国土交通省所管 平崎地すべり | 鹿児島県 |
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1.地すべりの概要 平崎地すべりは,南さつま市役所より西南西に約15kmの南さつま市坊津町久志に位置する。 当地区は昭和55年4月に地すべり防止区域に指定され,地すべり対策が進められ,昭和62年に概成した。しかし,平成26年6月,平成27年6月の豪雨により,市道に変状が発生,さらに進行が認められたため,地すべり対策が行われることとなった。 2.地形・地質概要 [地形] 平崎地区が位置する薩摩半島南端の西部域は,標高250〜450 m(最高峰591 m:野間岳)の中起伏山地が北西から南東へ約20km にわたり連なる。山地の西側は東シナ海に面しているが,開析の進行した山地部に接するため入り組んだ湾が連続する”リアス海岸”を成す。このため,低地部の発達が乏しい。平崎地区の地すべり防止区域は西向きの海岸に近い斜面に位置し,緩地形部分にあたる。 [地質] 平崎地区一帯には,新第三紀中新世の古期火山岩類の火山砕屑岩が分布する。火山砕屑岩は2層から成り,淡青灰〜青灰色の溶岩・自破砕溶岩互層を淡黄色の凝灰角礫岩が覆う形状である。 溶岩・自破砕溶岩互層は,地すべり面より下の不動岩盤部分と考えられる。 淡黄色を呈する凝灰角礫岩の基質は火山灰であり,これは安山岩質溶岩の礫および岩塊を混入する。節理の発達が乏しく塊状で分布するが,比較的軟質な岩盤である。 地すべりが活発な緩地形部には,深層崩壊によって生じた崩壊堆積物(崩積土)が分布している。崩壊堆積物は,軟質な粘性土中に,安山岩質の礫や玉石,凝灰角礫岩の直径1〜4mの転石岩塊が混入している。地表部はかつて水田であったこともあり,非常に軟質である。特に,降雨後ではこね返しによる泥ねい化が顕著である。 3.地すべり状況 平崎地すべりは,A〜Sブロックの9ブロックに区分される。このうち,A,Bブロックは対策工が施工されており,活動の沈静化が確認されている。 平成26年,27年の豪雨により,未対策のR1・R2ブロックを含むQブロック,Oブロックで明瞭な地すべり活動が観測された。このため,地すべり対策は,活動状況が明瞭な上記の4ブロックを対象に重点的に実施することとした。 4.地すべり機構 [素因] @深層崩壊により生じた崩壊堆積物(崩積土と凝灰角礫岩の岩体)の分布。 A地質境界付近の地下水の流下,すべり面付近およびその上位層の風化変質の進行。 B地すべりブロック末端域での活動停止中の古い地すべりブロックの分布。 C集水しやすい地すべりブロック背後の凹地地形。 [誘因] @表流水や湧水による斜面の侵食。 A豪雨による地下水位上昇。 5.対策工 横ボーリング工 集水井工 グラウンドアンカー工 |
地すべりの特徴 地質断面図 対策工平面図 グラウンドアンカー工断面図 |