崩壊予測手法
制作:日本サーベイ(株)

(1)概要
 地すべり・斜面の崩壊は、さまざまなパターンを有し、これらの崩壊予測を行うためにはクリープ変形の考え方が適用される。このクリープ変形の考え方は、土砂や岩石のクリープ試験の結果から得られるクリープ曲線(図-1)に基づいている。このクリープ曲線は3つの領域に区分される。
a) 1次クリープ:  ヒズミの加速が経時的に減少する区間
b) 2次クリープ:  ヒズミの速度が一定な区間
c) 3次クリープ:  ヒズミの加速が経時的に増加し崩壊に至る区間


図-1 クリープ曲線模式図

 地すべり・斜面の崩壊は、1次クリープ、2次クリープ段階で停止して、崩壊に至らないものもある。崩壊に至る場合には、3次クリープの形態をとる場合が多い。
 地表変位(ヒズミ)は、地すべりブロック頭部等に設置した地盤伸縮計観測により計測され、このヒズミを用いて、各クリープ段階に対応した崩壊予測法が各種提案されている。
  @)斉藤・上沢による概略予測法(1966)
  A)斉藤による近接予測法〔図式解法〕(1968)
  B)斉藤による3次クリープ段階での予測法〔精密予測、別名セミログ法〕(1987)
  C)福囿による表面移動速度の逆数を用いた予測法(1985)

 また、これらの地表面変位による方法のほかに、地中の間隙水圧の挙動や、AE(Acoustic Emission)による崩壊予測法、降雨による方法等も研究されている。

(2)各予測法の説明



図-2:崩壊時間の図解解法 文献2)



図-3 斎藤の精密予測法〔セミログ法又は片対数表示法〕の例 文献5)





図‐4 表面移動速度の逆数を用いた予測法の例 文献5)

引用文献)
1) 斎藤迪孝・上沢弘:「斜面崩壊時期の予知」地すべり,vol.2,No.2,(1966),pp.7-15
2) 斎藤迪孝「第3次クリープによる斜面崩壊時期の予測」地すべり,vol.4,No.3,(1968),pp.1-8
3) 斎藤迪孝「斜面崩壊時刻予測のためのクリープ曲線の適用について−崩壊予測の批判に答えて−」地すべり,vol.24,No.1,(1987),pp.30-38
4) 福囿輝旗「表面移動速度の逆数を用いた降雨による斜面崩壊時刻の予測法」地すべり,vol.22,No.2,(1985),pp.8-13
5) 社団法人地すべり対策技術協会「いつでも、どこでもすぐに役立つ 地すべり観測便覧」(1996),pp.346-362