地上測量
制作:応用地質(株)

1、測量の目的

 1)地すべり地は地盤の移動に伴い、特徴的な地形を呈する。このため、地表の微細な形状を図化することが、地すべり範囲や活動の特徴を掴む手がかりとなる。また、地形を図化することにより対策工の配置計画がたてやすくなる。
 2)地すべり地の地表の動きを測量することにより地すべり地全体の移動形態や移動量を把握できる。

2、測量の種類
調査手法としての測量技術を中心に説明する。

(1) 地上測量法
三角測量や距離測量により移動量を測定する方法である。見通し測量と基準点測量に分けられる。1)

 1)見通し測量
 地すべりの不動地に設置した基準点から地すべり地内に定めた測線上の点を測量して各点の移動量を測定する。
 2)基準点測量
 地すべり地内に測定点を設置して、この点の座標値を地すべり地外の基準点をもとに測量することにより移動量や移動方向を測定する。

 3)三角測量・多角測量(トラバース測量)
 三角形の底辺とその両側内角がわかれば、その形は一義的に決まる。この理論を応用したのが三角測量である。また、ある点からの方向と距離がわかれば、次の点の位置を表現できる。この繰り返しをしているのが多角測量である。これらの方法では距離の測定と角度の測定が重要となる。かつてはトランシット(セオドライト)や光波距離計なども用いられたが、現在ではトータルステーション(測距測角儀)により行うことが多くなった。
  ア)GPS(Global Positioning System)測量
 受信装置の使用数あるいは電波伝搬時間を測定するか伝送波の位相を計測するかにより単独測位・相対測位・干渉測位等にわけられる。単独測位は飛行機や車のナビゲーションシステムに利用されている。また、基準点測量に使用されるのは搬送波を利用した干渉測位である。

 搬送波は正弦波であり、各GPS衛星から発信される搬送波は同じ波形が繰り返されている。GPS計測では、搬送波が物差しの役割をしており、この物差しで一衛星から二つのGPS受信機へ到達する電波の行路差を測り、基準点と計測点の位置関係を測定している。

  イ)レ-ザ-スキャナ・レ-ザープロファイラ
 レーザースキャナー
 多くのレーザー測定器はタイム・オブ・フライト法という測定法を採用している。この方法では短いレーザーパルスを対象物に照射して、反射光が戻るまでの時間と光波速度から対象物までの距離を測定する。 測定スピードは、機種により異なり100〜数千点/秒である。
 (2) 写真測量法
 空中写真や地表から撮影した写真を用いて地形や構造物を測定図化して地形図を作成したり、地すべり地内に設置した測定点の座標値の変化から移動量や移動方向を測定する。

  1)写真測量
 異なる場所から重複して写した2枚1組の写真を用いる。図のように求めようとするA-Bの3次元の位置は、2枚の写真により得られる空間像において、それぞれ投影中心を結ぶ2本の交線の交わりとして求められる。この対応する2本の交線が交わるような条件を作り出すには、写真を写した時のカメラの位置および傾き、撮影方向を再現しなければならない。そのため、長さや高さあるいは座標を有する基準点に標識をおいて写真を写し、その写真座標を測定することによって3次元位置を求めている。1)
  2)三次元写真計測
 近年、高解像度のデジタルカメラの低価格化が進んだことによりデジタルカメラで撮影した画像から簡単に3次元座標値を求めることが可能になった。重複する2枚の画像から簡単に画像解析ができ、関連ソフトによりコンター図や土量計算まで可能である。200〜300万画素のデジタルカメラで撮影すれば、撮影距離に対する平均誤差は0.02〜0.03%程度である。
  3)スリ−ラインスキャナ−(TLS)
 3つのラインセンサを1つのカメラの焦点面に平行に並べ、前方(赤)、直下(緑)、後方(青)を同時に撮影する装置をヘリコプターに搭載して立体視可能な画像を入手する。
 数cm精度の高繊細なオルソ画像が作成可能で図化も可能である。
 使用する撮影器は特殊なスタビライザ゙により安定させ、ヘリコプターの機位はGPSにより、機体の姿勢はIMU(Inertial Measurement Unit)により出力し、画像処理を行う。

参考文献
 1)(社)地すべり対策技術協会発行 「地すべり観測便覧 第3編2.2」