林野庁 所管           中の又地区地すべり  宮崎県 

中の又地区の位置

国土地理院1/25,000地形図「諸塚」に加筆


中の又地区の地すべりブロック区分図


                         「地すべり技術」掲載号:Vol.35No.2(2008年11月、通巻104)

1.地すべり概要

 中の又地区は、諸塚村役場の東方約4.5kmにあり、耳川水系の中の又川に接した標高200〜350mの北向き山腹斜面に位置する。
当地区で発生した地すべりブロックは大きく3つに区分され、これらを含む防止区域面積は14haに及ぶ。なお、当地区は平成18年に地すべり防止区域の指定を受け、現在も調査・対策工事および施設効果観測を継続している地区である。
 平成17年の地表踏査によると、大きく3つのブロックに区分される。
ブロック1は、平成18年の豪雨期までに、集水井2基による地すべり滑動の沈静化に成功し、同19年度に実行された杭工により、目標安全率F=1.10を達成するに至った。
対岸に位置するブロック2は、平成19年より集水井5基による地すべり滑動の沈静化を図り、地下水排除効果を観測している。
ブロック3は、平成17年9月の豪雨により、村道を横断する亀裂を生じている事から、警戒・監視しているが、顕著な地すべり滑動は確認されていない。
地すべり防止区域の中央部を東西に流下する中の又川は、平成17年9月の豪雨により、斜面長40m、延長200mに及ぶ大規模な渓岸崩壊をきたし、流出土砂による道路等ライフラインの被害は、下流側約1.7kmに及んでいる。
中の又地区で発生した各地すべりブロックは、この大規模崩壊の直上に位置し、脚部土塊の流出が各地すべりブロックの滑動誘因の一つとされている。

2.地形・地質状況

中の又川沿いの斜面は、谷の下刻により斜面傾斜40°に及ぶ急勾配が形成されるが、この急斜面の上部には、地形図上で明瞭に区分できる緩傾斜地が形成され、その多くは水田や宅地として利用されている。緩傾斜地の上部斜面は、再び地表面傾斜35°に及ぶ急な斜面が形成され、当地区の地すべり外周亀裂は、このイス型山腹縦断地形を取り込むように発生している。
 中の又地区に見られる基盤岩類は、日向層群(四万十帯古第三紀層)の乱雑層と槙峰層群(四万十帯白亜紀泥岩優勢層)の泥岩(千枚岩質)に区分され、地内を流下する中の又川は、槙峰層群と日向層群の境界部(延岡衝上断層)に該当する。地区に分布するせん断泥質岩はブロック2の山腹斜面に対して流れ盤を、ブロック1やブロック3に対しては受け盤を成している。
 地下水位変動観測では、降雨に呼応した地下水位の急上昇が計測され、大きいものでは10m以上を計測する孔もある。
これは、地すべりブロックがすり鉢地形底部に位置する事から、周辺斜面で浸透した地下水が当地区に集中し、地下水を滞留しやすい地質構造である。

3.素因・誘因

(1)素因
  地下水・浸透水の集中しやすい地形
  浸透水の滞留しやすい地質
  脆弱な岩質

(2)誘因
  集中豪雨

4.地すべり対策工事
抑制工:横ボーリング工、集水井工
抑止工:杭工

地すべりの特徴
(1) 対策工計画平面図
(2) ブロック2 断面図
(3) ブロック2 現況写真
(4) 降雨−水位変動図
(5) すべり面粘土の試験結果等