また,一般的に岩石試験は,亀裂を含まない「岩石自体」の特性を把握するための試験であり,がけ崩れが発生する斜面を構成する「岩盤」の特性を直接的に把握できるのではありません。
すなわち,多くの場合,岩盤には層理面,断層面,不整合面,節理面等の明瞭あるいは潜在的な亀裂が発達していて,それらが岩盤の強度特性や変形特性に多大なる影響を与えるからです。特に,岩石自体が堅固な古い時代の堆積岩類,変成岩類等の岩盤の物性は,岩石自体の物性ではなく,ほとんどが亀裂の密度,連続性,開口度等で決まります。
2.岩石試験の種類と基準
1)物理試験
岩石の物理的な性質を把握するための試験で,主につぎのような試験があります。
密度試験や含水比試験等は,岩石の基本的な性質(密度,含水比等)を把握するために行い,試験結果は,安定計算や対策工の検討に利用します。
パルス透過法による超音波速度測定も,岩石の基本的な性質である超音波速度を得るために行います。試験結果は,たとえば,地山弾性波速度との関係から亀裂係数を求める等に利用します。岩石のスレーキング試験等は,岩石の風化に対する抵抗性を把握するために行います。試験結果は,後述するように,斜面を構成する岩石が「崩壊性要因を持つ地質」かどうかの判断や対策工の選定根拠等に利用します。
◆(社)地盤工学会基準
・岩石の密度試験 :JGS2132-2009
・岩石の含水比試験 :JGS2134-2009
・パルス透過法による超音波速度測定 :JGS2110-2009
・岩石の吸水膨張試験 :JGS2121-2009
・岩石のスレーキング試験 :JGS2124-2009
・岩石の促進スレーキング試験 :JGS2125-2009
◆東・中・西日本高速道路(株)基準
・礫の積比重及び吸水率試験 :JHS 108-2006
・岩の破砕率試験 :JHS 109-2006
・岩のスレーキング率試験 :JHS 110-2006
・岩の乾湿繰返し吸水率試験 :JHS 111-2006
このほかの物理試験として,X線粉末回折試験((社)土木学会基準),浸水崩壊度試験(日本鉄道建設公団・地質調査標準示方書)等があります。
2)力学試験
岩石の強度や変形に係る性質を把握するための試験で,主につぎのような試験があります。岩石の一軸圧縮試験は一軸圧縮強度,岩石の三軸圧縮試験は粘着力・内部摩擦角,圧裂による岩石の引張り強さ試験は引張り強度を求めるために行います。また,試験結果は,地盤のモデル化,各種解析,安定計算等に利用します。
◆(社)地盤工学会基準
・岩石の一軸圧縮試験 :JGS2521-2009
・岩石の非圧密非排水(UU)三軸圧縮試験
:JGS2531-2009
・軟岩の圧密非排水(CU)三軸圧縮試験
:JGS2532-2009
・軟岩の圧密非排水(CUバー)三軸圧縮試験
:JGS2533-2009
・岩石の圧密排水(CD)三軸圧縮試験
:JGS2534-2009
・圧裂による岩石の引張り強さ試験 :JGS2551-2009
この他の力学試験として,一面せん断試験,多段階三軸圧縮試験,クリープ試験,リングせん断試験等があります。
|