構造改善局所管     灘山本(なだやまもと)地すべり  兵庫県

位置図


地すべり平面図

「地すべり技術」掲載号:Vol.32,No.3(2006年3月,通巻96号)
地すべりの概要
1.地すべりの概要

 灘山本地区は、昭和35年4月に地すべり防止区域に指定された。平成5年にHブロック中央部にて豪雨災害が発生し、緊急対策工が施工された。この被災を受けて地すべり対策事業が開始され、平成12年度までに9ブロックの地すべり防止検討が行なわれ、この結果を基に工事が施工されている。防止工法は目標安全率を満たすように計画され、平成14年度に概成となった。

2.地形・地質概要
 本地区を含む南淡の地形は、諭鶴羽山地に属している。最高点は諭鶴羽山頂の608.3mであり、これが淡路島の最高所である。山体の概形はほぼ長方形で、東西方向に大きな凹凸はない。本山体の南斜面は、山頂から海面まで急傾斜となるが、これは中央構造線に起因するものである。同山地の一角である灘山本地区は、海岸より標高150mまでの範囲の急斜面で、仏谷川、間口谷川の渓流が存在する。
 地区周辺は、中生代白亜紀の和泉層群が広く分布し、海岸沿いの一部に大阪層群が分布する。淡路島南端部には、中央構造線系油谷断層が北北東−南南西に縦断しており、この断層隆起により諭鶴羽山脈が形成された。灘山本地区ではこの断層を境に、北側に和泉層群が、南側に大阪層群が分布している。

3.地すべり状況
1) 和泉層群分布域:風化岩・崩積土すべり
 和泉層群は、断層活動の影響で広範囲にわたり強く破砕され、風化作用も地下深部まで及んでいる。このため、軟質な風化岩が地すべり発生の素因となっている。
2) 大阪層群分布域:崩積土・粘性土すべり
  大阪層群は、非常に良く締まった砂礫主体であるため、本層自体が地すべり発生の素因となることは考えられないが、崩積土層は軟弱な粘性土で構成されているため、地すべり発生の素因となる。

4.地すべりの発生機構
(素因)

@ 急傾斜な斜面地:海岸侵食による急崖地形
A 油谷断層の存在:基盤の破砕と地下水の遮断層・供給源
B 軟質な地質の分布:風化岩(破砕岩)と崩積土
(誘因)
 油谷断層が中央部にあるため、豪雨時に地下水が断層上面で堰き止められ、過剰な水圧を有することが推測される。

5.対策工
 抑制工である集水ボーリング工を主体的に実施した。抑止工は地下水排除工により地すべり発生を抑制し、その後の観測において変位が確認されたブロックを対象に施工した。
地すべりの特徴
 灘山本地区周辺の地質
 概成検討フロー
 各ブロックの概成判断