1.地すべり概
西平地すべりは、天草郡天草町役場の南方約3kmに位置する。天草下島の西海岸に面する荒尾岳(標高342m)の西側斜面で、地すべり末端は天草灘に接している。
地すべりの活動履歴は不明。最近では昭和51年7月の集中豪雨時にAブロックにおいて崩壊性すべりが発生し、その後昭和54年まで断続的に活動している。集中豪雨を契機とした地すべり活動は昭和57年にC、D、Fブロックでも確認されている。
上記以外の地すべり活動の特徴として、降雨の有無に関わらず数年単位の長期間にわたる微変動により、家屋、擁壁および道路に亀裂等の変状が生じ、被害を受けているブロックが多い。
背斜構造や断層も確認されており、地質構造が地すべり活動に大きく影響していると考えられる。
昭和53年5月に地すべり防止区域に指定された。面積は72.38haで、ブロックはA〜1の9ブロックに大区分される。
2.地形・地質
地すべりは、標高0〜250mの区間で発生している。地内の地形は、集水斜面形を呈しているが、集水面積が比較的小さく流量は少ない。縦断的には海岸線から標高90m付近まで約30゜の急斜面となるが、これより標高150mまでが約5゜の緩傾斜地形となり、さらにその上部は約30゜の急斜面を成す椅子形の縦断面形を呈している。
周辺の地質は高浜変成岩類に属し、基岩は泥質片岩・石英片岩・塩基性片岩・砂質片岩等が分布する。高浜変成岩類は絹雲母片岩・緑泥片岩・石墨石英片岩等で構成され、低温高圧の条件下で変成された変成岩と考えられる。これらの岩体は、強剥離性を有し千枚状〜板状に剥れやすく、節理も発達するため破砕状を呈する。深層部まで亀裂が発達し、基岩内部での漏水が激しいことが確認されている。
地すべり地が緩い背斜構造をなしている。地すべり地内には北東一南西方向に連続する2本の断層が存在しており、地すべりを生じやすい地質構造を有している。
3.素因・誘因
1)素因
@旧地すべり地形を呈し、過去に大規模な地すべり活動の履歴。
A緩い谷地形(集水地形)
B千枚状〜板状に剥離しやすく破砕状を呈する変成岩。(高浜変成岩類、泥質片岩、石英片岩等)
C地質構造的に背斜構造、地すべり地内には2本の断層が北東から南西方向に連続するなど、非常に複雑な地質構造を有している。
2)誘因
@昭和51年、57年の集中豪雨時に活発化。
A末端部の波浪侵食の影響。
B集中豪雨時、間隙水圧の上昇
4.地すべり対策工事
抑制工(集水井工・水路工)、抑止工(アンカー工・杭工
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