1.地すべりの概要
当地区は,常陸太田市下宮河内の久慈川水系一級河川浅川左岸の丘陵地に位置しており、周辺は地すべり防止区域が密集する県内の地すべり多発地帯となっている。昭和61年8月台風10号の集中豪雨によって浅川支流今通沢に面する斜面に地すべり変状が発生し、家屋及び耕地に被害をもたらした。地すべりは,長さ約50m,幅約50m,深度5〜10mの規模に及ぶ2つの地すべりが隣接して発生し、すべり面傾斜は地表面とほぼ同程度の15〜20°で、降雨や末端の洗掘等による滑動の活発化が懸念され,周辺にも地すべりが認められたため,昭和63年に地すべり防止区域(6.03ha)に指定され,対策工を実施し,平成元年度に概成した。その後、平成8年5月に、隣接地域で地すべり変状が発生した。地すべりは浅川左岸の標高140m付近を頂部として浅川水衝部にいたる長さ約90m,幅約70m、深度約20mの規模におよび、浅川埋塞等の被害を及ぼした。平成12年に地すべり防止区域(2.34ha)に追加指定され対策工を実施,平成19年度に概成した。
2.地形・地質概要
(1)地形:当地区は,棚倉構造線(破砕帯)の西側に南北に連なる構造山地である久慈山地の南端部にあたる。久慈川の支流浅川の流域で標高150〜200m程度の丘陵地が連なる。昭和63年指定区域は,浅川右支の今通沢左岸の標高80m〜150mで傾斜15〜25°の緩斜面に位置する。H12年追加指定区域は,尾根末端部の傾斜20〜30°の斜面で浅川水衝部にあたる。
(2)地質:基盤は新第三系の凝灰岩,砂岩,礫岩及びこれらの互層からなり,八溝山地の東部に発達する「石塚層」に相当する。これらを覆い,崩積土,段丘堆積物が分布する。
基盤の地層の走向傾斜は,大局的にはNSからNE-SW走向で東及び南東側へ20°前後で傾斜し,斜面に対して流れ盤構造をなしており,地層の堆積構造に規制されたいわゆる第三紀層地すべりとなっている。
3.素因・誘因
(1)素因:1)凝灰岩および泥岩を主体とするため,風化やせん断破壊に対して弱く粘土化しやすい性質を有すること。2)地質構造的に断裂系が発達していること。3)地層の傾斜が地すべり運動方向に調和的で,緩い流れ盤傾斜となっていることが上げられる。
(2)誘引:1)昭和63年指定区域は,集中豪雨ですべり面への間隙水圧の上昇があったこと。2)H12追加指定区域は,浅川の屈曲(水衝部)に位置し,斜面の裾部の浸食が顕著な箇所であることが上げられる
4.対策工
昭和63年指定区域:横ボーリング工,抑止杭工,その他布団籠工,表面排水溝を実施し平成元年度に概成。
平成12年追加指定区域:排土工,押え盛土工,横ボーリング工,その他水路工,法面保護工等を実施し平成19年度に概成。
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