林野庁 所管         歌長地すべり(うたおさ)
兵庫県
              全景写真                          位置図

掲載号:Vol.30,No.1(2003年7月,通巻88号)
1.地すべりの概要
 歌長地すべりは兵庫県北部の但馬地域に数多く分布する地すべりのひとつであり、美方郡温泉町のほぼ中央に位置する。地すべりブロックは細長い帯状の尾根沿い東側斜面に複数分布する。近年に複数のブロックで変状が発生し、平成9年3月に地すべり防止区域に指定され(面積25.20ha)、順次調査・対策が行われている。大部分の地すべりは風化岩すべりが主体となり、副次的に表層が滑動する形態である。
 地すべりブロックはA,B,C,D,E,G,Kの7ブロックよりなり、変状の明瞭なブロックより順次調査が実施されている。A,B,Gブロックには高さ1〜5mの滑落崖が形成され、調査開始当初は明瞭で新しい亀裂が分布していた。Aブロックにおいては、調査中も動態観測で明瞭な変位が認められ、特に融雪期に地すべり活動は活発であった。対策工はA,B,G,Kブロックで施工中もしくは施工が終了し、Aブロックは対策効果が認められ概成となった。

2.地形・地質概要
 調査地一帯は標高200〜500m程の山岳地である。周辺一帯は新第三紀鮮新世の照来層群の春来累層によって構成されている。春来累層は湯谷礫岩層及び茅野砂岩層により構成され、調査地には湯谷礫岩層が分布している。湯谷礫岩層は安山岩礫を主体とし、基質は暗灰色を呈し凝灰質であるため凝灰角礫岩状を呈している。

3.素因・誘因
素因:
・当該地の構成地質は風化されやすい凝灰角礫岩からなり、基盤岩の浅部が脆弱化する
・複数の破砕帯が存在し、地すべり地基盤岩が部分的に破砕され脆弱帯が存在する
誘因:
・谷の洗堀及び末端部崩壊による不安定化
・豪雪地帯であり、融雪時の地下水供給による間隙水圧の上昇とすべり面強度の低下

4.対策工
・末端部の侵食防止のための谷止工;1基、土留工;2基
・地すべりブロック内の地下水排除を目的とした地下水排除工;集水井工4基
・ボーリング暗渠工延長3740m
・その他;水路工、山腹工
地すべりの特徴
歌長地すべり平面図
A、Bブロック対策工平面図
Gブロック対策工平面図
Gブロック1m深地温探査コンター図
Gブロック地下水流下経路図
Gブロック想定断面図