(1) 地下水位観測
地下水位の観測は、一般に既存の井戸か調査ボーリング孔を用いて行われます。
測定方法は、触針式の水位計を用いて定期的に人が手測りで測定する方法と、水位観測地点自記水位計(自記記録式の水位計)を設置して連続的に測定する方法があります。自記水位計の水位を感知する方法として、昔はフロートと呼ばれる浮きが上下することにより把握していましたが、最近では間隙水圧センサにより把握する方法が主流になっています。
図-2 自記水位計設置イメージ図
(2) 間隙水圧測定
間隙水圧測定は、地すべり面に直接作用する地下水の間隙水圧を測定するものです。
測定方法は、すべり面付近に間隙水圧計を埋設して測定する方法と、すべり面付近のみにストレーナー加工した保孔管を設置して、その上下を遮水して孔内水位を測定する方法とがあり、後者が実用的とされています。
間隙水圧を観測・把握することは、平常時および豪雨時のすべり面強度の算定に活用されるほか、地震時の過剰間隙水圧発生による安全率の低下度合いを想定する際にも有効なデータとなります。
3.測定結果の利用法と留意点
○ 地下水位に関するデータは地すべり対策の検討に利用されます
上記により把握された地下水位の変動状況あるいは間隙水圧の変化は、地すべりの安定度を検討するための基礎資料になり、安定解析を実施することによって安全率(地すべり土塊の安定性を示す指数)が求められます。求められた安全率から、地すべり土塊が恒常的な安定を保つために必要な抑止力を算定することができ、その抑止力に基づいて地すべり抑止あるいは抑制のための対策工を検討します。
○ 地下水位の観測では最高水位を確認する必要があります
地下水位が最も高い時点で地すべり土塊が最も不安定な状態になることから、対策工を検討する際には、最高水位の状態での安全率に基づいて工法の種類と規模を設定する必要があります。したがって、地下水位の観測は、水位上昇が想定される梅雨時や台風シーズン等を含めた時期に実施します。
○ ボーリング孔内の水位は地山の水位を反映していない場合もあります
ボーリング孔内の水位は、被圧している亀裂から流入する地下水と、負圧の亀裂から流失する地下水とのバランスによって形成されます。したがって、孔内で観測された水位が必ずしも地山の地下水位を反映したものではない場合もあります。
地山の地下水位を的確に示すものかどうかは、周辺のその他のボーリング孔の水位状況との対比や、地表の湧水分布等との比較、あるいはそのボーリング孔内の水位変動と降雨との連動性等から妥当性を検証して決定します。
○ 地下水位観測は対策工(特に地下水排除工)施工後の効果確認にも利用します
前述のように、地下水位が上昇すると地すべり土塊が不安定になるため、対策工法の一つに地下水位の低下を目的とするものがあります。この工法の検討では、低下する地下水の低下度合いを設定(期待低下水位という)して地すべり土塊の安定化を検討します。したがって、対策工の施工後には期待通りの水位低下効果が得られたかどうかを確認する必要があり、そのための地下水位観測も実施されます。
測定方法は、すべり面付近に間隙水圧計を埋設して測定する方法と、すべり面付近のみにストレーナー加工した保孔管を設置して、その上下を遮水して孔内水位を測定する方法とがあり、後者が実用的とされています
参考文献
・ 治山技術基準 解説 地すべり防止編 林野庁監修
・ 地下水ハンドブック 建設産業調査会
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