1. 斜面崩壊の概要
倉ヶ崎地区は,栃木県さくら市喜連川倉ヶ崎地内「お丸山公園」直下の南向き斜面に位置する。この公園はさくら市中心から北東約6
km に位置し1186年に塩谷氏が築城した「喜連川城」の城址で,台地は堀割などの遺構や豊かな自然環境の残された観光・レクレーションの中心的地区となっており斜面の脚部には集落をはじめ,公衆浴場など,22戸の家屋が位置する。
東北地方太平洋沖地震が発生時,震度5 強の強い揺れが観測され,段丘崖の縁辺部には延長約600
mにわたり最大で1.6 mに達する段差や亀裂が断続的に発生した。亀裂は,斜面上位の急傾斜には連続的に発生したが,城跡の掘割部が設けられた箇所など傾斜が緩い斜面では発生しなかった。また,斜面下部では明瞭な変状は認められなかった(写真1)。
地震から約6 ヶ月経過した2011年9月21日,台風15号が栃木県を通過した。対象地では9
月21日21時までに累積雨量226 mm,時間最大雨量48 mmを記録した。(国土交通省テレメータ雨量計:喜連川)これは,1984年以降28年間の統計期間では,1986年8月に記録した305
mmに次ぐ豪雨であった(図1)。
この時,AA’断面およびCC’断面では,降雨終了から約3時間後の,9月22日0時45分頃,砂礫層に接する崩壊が発生した(写真1)。AA’断面では約10,000 m3 の土砂が流動化し,人家一戸が全壊したが幸いにも人命には影響なかった。(写真2,写真3,写真4)
2.地質概要
地質は更新世の半固結状砂礫層の上位に,粘土化した火砕流堆積物(平均N値5)と火山灰土層(平均N値3)がほぼ水平に堆積している(図2)。火砕流堆積物は西方の高原山から約20〜30万年前に噴出したと考えられ,また火山灰土層はそれ以降約1万年前までに堆積したものと考えられている。
地震後に現地の台地上面の中央部に加速度計を設置して,K-NETと比較したところ,最大加速度は全般に前者がK-NET
より大きく,特に2012年1月1日14時28分に伊豆諸島沖で発生したやや強い地震では,最大加速度は3〜4倍程度の値が記録された(図3)。
これは尾根状の地形であることや谷底平地よりも軟質層がより厚いことに起因し地震波が増幅したものと考えられる。したがって対象地は,地震波が増幅しやすい地形,地質条件下にあるといえ,東北地方太平洋沖地震の際にも大きな地震動が作用したものと見られる。(図4)
3.素因・誘因
素因:地震波が増幅しやすい地形,地質(尾根状地形,厚く堆積した軟質層)
誘因:台風に起因する集中豪雨
4.崩壊対策工事概要
排土工,アンカー工,横ボーリング工
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