国土交通省所管     美唄右股(びばいみぎまた)の沢地すべり 北海道


                                 掲載号:vol.25 No.3(1999年、通巻75号)
1. 地すべりの概要
 道央部の美唄市南美唄南一の沢に発生した地すべり。南一の沢は夕張山地の西端部付近に位置し,南美唄に向かって流れる小河川であり,地すべりは美唄市市街地の東約5kmの位置。地すべりの滑落土砂による渓流の荒廃が懸念されたので,昭和55年度より本格的な地すべり調査・対策が開始され,昭和60年度に竣工・概成するに至っている。(地すべり経過図
 主測線における地すべりブロックはA〜Dに区分される。すべり面A,Bが岩盤内に生じた一次すべり,すべり面C,Dが崩積土や地すべり土塊の強風化部に生じた二次すべりである。
 Aブロックは最も早く滑動した,最も不安定なブロックである。延長130m,幅55m,最大厚さ19m
 Bブロックは,下半部をAブロックと共有し,その背後に連続する。延長200m,幅55m,最大厚さ19m。
 Cブロックは,A,Bブロックに含まれる二次的な地すべり。延長70m,幅40m,最大厚さ7m
 Dブロックは,Aブロック内部の二次的な地すべり。延長105m,幅55m,最大厚さ9m。

2.地形・地質
 右股の沢地すべりが位置する美唄西方の夕張山地は,山稜部は比較的穏やかな山容を見せ,定高性を示すが,渓流に臨む斜面は峡谷状に深く切れ込むことが多く,高さの割には急峻な渓流地形を示す。
地すべり地付近では,渓床から約50〜60m上方に明瞭な遷急線が認められる。下方では平均傾斜が30°前後、上方の斜面では凹凸のある20°前後の斜面が広がっている。
 
周辺に分布する地層は,古第三紀始新世の石狩層群に属する幌加別層,夕張層,若鍋層,美唄層。地すべり地の基盤を構成するのは,主に夕張層(礫岩,砂岩,泥岩および炭層)。基盤の地質構造は,地すべりの移動方向に対して受け盤。地層の傾斜角は約15°。

3.素因・誘因
(1)素因
 1) 渓流の侵食作用
 2) 容易に脆弱化する岩石の性質
(2)誘因
 融雪や降雨による“地下水位の上昇

4.地すべり対策工事
排土・盛土工(V=22,420m3)、暗渠工、コンクリート製谷止め工、床固め工
地すべりの特徴
 (1)地すべり断面図
 (2)対策工平面図