段丘礫層が分布する。綾層は、暗青灰色で塊状を呈する泥岩層を主体とし、有孔虫などの微化石を含む海成層である。
この綾層の泥岩は風化に対する抵抗力が低く、露岩の表面は風化により粘土化している。
基岩の綾層は段丘礫層に覆われていて、段丘礫はφ10〜30cm程度の円〜亜円礫より構成される。
地すべり地の地質は、新第三紀の宮崎層群綾層の泥岩を基岩とし、その上位に堆積する第四紀の段丘礫層、崩積土層の大きく3つの層に区分される。
孔内水位は地表付近で形成されており、水位面表層流動や下位の段丘礫層との地層境付近で有圧水層が分布する。土層的には粘土分が多く透水性に乏しいものと判断されるが、すべり滑動によって土層が乱されており、これらの亀裂面が地下水の水みちとなっているものと思われ、自由地下水帯に近い。
3.地すべり機構
泥岩層を基岩としてこの上位に薄層ではあるが密実な段丘礫層が分布する。段丘礫層および泥岩は、密実であるため地下水の制限床となりうる。このため、最上位に分布するルーズな礫混じり土層内には段丘礫層や泥岩に規制された地下水や浸透水が豊潤に賦存する。地すべりは、この湿潤した礫混り土層が滑動している。
パイプひずみ計の累積〜測定不能や孔曲り等の現象が確認された。このためすべり面深度は、段丘礫層上面もしくは泥岩上面であることが確認され、「崩積土層底面のすべり」と判定された。
@すべり面深度h=6〜8mの浅い崩積土層のすべりである。
Aすべり作用にする地下水は泥岩および段丘礫層に規制された自由地下水〜準自由地下水で、
水位は非常に高い。
Bすべり層は多数の亀裂に分断されており、上・下部のみならず更に細分化している。一体で滑動 ずる形態ではなく、流動状に滑動している。
Cすべり面傾斜は平均20°と緩やかな勾配であるが降雨後の移動速度は1.2cm/日と速く、移動 量も大きいすべりである。降雨状況によっては、20〜30cm以上の滑動が予想される。
4.素因・誘因
(1) 素 因
地すべりの繰り返し発生した地形・地質
硬質岩盤上のルーズな地層
多量に賦存する地下水
(2)誘 因
台風等の集中豪雨
5.地すべり対策工事
抑制工 : 横ボーリング工、水路工
抑止工 : グラウンドアンカー工
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