林野庁 所管          伊予ヶ岳(いよがたけ)地すべり
千葉県

対策工平面図

位置図
真下孝之,中村研一,三井敏彦,寺川政雄(2001):千葉県の地すべりについて−林務課(林野庁所管)の地すべり対策について、「地すべり技術」掲載号:Vol.27,No.3(2001年3月,通巻81号)
地すべりの概要
1. 地すべりの概要
 当地区の地すべりは、平成8年9月22日の台風17号による日雨量330mm(嶺岡地区雨量計による観測値)を越える大雨を誘因として発生した。地すべり本体の規模は幅約100m、最大斜面長約300m、面積3.5haであり、地すべり土塊は泥流化して、渓流を洗掘しながら斜面下方の県道付近まで達した。なお、当地区のブロック区分と規模は以下のとおりである。
   上部ブロック:幅100m、長さ110m
   中部ブロック:幅110m、長さ140m
   下部ブロック:幅70m、長さ100m
   渓流地区  :幅40m、長さ200m

2.地形・地質概要
 当地区は房総半島南部の加茂川地溝帯に接する嶺岡山系西部山地の南側斜面に位置する。地形的には、標高330〜200mの山腹斜面にあたり、斜面頭部より傾斜約60°の滑落崖、平均斜度約30°の山腹斜面、移動土塊の堆積により10°程度の緩斜面となった斜面脚部〜渓流源頭部に区分される。斜面形状は凹型集水斜面形状を呈し、斜面内には渓流が発達し外野川へ流下している。
 地質は新第三紀保田層群富山層の砂岩・泥岩互層が分布している。地質構造は断層、褶曲構造が発達しているため複雑であり、周辺の岩石は破砕されている。 滑落崖では、層理面に沿って削痕が見られることから、層理面の一部を分離面とする地すべりであると考えられる。しかし、層理面の走向・傾斜は、N55〜70°W32〜40°Nであり、斜面の最大傾斜方向(N75°E)とは斜交しており、必ずしも典型的な流れ盤構造とは言えない。

3.素因・誘因
(1) 素因:断層や褶曲構造の影響により、風化・粘土化した砂岩・泥岩互層が分布する。また、集水地形を呈する。
(2)誘因:大雨による間隙水圧の上昇と地表水による渓流の浸食

4.対策工
・上部ブロック
 抑制工の排土工で、滑動性低減と安全率のアップを図り、地下水排除工により目標安全率に対して不足する安全率を負担する。また、滑落崖面の処理を緑化基礎工として法枠工を行う。         排土工+地下水排除工、法枠工(滑落崖面)
・中部ブロック:抑制工(地下水排除工)で安全率のアップを図り、目標安全率までの不足分を抑止工(鋼管杭工)で負担する。地下水排除工(集水井4基)+抑止工(鋼管杭工3段113本)
・下部ブロックおよび渓流地区:上部からの土砂で洗掘・堆積した区間であるため、堆積した土砂の移動防止として、土留工、谷止工、床固工を施工する。

地すべりの特徴
 地すべり断面図
 房総中・南部の地質図
MT