表面波探査
制作:(株)エイト日本技術開発
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(1) 表面波探査の概要説明 がけ崩れの調査技術として表面波探査が使用される場合は、通常、高精度表面波探査が用いられる。表面波探査そのものは表面波を計測するが、コンピュータによる解析結果により2次元のS波速度分布図として表現される。また、平坦面での調査手法として開発されているため、起伏の少ない箇所や法面の小段などで実施することが多い。 表面波探査は、弾性波探査(P波屈折法地震探査)などのように、高速度層でさえぎられて下部にある低速度層が未検出になるようなことはなく、下部にあるゆるんだ部分の検出が可能である。そのため、スベリ面やゆるんだゾーンの検出には効果的である。ただし通常は、1〜2mピッチで計測を行い、深度20mまでが限界といわれているので、表層崩壊や深度の浅いすべりに対してのみ有効な調査方法といえる。また、S波速度はN値などの力学指標とも相関性が高く、工学的分布図を把握する上でも有利である。なお、ボーリングや簡易貫入試験なども併用して、その補足を行うことが望ましい。 (2) 表面波探査の説明 1)現地計測 測定では、図1に示すように、1〜2mピッチで受振器を置き、その間をカケヤで順番に叩き振動を起こす。受振器は測定器に繋がっており、各振動を計測し記録する。起振方法は、他に重錘落下による方法もある。延長が長くなる場合は、通常24成分を順番に展開していくことになる。 |
2)解析方法 測定により得られた共通起振点記録を、専用解析ソフトを用いて解析する。まず周波数−見かけ速度分布に変換し分散曲線を作成し、これに対して、非線型最小二乗法を用いた一次元の逆解析を施して一次元の速度構造(深度方向)を得る。この一次元の速度構造を並べることにより二次元S波速度構造とする。また、そのS波の分布を二次元S波速度構造断面図として表示する。 |
(3) 表面波探査の留意点 1) 特徴 ・ 広い範囲を経済的に調査できる。 ・ 起振は火薬を必要とせず、はカケヤ(又は重錘)で可能であり、火薬の申請はいらない。 ・ 舗装地盤でも実施可能であり、弾性波探査のように下位の低速度帯が未検出になることが少ない。 ・ 通常の弾性波探査から得られるP波速度と異なり、S波速度は地下水位面以下の軟弱地盤であっても強度評価が容易である。 2)留意点 ・ 基本的に軟弱地盤〜土砂の探査法であるため、硬質岩盤の調査にはやや不向きである。 ・ 地形が平坦か起伏の少ない直線の測線設置が基本になる。 ・ 最大計測深度20mであり、その場合も測線をできるだけ長くとることがのぞましい。 ・ ノイズなどが入る場合は、ノイズのデータをカットする必要がある。 ・ 調査ボーリングなどと併用し、解析精度を向上させることが望ましい。 (4) 表面波探査の利用方法及び利用上の留意点 図3は斜面の小段で実施した例で、ゆるんだ領域や風化の進んだ不安定領域が視覚的に把握できる。やや硬い領域と、土砂状の部分が、吹きつけコンクリートで隠れていても把握された事例である。 なお、全体的に差がほとんどない場合や、幅がわずかな弱層を検出することは困難であるので、その場合はボーリング調査などの詳細調査が必要である。ボーリング調査との併用で、詳細な線的情報と、表面波探査の面的情報を組み合わせ、的確な土木工学的情報を得ることができる。 |