国土交通省所管       八幡平(はちまんたい)地すべり 岩手県
 
<引用文献>
 岩手県1:パンフレット「地すべり対策事業 八幡平地すべり」 岩手県土木部砂防課
 岩手県2:パンフレット「地すべり対策事業 八幡平地すべり」 
                             岩手県土木部砂防課 岩手県盛岡地方振興局土木部
                             :現在、岩手県県土整備部砂防災害課
 「地すべり技術」掲載号:Vol.30,No.1(2003年7月,通巻88号)
地すべりの概要
 1.地すべりの概要
 当地すべりは、岩手県八幡平市(旧松尾村)赤川山国有林内(一級河川水系北上川支流赤川右岸)にある。
 八幡平地すべり防止区域(面積A=55.3ha)として、指定されている。
  下部ブロック 昭和46年10月11日 建設省告示第1710号 13.6ha
  上部ブロック 昭和48年 2月15日 建設省告示第310号 19.1ha
  上部ブロックに追加 平成4年5月28日 建設省告示第1163号 22.6ha

 2.地形概要
 当地区は、盛岡市の北西方約33kmに位置し、岩手・秋田両県境に広がる第四紀の新しい火山地帯で標高900〜1600mの間に様々な火山山岳地形をとどめている。周辺には、茶臼岳(1578m)、大黒森(1446m)、丸森(1171m)などが控え山頂部は全体として丸みを帯びなだらかであるが、谷側斜面は著しく侵食をうけ急崖を形成している。これらの景観をぬって主要地方道西根八幡平線(有料道路アスピーテライン)が、秋田県側との交通をつないでいる。
 上部ブロックは、県道が地すべりの中央を横断し、この道路付近が地形の変換点となっており、山側は急傾斜面(15°〜40°)であるのに対して道路下方では緩傾斜面(5°〜15°)となっている。

 3.地質概要
第四紀の火山噴出物としての凝灰岩、凝灰角礫岩、安山岩溶岩などからなる。安山岩以外の地層は、後火山作用の熱水変質により珪化、緑色化、粘土化を受けている。丸森から松尾鉱山にかけ分布する丸森凝灰岩は変質作用で粘土化、劣化した地層となっている。

 4.気象概要
 内陸性気象に属し、年間降水量は全国平均に比較してもやや少ない地域である。積雪量は5〜6mに達し、特別豪雪地帯の指定を受けている。月別では5〜10月の6ヶ月間の降水量が年間降水量の2/3を占めている。
 一方、積雪期間の降水はほとんど積雪として流域に貯留され、4月下旬〜5月上旬の短期間に融解する。

 5.地すべり発生機構
 八幡平周辺地域には、地質時代に発生したいくつかの巨大な旧地すべりが分布している。このうち当地区を含むものは、野ノ棟岳・恵比須森・茶臼岳を結ぶ尾根筋を冠頭部とし、東八幡平の柏台地区に至る延長8.0km・幅2.5〜4.0kmの広大な地すべり地帯が該当し、巨視的には、当地区はその冠頭部滑落崖に残った崩積土塊の再滑動とみることができる。
 当地区の地すべりブロックは、上部地区はAB〜Iブロック・下部地区はJ〜Pブロックに区分されており、いずれのブロックとも第四紀の凝灰岩に由来する崩積土が滑動するタイプであり、すべり面深度は10〜15mである。崩積土は比較的粗い地層で透水性も比較的大きく、地すべり変動が主に融雪期に活発化することから、地下水位の著しい上昇に伴う間隙水圧の作用が地すべり滑動の第一の要因と考えられる。また、積雪による積載荷重の増大が主動土圧として作用することも、斜面を更に不安定化しているものと考えられる。

6.対策工
 「対策工事の経緯」参照。
 
地すべりの特徴
 岩手県地質概略図
 概要平面図
 Eブロック地質断面図
 積雪の状況
 地上集水ボーリング 排水状況
 上段杭施工(平成元年)
 対策工事の経緯
 集水井のせん断破壊(平成9年