深浅測量
制作:川崎地質(株)

 深浅測量とは、水上において船の位置測量と水深測量を同時に行う測量作業である。
  この測量には、船舶の航行安全のための水路測量、ダムや防波堤など水上構造物に関連した水深測定および防災や環境調査などにおける基礎データとしての詳細な地形把握など、さまざまな目的のものがあり、多くの手法および測定機器が用いられている。

1.船位測量 船位測量は、水深測量を行う調査船の位置を測定するもので、従来は陸上の基準点を用いた光学的方法(トランシットなどによる)や、電波測距儀による返長交会法などが用いられていたが、最近はGPS衛星を利用した測量用GPS測位が主体となってきている(図−1)。 表−1に船位測量に使用される測量機器の諸元などを記す。
2.水深測量
 水深測量は、音波を用いた間接的な音響測深が主体であり、対象水深や測定手法などにより、さまざまな測深機が開発されている。
 測深の原理は基本的に、図−2に示すように船上に音響測深機を搭載し、送受波器より音波を海底に向け発射し、それが反射して戻ってくるまでの時間を測定するもので、送受波器の吃水、測深時の潮位・水位、水中の音波伝播速度などを補正することで正確な水深が得られる。
 通常、従来型の音響測深機は、1〜4素子の送受波器を用い、調査船の直下付近の水深を測るもので(図−3)、水深や使用目的などにより性能などが異なる。
 この従来型の音響測深機のおおむねの性能について、表−2に示す。
 最近は、扇状に音波を放射し指向角の鋭い音波ビームを多数用いたかのように、調査船の直下だけでなく、平面的に余すところなく詳細な水深データが得られるマルチビーム測深機が用いられるようになっている(図−4)。
  これは、従来の測深機が測線直下のみであり測線と測線との間が未測定となるのに対し、未測定域のない測定が可能となり、非常に詳細な地形状況が把握できる。この高精度の地形測量は、基礎的な地形調査だけでなく、海洋構造物の基礎工事、埋め立てや浚渫、堆砂や侵食などの自然環境保全調査などに用いられている。
3.深浅測量実施の際の留意点
 深浅測量は調査船を用いた間接的な水深測定方法であり、信頼性の高いデータを測定するためには、以下のような点に留意する必要がある。

・ 船舶の動揺はとくに従来型の深浅測量では大きな誤差を生む要因となる。このため、測定は水域が静穏な状態の日に実施する。
・ 水域の音波伝播速度が、算出される水深に大きく影響する。このため、現地での音速補正データの測定が不可欠である。
・ 測量精度の確保のため、調査測線は主測定方向のものだけでなく、必ず交差測線を設定し、交点での水深のクロスチェックを行う。
・ その他、音響測深機の装備方法、測定時の船速、測定記録の状況などを常に監視し、最良の記録を測定することに努める。

4.深浅測量成果を利用する際の留意点 深浅測量の成果は、通常水深値を平面図上に展開した水深図、地形を等深線で表現した地形図などの形で示される。
 これらの利用にあたっては、その深浅測量の手法などを考慮し、得られた水深や表現される地形に含まれる誤差などについての留意が必要である。

・ 従来の直下水深測定による地形図などでは、測線付近以外は水深データが無く、その間は測量技術者の推測による補完となっている。
・ 地形変化が大きい部分については、船位測定の精度、偏位による水深値の変化などに注意が必要である。とくに断面図における経時変化などを検討する場合には、その水深変化が測定位置の相違などによるものではなく、有為の変化であることを確認する必要がある。

 マルチビーム測深による水深データはデジタルデータであり、従来の平面図の表現だけでなく、図−5に示す立体表現図のような多彩な地形表現が可能である。水域の地形状況を詳細に検討するには、従来とは異なる視点からの把握も重要であり、カラー表現なども含め理解し易い出力図を活用することが望ましい。
〔参考文献〕
・新訂版GPS−人工衛星による精密測位システム,272pp,日本測地学会編(1989)
・水路測量−水路測量技術テキスト,日本水路協会編(1977)
・マルチビーム音響測深の原理,水路部技報,vol.15,p73-93