林野庁 所管            抜戸(ねけど)地すべり    福島県 


「地すべり技術」掲載号Vol.27,No.3(2001年3月,通巻81号)
(位置図出典:山崎孝成ほか(2003):膨張性凝灰岩に形成されたすべり面,地すべり,Vol.39,No.4)
地すべりの概要
1. 地すべりの概要

 福島県高郷村抜戸地区の地すべり活動履歴は,江戸時代から始まり,明示時代にも2回活動している。平成12年当時活動中のブロックは,幅約300m,長さ600m,面積約18haの規模となっている。滑落部には高さ10〜20m,南北に約150mにわたる滑落崖が分布し,ブロック南側には高さ20〜30mの断層崖が東西に走っている。また,地すべり面深度は平均で20mの規模を有する。冠頭部には最大18mの滑落崖が形成されているが,滑落崖下には最大幅40mの陥没凹地が認められた。

2.地形・地質概要
 当地すべりは,阿賀川右岸の標高200〜350mの丘陵地東向き斜面に位置し,地すべり斜面の平均傾斜は14゚,冠頭部滑落崖背後は高位段丘礫層が部分的に残存する平坦面を形成している。 すべり面は鍵層をなす灰白色酸性凝灰岩上面に形成されている。なお,酸性凝灰岩は一部粘土化しており,ベントナイト質状を呈している。地すべりブロック内の移動層は,地塊形の岩塊を混入する土砂混じり礫〜巨礫で構成されている。

3.素因・誘因
(1)素因:粘土化した酸性凝灰岩(鍵層)の一部がベントナイト質状。
(2)誘因:融雪による間隙水圧の上昇

4.対策工
 集水井工,集排水ボーリング工,アンカー工,シャフト杭工54基,山腹工 他
  
地すべりの特徴
  地すべり断面図
  酸化凝灰岩(鍵層)概要図