国土交通省 所管        小谷石(こたにいし)地すべり 北海道

地すべり平面図

位置図

「地すべり技術」掲載号:Vol.30,No.1(2003年,通巻88号)
地すべりの概要

1.地すべりの概要

 当地すべりは、北海道南部、渡島半島南端の知内町に位置し、津軽海峡に面する海岸沿いにあり、西方の急峻な山地を頭部とし、海まで舌端部が達する地すべりである。

2.地形概要
 知内山地帯の東方に位置する地すべりで、地形区分として、北部山地・南部山地及びこの山地に挟まれた緩斜面・海岸斜面に大別される。
 中央の緩斜面は、周囲の山地に比べ高度が著しく低く、明瞭に地形区分されている。この緩斜面の下方台地状平坦部には、沼をはじめ、多数の滑落地形や湿地帯が広がり、永年にわたる地すべりによって形成されたものである。

3.地質概要
 地すべり地の地質は、新第三紀鮮新世に噴出堆積した知内火山岩類で、輝岩・安山岩溶岩・同質火山角礫岩が主体を成している。
 知内火山岩類は、地すべり地が位置する地域では、強い熱水変質作用による変質岩が分布し、岩盤の粘土化が著しく進んでおり、この変質帯において地すべりが発生したものである。

4.地すべり状況
 地すべりは、岩盤面をすべり面とする初生的な古期岩盤地すべりと崩積土の中での二次すべりを繰り返す比較的新しい地すべりの二段階が考えられる。
 平成16年における地すべりの安定性検討は、中部緩斜面の長さ約800mの崩積土内のすべりが対象になる。この崩積土すべりは、頭部から末端まで、一度に滑落した可能性は小さく、長さ200〜300m規模の地すべりが繰り返されたものと推定され、この地すべりブロックの地下水低下を目的に、集水井による地下水排除工を主体に対策された。

5.地すべり発生機構
<素因>
 新第三紀鮮新世の知内火山岩類の火砕岩の一部が、強い熱水性変質をうけて粘土化
<誘因>
 地すべり地からの豊富な地下水供給と豪雨などの相互作用による地下水の上昇

6.対策工
 昭和57年から平成6年にかけて集水井を9基施工し、一時的に計画安全率に近い安全度を確保するまでに達した。しかし、その後、最上部・末端部での浅層すべりの発生や強酸性地下水による沈殿物の発生により、集排水ボーリング孔の目詰まりなどから地すべりブロック全体の安定度低下が認められた。このような背景から、恒久的な地すべり対策を目指し現在の地すべり地の再評価と今後の対応について検討を行った。
 対策は、地下水位低下に対して新たに集水井4基と横ボーリング1座を計画し、この計画に基づき平成10年から対策工が施工された。

地すべりの特徴
地すべり地全体の空中写真
地すべり平面図
地質断面図
対策工平面図