林野庁 所管       澄川(すみかわ)地すべり 秋田県 
      
平面図(小川内ほか,1998) 



位置図(大八木ほか,1998)

出典:
小川内良人ほか(1998):澄川地すべりの発生機構について−澄川地すべり調査結果と対策工の概要,地すべり,Vol.35,No.2,pp.38-45.
・大八木規夫ほか(1998):地すべり構造と広域場からみた澄川地すべり,Vol.35,No.2,pp.1-10.
地すべりの概要
1. 地すべりの概要
 1997年5月、八幡平熱水変質地帯に発生した澄川地すべりは、地すべり発生と同時に水蒸気爆発と土石流が発生した特異な地すべりである。澄川地すべりの規模は、幅150〜350m、斜面長650m、すべり面深度50〜70m活動面積約17ha、地すべり土塊量約600万m3であり、地すべりのブロック区分はA(A-1、A-2)ブロック、Bブロックからなっている。発生後から平成10年6月末まで地すべり変動はないが、現在も自動観測システムにより継続観測が行われている。また、排水工と鋼管杭を主体とする地すべり対策工事、澄川の流路工、赤川の治山ダムなどの工事が進められている。

2.地形・地質概要
 当地すべりは八幡平北西部焼山火山の東山麓部にあたり、熊谷川右支赤川左支澄川の下流域左岸に位置する。標高850、900、950、1000m付近に緩斜面が認められ、それらの上方側には馬蹄型の急斜面、下方側には急斜面と崩壊地形があり、地すべり地形の特徴を示す。
 澄川周辺の地質は、新第三紀中新統の遠部層を基盤とし、これを覆う第四紀の澄川凝灰岩および焼山火山群噴出物の曽利ノ滝溶岩から構成されている。焼山火山群噴出物には、亀裂の発達した安山岩溶岩が分布し、地下水の通路となっている。すべり面は、モンモリロナイトを多量に含む変質した第四系の澄川凝灰岩上面に形成されている。

3.素因・誘因
(1) 素因:変質して粘土化した澄川凝灰岩の存在と、円弧すべりを発生させやすい凹面型基盤の存在
(2) 誘因:融雪水および大雨による間隙水圧の上昇

4.対策工
 Aブロック:杭工,排土工、盛土工,横ボーリング工
 Bブロック:土留工、法切工、斜面緑化工、盛土工、排土工,ガス抜き工
地すべりの特徴
 地すべり断面図
 すべり面の縦横断構造
 地すべり機構の模式図