レーザースキャナデータの解析
制作:国際航業(株)

1.レーザスキャナとは

 レーザスキャナには、航空機搭載型と地上型の2種類がある。何れも、照射されたレーザの走時を利用して、地物の三次元座標データを取得することにより、詳細な形状を計測する装置である。
 航空機搭載型は広範囲の正確な地形を把握することに適しているが、切り立った崖など急傾斜地の微地形把握には適していない。一方、地上型は航空機搭載型には適していない崖地や急傾斜地の計測に適している。ここでは、斜面の詳細な形状計測に適している、地上型のレーザスキャナについて紹介する。
 レーザスキャナを用いた調査では、微地形を表現した三次元地形モデルを取得し、このモデルから等高線図や断面図を作成したり、移動土塊の土量を推定することができる。また、複数時期の三次元地形モデルの差分から、移動範囲や移動量を検討することに使用される。

2.計測の方法

 現地計測では、地上型レーザスキャナを三脚上に設置し、パソコンで制御及びデータ収録を行う。設置から計測・撤収まで、計測仕様にもよるが概ね数分から数時間程度である。(計測に要する時間は、使用する機種・計測仕様(範囲や計測密度)により大きく異なる)
 計測可能距離はスキャナの機種により異なる。計測可能距離が約100m以内のものから約1km以内までを計測できるものまで様々であり、目的や現地の状況など、必要な精度や測定距離に応じて使い分けることが望ましい。地上型レーザスキャナのメーカーは複数あるが、以下に例として3機種の仕様・特徴を示す。

 なお、公共座標系への変換が必要な場合や複数方向から計測して合成する場合,複数時期の計測比較を行う場合には、座標値が明らかな基準点を複数点設置する必要がある。

3.地形計測時の留意点

・下見をして(或いは必要な情報を収集し)使用する機種・計測仕様を決める
・計測対象に対して、正面からレーザ光を照射するように心がける
・植生はなるべく伐採しておく(地表面を露出させておく)

4.長所と短所

○ 長所
・崩壊地など、立ち入りが困難な現場でも使用できる。
・夜間でも計測可能である。
数〜数十cm間隔の高密度座標データであるため、詳細な形状把握が可能である。
・平面図(等高線図)や断面図の作成を迅速に行うことが出来る。
○ 短所
・植生が密な斜面での地形計測は困難である。
・特定の1点を正確に測量することは得意ではない。(反射ミラーなどを置けば可能)
・公共測量規程に定められた機器ではない。

5.計測データの解析

 計測対象を微地形まで表現した三次元(地形)モデルとして取得することにより、任意の視点からの鳥瞰したり、等高線を発生させ地形図を作成したり、任意箇所の断面図を作成することができる。また、機種により同時にRGBのカラー情報を取得することができ、三次元モデルに貼り付ける(あるいは表示する)ことにより、カラー三次元モデルを作成することも可能である。
 図3には、鉄道沿いの石積擁壁を地上型レーザスキャナで計測し、擁壁正面から見たもの(図3右図)と運転手の視点で見たもの(図3左図)を示す。

 図4〜図9には切土法面のすべり発生箇所での解析事例を示す。
 地上型レーザスキャナで計測できる地形形状は、非常に詳細で平面図や鳥瞰図で微地形を表現できるという特徴を活かし、複数時期の計測データを解析することにより、滑動範囲や移動量,移動方向を把握することができる。また、移動量の大小を色分けすることで(図9)、変位状況を面的に把握することが可能となる。

引用文献
1)ライカ ジオシステムズ株式会社:http://www.leica-geosystems.com/jp/products/cyrax/
2)リーグルジャパン株式会社:http://www.riegl-japan.co.jp/
3)三戸嘉之,生駒昇,佐野力 2006,9,5 建設コンサルタンツ協会 近畿支部 第39回(平成)18年度 研究発表会
4)三戸嘉之ほか:のり面・崖地の高密度三次元座標データの取得と応用地質分野への活用,pp.351〜364,応用地質,Vol42,No6,2002.6