地すべりの概要
1.地すべり地の概要
本地すべり地は、千葉県鴨川市の西方約6kmの安房丘陵の南縁に位置し嶺岡山系の東部に属する。昭和 38年に農林水産省林野庁所管の地すべり防止区域に指定された。指定面積は199.25ha
である。ここでは、大森地区と大近戸地区について紹介する。
2.地形概要
上小原地すべり区域は、嶺岡山系の北側斜面から加茂川低地の段丘面にかかる範囲に及び、標高50〜350m、傾斜10゜〜20゜程度で全体として比較的穏やかな地形である。
3.地質概要
地すべり地周辺は、東西方向に背斜軸をもつ褶曲構造を有し、古第三紀嶺岡層群と背斜軸の両翼に新第三紀層が分布する。地すべり地には嶺岡層群が分布し、下位より山王層・白滝層・八丁層・榎畑層・薙目層が分布する。岩種は、頁岩・珪質頁岩および砂岩・頁岩互層を主体としている。
背斜部は東西方向の断層を頻繁に伴い、断層に沿って超苦鉄質岩が貫入し、玄武岩類が噴出している。
4.地すべり状況
(1)大森地区
地すべりは、活動の顕著なものからA・B・Cブロックに区分される。各地すべりブロックの規模は、幅20〜40m、長さ50m
前後、すべり面の深度は5〜10m
、傾斜15>〜30゜で、各ブックが相互に関与してひとつの大きな地すべりブロックを形成している。形状はほぼ馬蹄形であり、上部には湧水が多く池・沼地・湿地を形成している。そこから流下する地表水や地下水は、ガリー地形やボラ(浅層地下水による浸食・陥没地形)筋となり下部ブロックに影響を与え「房総地すべり」の特徴を有する。
(2)大近戸(おおちかど)地区
地すべりは、D・E・F ブロックに区分され、その規模は各ブロックとも幅40m
、長さ50m
、斜面勾配25゜程度であり、すべり面深度のは5m
内外と浅い。すべり面は基岩との間に存在し、粘土化が進行している。変状は冠頭部では明瞭であるが、側方および末端では不明瞭である。
5.地すべり機構
(1)素因
背斜軸に伴う断層や貫入岩により地層には亀裂が発達する。この亀裂によって風化作用が著しく進行し、脆弱なすべりやすい地盤環境を形成した。
(2)誘因
降雨に伴い大量の地下水が地すべり地内に供給され、間隙水圧が上昇する現象が本地すべりの誘因である。
(3)運動機構
@断層などに伴い、地層が著しく脆弱化、破砕し、地すべりが発生しやすい地質環境にある
A地すべり地は流れ盤構造であり滑りやすい。
B山頂部には玄武岩類が分布し、この山体が地下水貯留→供給の役割を果たしている。
C降水と地下水位の相関性が顕著である。
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6.対策
両地区とも目標安全率をFs=1.10>〜1.20
とする。
大森地区では、地下水が豊富でありこれが誘因になっていることから、千葉県林務部が考案した「木枠栗石詰め工」を施工した。
大近戸地区は、地下水が豊富であり、降水時には顕著な上昇が確認できることから、地下水排除工を採用し、斜面勾配が
30゜以上になるEブロックではアンカー工を採用した。
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