国土交通省所管 大塚地すべり 茨城県

「地すべり技術」掲載号:Vol.41,No.3(2014年、通巻122号)

「斜面防災技術」掲載号:Vol.44,No.2(2017 年、通巻130 号)

1.地すべりの概要

大塚地区は、常陸大宮市諸沢以内に位置する地すべり防止区域で、家屋1軒を半壊、および市道(被災当時は町道)を被災させたEブロックの地すべり滑動を契機として平成15年から調査が実施され、平成16年に区域指定(28.91ha)された。
地区内には大小16の地すべりブロックが存在し、道路変状、開口亀裂などの地すべり現象が認められる。このうちA、H、H下部、K、Lブロックではアンカー工、鋼管杭工、横ボーリング工の地すべり対策工が施工されている。

2.地形・地質の概要

(1)地形

  • ・当地区一帯は阿武隈山地南部の中でも久慈山地と呼ばれる山地内に位置している。久慈山地は、西縁を久慈川、東縁を久慈川の支流である里川により区画された開析の進んだ第三系堆積岩により構成される。久慈川山地東端には北北西‐南南東の方向で幅数kmの棚倉破砕帯が存在する。当地区は久慈川より東へ約4km離れた久慈山地のほぼ中央部にあたり、棚倉破砕帯からは西の方向にあたる。調査地の標高は200~400mを示す。調査地付近では久慈川の支流である諸沢川が東から西へと流下し、諸沢川やその支流により深い谷地形が形成され、特に沢沿いでは勾配が急となっている。

(2)地質

  • ・当地区では、これまで実施したボーリング調査から、砂岩・泥岩および砂岩泥岩互層の分布が確認されている。地区内の高標高部斜面では男体山火山角礫岩の露頭が確認されているため、これらは下部層にあたる新第三紀中新世の浅川層に相当する。

3.素因・誘因

(1)素因

  • ・斜面に対して流れ盤状に風化が進行するとともに、末端に位置する河川の下刻が斜面の不安定化を招いた。

(2)誘因

  • ・降雨時に多量の地下水がブロック内に流入することにより、地すべり面に働く間隙水圧が上昇、移動土塊が不安定化した。

4.対策工

A,H,H下部、K,Lブロックでは、アンカー工,鋼管杭工および横ボーリング工が施工された。

地すべりの特徴