落石対策工
制作:(株)キタック

1.落石対策の基本的な考え方

 落石現象は地すべりや崖崩れと比べて規模が小さいものの、発生した場合人を容易に死に至らしめ、施設に重大な損傷を与えることがある。このため落石を防止することは斜面防災上重要な事項である。しかし、落石の発生を予測することは一般に困難であり、豪雨時の崩壊に伴うものを除くと、警戒基準を設けて危険を回避する手法が合理的な対策とはなりにくい。
 このため、落石対策の基本的な考え方は、
 ・ 保全対象の重要度
 ・ 落石の規模や発生確率
 ・ 被災の頻度や被害の程度
 等を総合的に勘案したうえで、被害を最小限にくい止めるよう適切な対策を選定することである。 落石対策工には、表-1のように落石予防工と落石防護工に区分されるが、対策工の計画に際しては、これらから選択するか、状況によってはこれらを組み合わせて用いることになる。対策工の計画に際しては、対策工の設置箇所の地盤特性、仮設を含めた施工性、景観等の社会環境への影響などを含めて検討する必要がある。

表-1 落石対策工の分類


2.落石予防工の目的および種類

 落石予防工は落石発生源に対して次のような効果を期待して実施される。
1) 地表水、凍結融解、温度変化、乾湿の繰り返し、風力等による風化・浸食の進行を防止する
2) 落石予備物質を原位置で直接的に固定する
3) 落石予備物質を除去あるいは整理する
4) 斜面崩壊防止することにより、これに伴う落石を防止する

 予防工の種類と、それらに期待される効果の関連を図-1に示す。



図-1 落石予防工の種類と効果(落石対策便覧H12.6)






3.落石防護工の種類と機能

 落石防護工の種類は設置する位置によって次のように分類される。
 1) 発生源から道路等に至る中間地帯に設けるもの
  ・落石防護網
  ・落石防護柵
  ・落石防護擁壁
 2) 道路際(斜面下部)に設けるもの
  ・落石防護網
  ・落石防護柵
  ・落石防護棚(ロックキーパー)
  ・落石防護擁壁
  ・ロックシェッド(落石覆工、洞門)

 各防護工の機能をまとめて表-2に示す。

表-2 落石防護工の機能


4.落石対策工の選定

 各対策工種の効果は次のように要約される。
  1) 落石発生の原因となる風化・浸食を防止する
  2) 落石の発生を防止する
  3) 落下エネルギーを吸収する
  4) 落下方向を変えて無害なところに導く
  5) 衝撃に抵抗して落石運動を止める
  6) 崩土の落下防止、または雪崩防止の効果を兼ねる
 各工種について、これらの効果を整理したものが表-3である。



 工種ごとに適用できる落石エネルギーに限界がある。落石エネルギーは落石径の他、落下高さや走路の地形・植生等によって左右される。このため落石防護工については設置位置によっても対応可能な落石の規模が異なる。各落石防護工が対応可能な落石エネルギーのおおよその範囲を図-6に示す。



 以上の内容を踏まえ、実際の落石対策を検討するフローの例を図-7に示した。


図-7 落石対策検討フロー図
(新・斜面崩壊防止工事の設計と実例:建設省河川局砂防部監修(H19.9))

参考文献
 社団法人日本道路協会: 落石対策便覧、平成12年6月.
 新・斜面崩壊防止工事の設計と実例:建設省河川局砂防部監修、平成19年9月.