1.概要
アンカー施工後のテンドンの残存引張力は、様々な要因により変化します。テンドンの残存引張力の変化を計測することは、構造物や地盤の挙動を把握し、アンカーの破損や構造物および地盤の異常発生を防ぐためにも重要であります。
テンドンの残存引張力の測定方法としましては、アンカー設置時に荷重計を設置する方法と、計測時に緊張用ジャッキあるいは専用ジャッキを使って行うリフトオフ試験のよって確認する方法があります。
リフトオフ試験とは、定着具やテンドン余長にジャッキあるいはリフトオフ専用油圧式ジャッキを設置して載荷する試験で、定着具が支圧板から離れはじめた(0.1〜1.0mm)ときの荷重を測定することにより、現在アンカーに作用している荷重を求めます。
2.リフトオフ試験
2-1 試験装置と主要機材 リフトオフ試験には、ジャッキあるいはリフトオフ専用油圧ジャッキを使用します。加圧装置(緊張ジャッキ)は、その容量とストロークに余裕のあるものを選び、計画最大試験荷重の1.2倍まで載荷可能なものとします。また、計画荷重段階に応じた荷重の増減が可能でかつ一定の荷重保持が行えるものとします(図1) |
図1 リフトオフ試験の1例
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2-2 載荷方法
載荷は、1段階当たりの荷重増加量を決めて、単調載荷とします(図2)。リフトオフが認められない場合の最大試験荷重は永久アンカーの場合、設計アンカー力の1.2倍程度としますが、試験に先だち定着具の点検により鋼材破断の危険性について十分検討しておくことが必要です。特に鋼棒は鋼より線に比べて突発的に破断するため、テンドンが飛び出さないように十分注意する必要があります。 |
図2 載荷計画の一例
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2-3 試験結果の整理
試験結果の整理については、図3に示すように、荷重とアンカー頭部の変位の関係をグラフ化し、これからリフトオフ荷重を読み取ります。ここでテンドンの種類、定着方法、アンカー長によって、荷重と変位の関係に若干の違いが出てくることがあります。 |
図3 リフトオフテスト試験結果の整理方法1) |
3.再緊張および残存引張力の緩和
リフトオフ試験や荷重計による測定により、残存引張力が定着時緊張力と比較して低下している場合は再緊張、増加している場合は残存引張力の緩和が必要となります。
再緊張を実施する際には、設計時の考え方によって留意が必要です。締め付け効果を期待したアンカーでは、常時プレストレス力が作用していることが地すべり対策の条件であるとして、再緊張を計画し、待ち受け効果を期待したアンカーでは、残存引張力が定着時緊張力に対して、どの程度低下したかを評価して最緊張計画をたてる必要があります。目安としては定着時緊張力の90%になったとき、その原因を検討した上で、再緊張の計画を進めるとよいと考えられています2)。
一方、残存引張力の緩和が必要な場合は、それだけのプレストレス力が必要であったことを示しています。したがって、その対策としては、地すべり対策の場合では、排水工や排土工などによる荷重低減やアンカーの増設など抵抗力の負荷が行われます。しかし、残存引張力の増加したアンカーは、そのままでは破損の危険があるので、対策を行った後に残存引張力の緩和が必要となります。ただし、大規模な地すべり対策に用いられたアンカーなどの場合で、安易に緊張力を緩和することによって、進行中の変状をさらに大きな変状へと促進させるおそれがあるので、緊張緩和時には生じると思われる問題については、事前に十分検討しておく必要があります。
<参考文献>
1)(社)地盤工学会基準:グラウンドアンカー設計・施工基準、同解説
2)(社)日本アンカー協会:グラウンドアンカー施工のための手引き書 |
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