地すべりの概要
1.地すべり地の概要
磯谷地区は、下北半島大間崎から南方へ約kmの津軽海峡に面した佐井村に位置する。同地区では、昭和年月26
〜28日にかけての寒冷前線の通過に伴う集中豪雨により地すべり災害が発生したものである。災害発生の翌年に
58.35haが地すべり防止区域に指定された。その後、指定区域の周辺部においても地すべり性の活動が活発化したため、昭和60年及び昭和 63年に追加指定され、現在の指定面積は100.74haである。
区域内や区域周辺には、国道338号線、磯谷集落、磯谷漁港、磯谷小中学校、村道、農地等の保全対象が存在している。
2.地形概要
磯谷地区は、標高0〜185mの区間で地すべり防止区域に指定されている。区域内の斜面の傾斜方向は概ね西方向であり、小野渓は直接津軽海峡へ注いでいる。区域内の地すべりブロックは、概ね末端部が海岸線まで達し、斜面中腹付近は傾斜角5〜10度程度以上の緩傾斜を呈し、中腹部の周囲や上部斜面は傾斜角30
度以上の急斜面で形成されている。また、崩壊地や露岩斜面も一部確認されている。
磯谷地区のブロック区分は、「学校地区」、「ヤサ沢地区」、「中磯谷地区」、「磯谷北地区」、「磯谷南地区」の5地区に区分されている。
3.地質概要
磯谷地区の地質は、新第三系中新統の佐井層が分布している。佐井層は、礫岩、凝灰岩、粗粒砂岩で構成され、概ね流れ盤構造となっている。また、流紋岩、玄武岩の貫入を受けていることから、地質構造は複雑で、かつ脆弱化している。
地すべり地形を呈するブロック内には、主として凝灰岩が分布し、緩斜面を形成している。また、地すべり地形を呈する周囲の急崖斜面は、流紋岩や玄武岩が主として分布しており、頭部の流紋岩及び玄武岩と凝灰岩の地層境界付近では、崩壊地が多く形成されている状況にある。
4.地すべり状況
磯谷地区において、最大の地すべり活動が発生した災害は、昭和50年7月26〜28日にかけての寒冷前線の通過に伴う集中豪雨によるものであった。この集中豪雨は、青森県内の津軽地方西北部及び下北半島北部で発生し、総雨量201.0mm(平舘村)、時間雨量68.5mm(深浦町)を示し、これにより住宅全・半壊16戸、床上・床下浸水1013戸、道路損壊11箇所、山崩れ及びがけ崩れ47箇所の被害が発生した。
磯谷地区における被害は、「学校地区」、「中磯谷地区」、「ヤサ沢地区」に集中し、国道及び村道、人家等(磯谷集落)に甚大な被害をもたらした。特に、「学校地区」では、磯谷小中学校の校舎の一部が地すべり性の崩壊土砂に押し出され倒壊し、建物の基礎や廊下等にも多くの亀裂や破損が生じた。また、地区内頭部で発生した大規模な地すべり性の崩壊により、村道が20mにわたり損壊した。
5.地すべり発生機構
素因:地質的な貫入面と地層境界面が不安定な面を形成しており、境界付近で崩壊地が多く形成されており、地すべり発生の素因となっている。
誘因:昭和50
年7月豪雨や、昭和59年融雪期に地すべり災害が発生しており、主に集中豪雨に伴う地下水位上昇が地すべり発生の誘因となっている。
対策方針: 地下水排除を目的とした抑制工(水路工、集水井工、集水ボーリング工、ボーリング暗渠工)を主体に計画した。地すべり性の累積変動が顕著に認められ、かつ抑制工のみの配置では目標安全率(
Fp=1.20)に不足するブロックについては、抑止工(鋼管杭工、アンカー工)も計画した。また、末端浸食防止のため、渓流における渓間工(谷止工、護岸工)や海岸における防潮護岸工を実施した。平成
19年度までに対策工を実施し、概成する予定である(平成17年現在)。
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